0から始めたライブコマースで学んだ、企画の作り方
私はもともと配信をほとんど見ない人間でした。正直、ライブコマースにも興味はありませんでした。
当時はプログラマーとして働いていましたが、毎日PCに向き合う時間が長く、社会と切り離されているように感じていました。仕事自体が嫌いというより、「どの業界が良さそうか」ばかりを基準に選び、本当に自分がやりたいことを見ないまま働いていたことが原因だったと思います。結果として前職を退職し、改めて「自分は何をしているときに熱中できるのか」を探し始めました。
そんなとき、大学の友人から「TikTok日本向けのライブコマースを一緒にやらないか」と声をかけてもらいました。自分がライブ配信で物を売る側になるなんて想像したこともなく、最初は驚きました。ただ、未知の領域であること自体が面白く感じ、「まずやってみよう」と決めました。
私は中国に戻り、仲間と配信スタジオを立ち上げ、運用体制を整えました。当時のTikTokは今のような右下のショッピングカート機能がなく、ECサイトを自分たちで構築し、そこへ誘導する必要がありました。立ち上げ初期は優秀なパートナーにも恵まれ、事業は比較的スムーズに軌道に乗りました。私はサブ配信者(サブライバー)として配信に入り、運用フローを学びながら、視聴者とのコミュニケーションを積み重ねました。名前を覚えてもらい、私の発言を楽しみにしてくれる方が増えていったのは、想像以上に嬉しい経験でした。
一方で、運用が安定してくるほど、次の壁が来ます。GMV(売上)が一定のレンジで頭打ちになり、伸び悩みが続いたのです。私たちの目標は、現状維持ではなく「業界トップ水準に近づくこと」。そこで私は、ひとつの仮説を立てました。
「このカテゴリにはすでに“絶対的なトップ”が存在し、その他の多くの店舗は顧客から見ると“代替”になりやすい。だからこそ、私たちは“ブランドとして選ばれる理由”を作る必要がある」と。
この仮説に基づき、配信内容の企画と運用を見直しました。具体的には以下の施策を実行しました。
1つ目は、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を配信に組み込むことです。視聴者に「商品を使った写真」を投稿してもらい、配信内で“ベストショット”を選ぶ企画を実施しました。参加型の仕掛けにすることでコメントが増え、配信の熱量と滞在時間を押し上げる効果がありました。
2つ目は、配信背景や演出を季節・イベントに合わせて更新し、常に“新鮮さ”を保つことです。見慣れた空間は離脱につながりやすい一方、空気感が変わるだけで視聴者の体感は大きく変わります。小さな変化を継続することで、「また見たい」と思ってもらえる状態を作りました。
3つ目は、定番の販売トークだけに頼らず、期間限定の企画回を作ることです。例えば私は「占い企画」を提案し、商品×占いという形で“エンタメ性”を増やしました。購入の背中を押すのは価格や機能だけではなく、「楽しい」「参加したい」「今日はこの回を見たい」という感情だと実感した出来事でした。
こうした取り組みを積み重ねた結果、店舗への流入は安定し、売上も業界内で高い水準で推移するようになりました。もちろん、裏側には泥臭い努力もあります。新アカウント立ち上げ時には、競合が少ない深夜帯を狙って配信を行い、チーム全員が夜遅くまで稼働することもありました。それでも「勝ち筋を作るために、やるべきことをやる」経験が、私の胆力と実行力を鍛えてくれたと思います。
私がこの業界を好きになった理由は大きく2つあります。
1つ目は、企画を立て、実行すれば、反応がすぐ返ってくることです。仮説を考え、どう見せるかを設計し、実行する。その結果が数字やコメントとして即座に現れる。改善の手触りが強く、企画職としての面白さが凝縮されていました。
2つ目は、SNSの世界は「面白いかどうか」が勝負であり、資本の大きさが必ずしも決定打にならないことです。新人でも、工夫次第で魅力的な配信を作れる。年功序列に左右されやすい環境とは違い、挑戦に対してフェアな場所だと感じました。
この起業経験を通じて、内向的で“黙々と作業する”タイプだった自分が、躊躇せずに意見を出し、周囲を巻き込みながら企画を前に進められるようになりました。視野も広がり、「コンテンツは人を動かせる」という確信を得ました。
今後は、より社会的なインパクトのある領域で、企画と運用の力を活かし、より多くの人がコンテンツを通して前向きな気持ちになれる体験を作っていきたいと考えています。