酒井剛志「東京論」
東京論は大ざっぱにいって二つに分かれる。均衡のとれた国土構造の構築という視点に立てば東京への行政、産業、文化の一極集中は好ましくない傾向ということになる。
最近の都心の地価高騰はこの主張を裏付ける材料になっている。
世界的ビジネス・センターに
しかし、東京を世界の中で見直すと、別の評価が生まれる。いま世界中のビジネスマンは東京に特別の関心を持ち、将来、世界的ビジネス・センターになることが確実と判断して事務所を持ちたがっている。
国際化と情報化の流れが必然だとすると、東京一極集中は好むと好まざるとにかかわらず、さからうことの出来ない現実であり、むしろこの流れを肯定して、都市機能の充実を図ることが先決ということになる。
恐らく国と都の現実の政策は後者の視点を踏まえつつ、極力、均衡のとれた国土構造の構築を目指すことになろう。たしかに矛盾はあるが、他に選択の道はない。
地価急騰は明らかにマイナス
問題は東京の国際都市化が大多数の都民の暮らしにどう響くかである。国際化をめぐる話題は明るいが、それだけで都民の職場が確保されるわけではない。地価急騰は明らかにマイナスだ。
現実を見れば、東京の就業者の四分の三は中小企業で働いている。一般的にいって東京はビジネス・チャンスに富み、サービス化、ソフト化の流れの中で地方都市のそれに比べればはるかに高い収益をあげている。
東京地区内の格差是正
しかし、円高と国際化の急激な進展に対応し切れずに苦しむものも少なくない。東京地区内の格差是正には適切な産業政策が必要になる。
いままで東京都には個別の中小企業対策はあったが、総合的な振興策はなかった。この面では他の大都市に後れをとっていたわけである。今回の提言はこの空白を埋めるもので、目標として「安心し、いきいきとした都民の暮らしを支える多様な就業機会と豊かな事業機会の確保」を第一に掲げている。
国際都市化によって都民の暮らし向きが悪くなったのではなんにもならない。ある時期、東京の衰退は避けがたい、とする議論が流行した。人口は減り、環境は悪化し、社会資本は決定的に不足し、改善のメドも立たないといったことを論拠にしていた。
光と影
今日、衰退論は後退しているが、国際都市化には光と同時に影もある。都民の暮らしとの関連でいえば都心部の地価高騰が住宅地全域に及んできたことは重大である。
東京に殺到しつつある外国企業はまず、事務所、次にスタッフの確保に悪戦苦闘している。なんとしても東京臨海部の開発を急ぎ、事務所用地を大量に供給しなければならない。
交通網の整備
決め手は交通網の整備で、東京都の財政力だけでは対応できないことがはっきりしている。公共事業的分野への民間資金の動員が不可欠である。
肝心なことは全体計画を整然と繰り上げ実施することで、国と都の協調が望まれる。
酒井剛志