D2Cブランドが店舗卸を始める前に知っておきたい、「棚を取る営業」の考え方
「ECでこれだけ売れているなら店舗でも扱ってもらえるはず」と考えていませんか?
確かに需要の有無では一理あります。
しかし、店舗バイヤーの目的はあくまでも限られた棚の中で利益を最大化することです。
ネットとは異なる視点で商品を選ぶ彼らに提案するときに重要なのは、「その商品を棚に入れることで、棚あたりの売上・利益がどう変わるか」という視点です。
本記事では、EC商材を店舗卸す際に必要な考え方の違いを整理し、店舗への卸営業に欠かせない考え方を解説します。
目次
ECと店舗では“戦場”が違う
店舗バイヤーのミッションは“棚売上”の最大化
新商品の導入は売上を減らすリスクがある
店舗卸売り営業で重視すべき3要素
商品価格と売れ行き
商品サイズと棚占有率
販売見込みの裏付け
競合の捉え方も切り替える
財布シェア vs 棚シェア
同カテゴリ商品が真の競合
まとめ
ECと店舗では“戦場”が違う
店舗バイヤーのミッションは“棚売上”の最大化
D2Cブランドが店舗卸を考えるとき、ECで売れている実績は大きな武器になります。
「すでにお客様に選ばれている」という事実は、需要の裏付けになるからです。
どんな人が、どんな目的で、どの価格帯の商品を買っているのか。
この情報は、バイヤーにとっても重要な判断材料になります。
ただし、店舗卸では「需要がある」だけでは十分ではありません。
店舗には、限られた棚があります。
バイヤーはその限られたスペースの中で、どの商品を置けば売上と利益が最大化するかを考えています。
つまり、バイヤーが見ているのは単に「この商品は需要があるか」ではなく、この商品を棚に入れることで、棚あたりの売上・利益が増えるかという視点です。
新商品の導入は売上を減らすリスクがある
店舗卸で忘れてはいけないのは、新しい商品を入れることが、単純に「売上を足す」話ではないということです。
店舗の棚には限りがあります。
新商品を入れる場合、多くの場合は、既存商品のフェイス数を減らす、陳列場所を変える、場合によっては取り扱いを止める判断が必要になります。
つまりバイヤーから見ると、新商品導入は「商品を増やす判断」ではなく、既存商品を入れ替えることで、棚あたりの売上・利益が増えるかを見極める判断です。
ここを理解していないと、提案は「良い商品なので置いてください」という話で止まってしまいます。
しかしバイヤーが知りたいのは、その先です。
今ある商品と比べて、なぜこちらの方が売れるのか。
同じ棚面積を使ったときに、なぜ売上や利益が上がると言えるのか。
店舗卸の提案では、この「既存商品と入れ替える理由」まで整理して伝えることが重要になります。
店舗卸売り営業で重視すべき3要素
商品価格と売れ行き
棚あたりの売上・利益を考えるうえで、まず重要になるのが「商品価格」です。
基本的には、同じ棚面積を使うのであれば、単価が高く、かつ売れる商品の方が店舗にとっては魅力的です。
たとえば、同じスペースに置く商品でも、500円の商品と1,000円の商品が同じ数だけ売れるのであれば、棚あたりの売上は2倍の差がつきます。
ただし、当然ながら単価が高ければよいわけではありません。
価格帯が変われば、購入する顧客層も変わります。
店舗に来るお客様の属性や、売場全体の価格帯に合っていなければ、いくら単価が高くても売れ行きは鈍くなります。
だから店舗卸の提案では、「高く売れる商品です」ではなく、その価格でも売れる根拠があるかが重要です。
ECでの販売実績がある場合は、どの価格帯で、どんなお客様に、どのくらい購入されているのかを整理しておくことで、バイヤーにとって判断しやすい材料になります。
商品サイズと棚占有率
次に重要になるのが、「商品サイズ」です。
店舗では、商品がどれくらい棚を使うかが導入判断に大きく関わります。
同じ売上が見込めるのであれば、できるだけ少ないスペースで展開できる商品の方が、店舗にとっては扱いやすくなります。
特に重要なのは、商品の横幅です。
横幅が大きい商品は、それだけで棚のスペースを使います。
反対に、横幅を抑えられる商品であれば、限られた棚の中でも複数の商品を並べやすくなります。
また、商品によっては棚に置くだけでなく、フックに吊るして展開する方法もあります。
こうした陳列ができると、通常の棚を大きく消費せずに導入できるため、バイヤーにとっても試しやすい提案になります。
商品サイズは、単なるパッケージデザインの問題ではありません。
店舗卸では、その商品がどれくらい棚を使い、どれくらい売上をつくれるのかまで含めて見られます。
だからこそ、提案時には商品の魅力だけでなく、サイズや陳列方法まで含めて伝えることが重要です。
販売見込みの裏付け
最後に重要になるのが、「販売見込みの裏付け」です。
店舗にとって、新しい商品を導入することにはリスクがあります。
実際に置いてみなければ、どれくらい売れるかは分かりません。
そのためバイヤーは、「この商品は売れそうです」という感覚的な説明では判断しづらくなります。
ここで活きるのが、オンラインでの販売実績です。
単に「ECで売れています」と伝えるだけではなく、どんなお客様が、どんな目的で、どの価格帯で、どのくらい購入しているのかを整理することが重要です。
たとえば、購入者の年齢層や性別、購入理由、リピート率、反応の良かった訴求などが分かると、バイヤーは自社店舗の顧客層と照らし合わせて判断しやすくなります。
店舗卸では、販売見込みを完璧に証明することはできません。
だからこそ、ECでの実績をもとに、この店舗のお客様にも売れる可能性があると伝えられる根拠を整理しておくことが大切です。
競合の捉え方も切り替える
財布シェア vs 棚シェア
競合の考え方も、Webマーケティングと店舗卸では少し変わります。
Webマーケティングでは、同じ目的を満たす商品を競合として捉えることが多くあります。
たとえば、睡眠の質を改善したいお客様に向けたハーブティーであれば、睡眠サプリ、アロマ、枕、マットレスなども競合になり得ます。
これは、お客様が同じ目的を満たすために、どの商品にお金を使うかを選んでいるからです。
つまり、Webでは「財布のシェア」を取り合う競合を見ます。
一方で、店舗卸では見方が変わります。
店舗にはカテゴリーごとの棚があり、商品を置けるスペースにも限りがあります。
そのため、実際に競合になるのは、同じ目的を持つ商品すべてではなく、同じ棚に並ぶ商品です。
睡眠向けのハーブティーであれば、枕やマットレスではなく、既存で取り扱っている他社のハーブティー、紅茶、健康茶などが直接の競合になります。
Webでは「同じ目的を満たす商品」が競合になる。
店舗では「同じ棚を取り合う商品」が競合になる。
この違いを理解しておくと、店舗卸で比較すべき相手や、提案で伝えるべきポイントが明確になります。
同カテゴリ商品が真の競合
店舗卸の提案では、事前に実際の売場を見に行くことが重要です。
なぜなら、バイヤーが比較する相手は、頭の中で想定した競合ではなく、すでにその店舗の棚に並んでいる商品だからです。
たとえばハーブティーを提案する場合、同じ店舗でどんなハーブティーや紅茶、健康茶が扱われているのか。
価格帯はどのくらいか。
パッケージのサイズはどれくらいか。
何種類くらい取り扱っているのか。
どの商品が目立つ場所に置かれているのか。
商品が多く減っているのはどの商品か。
こうした情報を見ておくことで、自社商品をどの位置づけで提案すべきかが見えてきます。
店舗卸では、「この商品には需要があります」と伝えるだけでは弱く、今その棚にある商品と比べて、どのような違いがあり、なぜ導入する意味があるのかを示す必要があります。
そのためには、売場を見ずに提案資料を作るのではなく、実際の棚を確認し、既存商品との比較を前提に提案を組み立てることが大切です。
まとめ
オンラインで商品が売れていることは、店舗卸においても大きな強みになります。
それは、すでに消費者に選ばれているという意味で、需要の裏付けになるからです。
ただし、店舗卸ではその実績をそのまま伝えるだけでは不十分です。店舗には限られた棚があり、バイヤーはその中で売上と利益を最大化することを考えています。
そのため、提案では「ECで売れています」だけではなく、この商品を棚に入れることで、棚あたりの売上・利益がどう増えるのかを整理して伝える必要があります。
商品価格、売れ行き、商品サイズ、販売見込み、そして既存の棚に並んでいる商品との違い。
これらをバイヤー目線で整理することで、はじめて「棚に入れる理由」が生まれます。
店舗卸の営業は、単に商品を紹介する仕事ではありません。
ECでの売れ方を、店舗の棚での売れ方に翻訳し、バイヤーが判断しやすい形に整えること。
ここに、D2Cブランドが店舗卸を始めるうえで押さえておきたい「棚を取る営業」の考え方があると思います。