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打ち上げより、打ち合わせが楽しい会社。

これを読んでる意識高いあなたは、中学生の集団に、時計とネクタイを奪われたことがありますか?


ぼくはあります。生まれて初めて塾の先生のアシスタントをやった時、チャイムがなって先生が教室の外に出ると同時に

「長谷川先生〜!!イェーイ!!ネクタイ貸してぇ〜!!」

と男の子たちが束になって囲んできたのです。当時カッコイイと信じていた細い黒ネクタイと、ビームスで買ったボーラの腕時計はあっけなく奪われてしまいました。まぁなんとか取り返したのですが、教室を出たあとに、先輩の先生に「いやぁ〜先生ってタイヘンですねぇ」と言うと、彼はこう言いました。

「ガマンするのが仕事なんだよね」

社会とはキビしいところです。そのあと「飲み会は楽しいからさ」と、先輩の先生たちで新しい先生の歓迎会を開いてくれましたが、これもぜんぜん楽しくありませんでした。「ぼく酒飲めないんすよね」と言ってるのに、「飲んだらどうなるの???」とか楽しそうな顔して、ムリやりビールを飲ませようとしてきます。その様子は、大人の顔した中学生。けっきょく「トイレ行ってきます」と言って、家のトイレまで帰ったきりで、まだ居酒屋には戻ってないまま現在に至ります。


申し遅れましたが、いまなら、国語の先生よりも面白い国語の授業をやる自信があるコピーライターの長谷川哲士です。ぼくが人生で最後に社員として勤めた会社「面白法人カヤック」で、退職直前にこんなバナー広告をつくりました。



この“面白い”は“楽しい”にも言い換えられますね。「人生の半分以上の時間は、仕事の時間。だったら、仕事が楽しければ、人生は楽しいよね」と何度か聞いたことがありますが、やっぱりそれはそうなんだろうなぁ〜と思うわけです。打ち上げで飲んで酔っ払ってる人より、打ち合わせの最中に、くだらない企画を反射的にしゃべってツッコまれてる自分のほうが、楽しい自信があります。

打ち合わせが終わって別れる時に、一緒にお仕事する人から「今日の打ち合わせ、楽しかったです」とか「仕事じゃないみたいでした」とか、そういう声を聞くと、ビール飲むよりも、はるかに自分に酔えるんですよ。


・・・と、ちょっと異常なまでに、打ち上げをライバル視しているぼくですが、最近、打ち上げを楽しくするコツを発見しました。解決方法は、じつにシンプル。“打ち上げ”だと思わずに、“打ち合わせ”だと思えばいいのです。

会話のすべてを新しい企画のネタにすれば、打ち合わせの時と同じハッピーな自分でいられます。打ち上げの最中に「休日何をしてるんですか?」と言われて何をしゃべっていいかわからず、鬱な気持ちが上がり、“打ち上げ”が“鬱上げ”になることもありません。


これをぼくは“打ち上げ合わせ”と心の中で呼んでいます。打ち上げは、つぎの企画を打ち上げる打ち合わせなのです。まぎらわしい言い回しですが、たとえば、飲料メーカーとの打ち上げで「“とりあえずビールサーバー”というサーバーをメーカーの名前で売れば、ビールのシェア伸びるんじゃないすか?」とか、競馬関連の仕事の打ち上げで「黄色い服着て白い帽子をかぶったビールジョッキーという騎手がいたら、ビールの広告も同時にできますよね〜」とか、本当にくだらなくていいので、その場で企画を出す。

あるいは、あらかじめ用意していた企画をもっていき、その場でプレゼン。みんなお酒を飲んで楽しくなってるので、つい企画も面白く思えてしまうというようなことも考えられます。

こうやってると、得意じゃない飲み会にも楽しい気分で参加できますし、自分だけにとどまらず「(この人は仕事が楽しくて仕方ないんだな)」と思ってくれる人も周りで出てきます。そしておそらく「仕事は楽しいほうがいい」と、じつはみんな願ってるので、どうせだったら“楽しんでる人”と仕事したいと思うんじゃないでしょうか。


10年前、社会人の先輩でもある塾の先生は「ガマンするのが仕事」と言いましたが、「楽しむのが仕事」だと、いまのぼくは思ってます。

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