Macが世に出始めた頃、「これを学びたい」という気持ちで専門学校へ進んだ。それを活かせる仕事として選んだのが、印刷会社だった。
当時はデザイナーとDTPオペレーターが明確に分かれていた時代。私は後者として現場に入り、レイアウトを組んで、データを整えて、入稿する日々を積み重ねた。
子育てがひと段落して再就職したとき、現場は変わっていた。「DTPができる人はデザインもできて当然」という空気になっていた。デザインを専攻してきた人たちと同じ土俵に立たなければならない。正直、脳の作りが違うと感じた。自信は、ずっとなかった。
それでも現場に居続けたのは、やっぱりデザインが好きだったからだと思う。パッと目に入ったものが「いい」か「そうじゃないか」、気づいたら判断している。パッケージがきれいな商品はつい手に取るし、綺麗な箱は捨てられない。デザイナーはみんなそうかもしれないけれど、その感覚だけは10年以上ずっとある。
手を動かしていくと、だんだん詰まってくる。上流に戻ると整ってまた動ける。
フリーランスになって、自分の得意と不得意がはっきり見えてきた。
デザインソフトを開いて作業を進めていくと、どこかで不思議と手が止まる。でも方向性を考えたり、コンセプトを言語化したり、「何を伝えたいか」を整理したりすると、またアイデアが動き出す。
印刷の現場で10年積み上げてきたからこそ、デザイナーの立場や感覚に寄り添いやすい。どこが難しくて、どこに時間がかかるか、想像しながら関われる。その配慮が、上流工程での強みになっていると感じている。
「AIがいれば、私でも独立できるかもしれない」
独立のきっかけは、正直に言えば追い風ではなかった。でも、そこで出会ったのがAIだった。
24時間いつでも相談できて、リアルな人には聞きにくいことも受け止めてくれる。優秀なアシスタントがそこにいると知ったとき、背中を押された気がした。AIを学ぶと決めてから、個人事業主になった。
今はChatGPT・Gemini・Claude Codeを目的に応じて使い分けながら制作を進めている。AIはあくまでアシスタント。でもそのアシスタントがいることで、「考えること」に集中できるようになった。
仕事は、人と人とのやりとり。
2025年4月に「Synapsis」として独立後、商工会議所でAIセミナーの講師を務め、個別相談では複数の事業者のAI活用を一緒に考えた。「むずかしい」が「できるかも!」に変わる瞬間に立ち会えることが、純粋に嬉しかった。
自由は難しい。人との関係に悩むこともある。それでも、信頼関係を築きながら仕事を続けていきたいと思っている。
私の指標はシンプルだ。喜んでもらえているか、価値を届けられているか。それが報酬という形で返ってくると信じて、もっと誰かの役に立つ仕事を広げていきたい。