【大嶋淑之・新潟】夏の終わり、砂を求めて
Photo by Wolfgang Hasselmann on Unsplash
梅雨が明け、夏本番を迎えるこの時期。皆さんは何か「無性にやりたくなること」ってありますか?夏といえばBBQや海水浴、花火大会を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、私がこの時期になると決まって無性にしたくなる、ちょっと変わった行動があるんです。それは、「砂探し」です。
いえ、砂金を探すわけではありません。私が探しているのは、映像制作に使える、特別な「質感」を持った砂です。
映像制作において、私たちは常に新しい表現方法を模索しています。完璧なライティングや精緻な編集はもちろん重要ですが、それだけでは伝えきれない、もっとプリミティブで、触感に訴えかけるような表現を追い求めているのです。
そんな時、ふと立ち止まって足元を見下ろすと、そこには無限の可能性が広がっています。
例えば、近所の公園の砂場の砂。子供たちが遊んだ後の、少し湿った、まとまりのある砂。これを指でなぞると、まるで抽象画のような模様が生まれます。この動きをマクロレンズで撮影し、映像のオープニングやトランジションに使うと、クライアントの持つ「柔軟性」や「創造性」を表現するのに最適です。
また、河川敷の砂利や、工事現場の砂。こちらはより硬質で、ざらざらとした質感が特徴です。これらの砂に強い光を当てて撮影すると、影がくっきりと浮かび上がり、力強さや安定感を表現することができます。企業の「堅実さ」や「信頼性」を伝えたい映像には、こうした素材が意外な効果を発揮します。
そして、最も探すのが難しいのが「風化した砂」です。風や雨にさらされて、角がとれ、まるみを帯びた砂。これをスローモーションで撮影すると、時を超えてきたような、神秘的な雰囲気が生まれます。企業の歴史や、ブランドのストーリーを語る映像に、この砂の映像を重ねることで、深みのある、感動的な演出が可能になります。
私は、この「砂探し」を通して、日頃から見過ごしてしまいがちな「身近な素材」の美しさを再発見しています。そして、その発見が、映像制作における新しいアイデアやインスピレーションを与えてくれるのです。
今年の夏も、新潟のあちこちで、私はひっそりと砂を探しているかもしれません。もし、公園の砂場で真剣に砂を眺めている不審な人物を見かけたら、それは私かもしれません(笑)。
一見無関係に見える行動が、実は仕事に繋がっている。そんなユニークな視点で、これからもワクワクする映像を皆さんに届けていきたいと思います。