【阪田和典】ブラウザの開きすぎたタブこそが未来の地図だ
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ブラウザを開くと、数え切れないほどのタブが並んでいる。そんな光景に、ため息をついたことはありませんか。読みかけの記事、後で調べようと思った動画、何のために開いたか忘れた謎のサイト。僕たちはついつい、これを「整理整頓ができていない」とか「集中力が欠如している」といった、ネガティブな要素として捉えてしまいがちです。でも、Webマーケターとして情報の流れを眺め続けていると、この乱雑なタブの並びにこそ、その人の未来を拓く最強のポジティブなエネルギーが隠されていることに気づかされます。
効率化や最適化が叫ばれる今の世の中では、無駄を削ぎ落とすことが正解だとされています。でも、あまりに整理されすぎた整然とした世界からは、新しいものは生まれません。タブが溢れている状態というのは、あなたの知的好奇心が溢れ出し、世界と積極的に繋がろうとしている証拠です。一つ一つのタブは、今はまだバラバラな点に過ぎないかもしれません。でも、その点と点が思いがけない瞬間に繋がり、誰も見たことがないようなビジネスのアイデアや、人生を劇的に変える解決策に化けることがあります。
僕が多くの挑戦を支援していて、一番ワクワクするのは、特定の分野のプロフェッショナルが、全く関係のない趣味や関心事を語り出す瞬間です。データ分析の専門家が突然、歴史建築について熱く語ったり、デザイナーが植物の生態に詳しかったりする。その「一見無駄に見える関心」の積み重ねが、サービスの独自性や、誰かを驚かせる新しい仕掛けに繋がっていきます。専門性という縦の軸に、こうした好奇心という横の軸が幾重にも重なったとき、初めてその人だけの唯一無二の価値が立ち上がるのです。
だから、開きすぎたタブを無理に閉じる必要はありません。むしろ、もっと増やしてみませんか。自分が何に心を動かされるのか、その真っ直ぐな直感を信じて情報の海を泳ぎ続けること。その過程で出会う、一見役に立たないような知識や体験こそが、あなたというブランドを豊かに彩る宝物になります。僕自身のこれまでの歩みを振り返っても、当時は無関係に見えた知識の断片が、今の僕を支える強力な土台になっています。
完成された枠組みに自分を押し込めるのではなく、未完成の好奇心を丸ごと許容してくれる場所を選んでください。そこでは、あなたの散らかった興味が、チームにとっての最高の武器になります。未来は、きれいに整理された履歴書の中ではなく、あなたのブラウザに並んだ、その雑多で愛おしいタブの向こう側にあるのです。明日を創る力は、あなたの「もっと知りたい」という純粋な想いから始まります。さあ、次はどんな素晴らしい扉を開きましょうか。あなたの好奇心が描く地図は、どこまでも広く、明るい世界へと繋がっているはずです。