出版社から訪問マッサージの仕事へ。キャリアを変えた理由
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私はこれまで20年近く、出版業界で営業事務として働いてきました。
受発注管理や請求処理、物流調整など、営業部門のオペレーションを支える仕事です。
成熟した業界ならではの非効率的な部分もありましたが、自分が関われる範囲ではできる限り手数を減らし、業務を効率化することを意識して取り組んできました。日々の改善の積み重ねによって仕事がスムーズに回るようになることに、誇りややりがいも感じていました。
転職を考えるきっかけになったのは、コロナ禍の頃の出来事です。
当時、闘病していた母の体調が悪化し、介護が必要になりました。会社がリモートワークを取り入れてくれたおかげで実家に戻ることができ、母は本人の希望通り在宅で最期の時間を過ごすことができました。
母はベッドから起き上がれなくなった後もスペイン語の勉強を続けたり、朝晩オンラインでヨガ講師のマインドフルネスを中心としたレッスンに参加したりしていました。
そして、最後のその瞬間まで「母のまま」生きていました。
私はその姿を誇らしく思うと同時に、自分自身の生き方について考えるようになりました。
当時、私が関わっていた紙の本の市場規模は年々縮小していました。デジタル化が進む中で、出版業界は大きな変化の中にありました。営業部で見える数字も厳しい状況が続き、自分の業務は営業部の中でも経理寄りだったため、コロナ禍を経てエンドユーザーである読者の声からはさらに遠ざかっていきました。
業務改善にも限度があり、次第にルーティンワークの比率が増えていく日々の中で、「自分はこの仕事にどれだけ夢中になれているだろうか」と考えるようになりました。
母の生き方に負けないくらい、自分も自信をもって「生きている」と言える仕事をしているだろうか。
そう考えたとき、もっとエンドユーザーとの距離が近く、夢中で取り組める仕事に挑戦してみたいと思い、転職を決意しました。
きっかけが母の死だったことや、当時自分自身も健康に興味を持っていたことから、ヘルスケアやウェルネス、介護や医療といった分野の求人を見るようになりました。その中で出会ったのが、訪問マッサージの「治療コーディネーター」という仕事でした。顧客との距離が近く、特別な資格がなくても応募できる仕事であることもあり、思い切って新しい業界に飛び込むことにしました。
実際に働き始めて感じているのは、これまでの仕事のキャリアだけでなく、これまで生きてきた経験のすべてが仕事に活きているということです。
事務やPCスキル、社会人としての基本的なマナーはもちろん、自分の業務を自分でマネジメントしていく力。患者様やご家族様と向き合う場面では、これまでの人生で経験してきたことが共感や想像する力として自然と発揮されていると感じています。
そして訪問マッサージの現場では、身体のケアが人の生活にどれほど大きな影響を与えるのかを日々実感しています。
この経験は、健康や生活の質を支えるサービスに関わっていきたいという、今のキャリアの方向性にもつながっています。