**七層の詩──
**七層の詩──
ひとは重なりの奥で、ようやく光になる**
一層目──「息」
世界がまだ始まっていない場所に、
かすかな温度だけが置かれる。
触れれば消えてしまいそうな、
生まれたばかりの呼吸。
そこに、
すべての始まりは潜んでいる。
二層目──「白の土台」
まっさらではない白。
受け止めるための白。
泣いたあとに残る柔らかいまぶたの色。
ここに落ちる影は、
まだ未来の形を知らない。
ただ、光を迎える準備をしている。
三層目──「気配」
色にはならない、
色の手前にある風。
そっと広がり、
画面の温度を決めてしまう薄い予感。
まだ何ひとつ描かれていないのに、
ここにはもう“あなたの季節”の匂いがある。
四層目──「骨」
色を封じて、
光と影だけを置いてゆく。
削ぎ落とすほど、
輪郭ははっきりし、
隠していた沈黙が浮かび上がる。
ひとは結局、
この層に宿したものから逃れられない。
五層目──「肉」
迷いを捨て、
厚みとして世界に押し出す。
涙の跡も、
笑ったときの震えも、
すべてが凹凸になって残る。
ここは、生の層。
傷でも衝動でも、
触れられるほど確かなものになる。
六層目──「やわらぎ」
強すぎる記憶の上に、
薄い光の布をかける。
消さない。
否定しない。
ただ、輪郭をやわらかく撫でるだけ。
抱えすぎたものが、
ようやく呼吸を取り戻す。
七層目──「深い光」
透明の層を重ねるたび、
光は沈み、
またゆっくりと底から戻ってくる。
一層では起きない魔法。
十層目でようやく芽吹く静かな輝き。
それは表面ではなく、
重なりの奥にだけ宿る光。
そして、重なりは「あなた」になる
七つの層は、
塗りつぶすためではなく、
置き去りにするためでもなく、
ただ重なるために存在した。
ひとは変わるのではない。
塗り替わるのでもない。
重なって、深くなり、
ようやく“光の層”になるのだ。
表面に見えるのは、
たったひとつの画面でも──
その奥では、
七つの季節が静かに息をしている。