🌌第六章 蒼の彼方へ
🌌第六章 蒼の彼方へ
水平線の向こう、
朝と夜のあいだにある一瞬の蒼が好きだ。
太陽でもなく、星でもなく、
すべての光が混ざり合って生まれる色。
それはまるで、海と空が“ひとつ”に戻る瞬間のようだった。
ボートが静かに沖へと進む。
風はやわらかく、波は穏やか。
その揺れに身を委ねながら、
私は思う──この旅は、どこから始まり、どこへ向かうのだろう。
潜降。
水の中は、静けさそのものだった。
音はなく、光だけが語っている。
サンゴの影が揺れ、魚たちがゆっくりと呼吸する。
まるで、世界がやさしく鼓動しているように。
ふと、胸の奥で何かがほどけていく。
あの日の記憶も、言葉にならなかった想いも、
すべてが潮に溶けていくようだった。
海は、抱えた痛みさえも包み込む。
それを、静かに、美しく、遠くへ運んでいく。
深く潜るほど、
光はやわらぎ、蒼が深まっていく。
その蒼は、もう「色」ではなく「祈り」だった。
いのちの始まりと終わりが、
ここでは同じ呼吸の中にある。
「ありがとう」
その一言が、海に溶けていく。
そして、どこか遠くで「こちらこそ」と返ってくる気がした。
浮上すると、世界が光に満ちていた。
水面に映る自分の姿が、笑っている。
それは、海が見せてくれた“いま”という奇跡。
ボートの上で空を仰ぐ。
風が髪をほどき、潮の香りが胸を満たす。
蒼の彼方へ──
それは、どこか遠くではなく、
自分の中に広がる海のことなのかもしれない。
今日もまた、新しい旅が始まる。
潮の音を道しるべに、
海とともに、これからを生きていこう。
🕊あとがき──海とともに
この海に潜るたび、
私は“生きること”を少しずつ学んできました。
呼吸すること。
委ねること。
そして、信じること。
もしこのブログを読んで、
あなたが少しでも海の静けさを感じてくれたなら──
それが、私にとっていちばんの喜びです。
また、どこかの海で会いましょう。
蒼の彼方で、心はいつもつながっています。