人生には様々な転機があります。みな様の人生の転機はどのようなシチュエーションでしたでしょうか?入学、卒業、入社、結婚、出産、退職、再就職など色々あります。
小職は、お陰様でプライベートでは素敵なパートナーに出会い?、一姫二太郎と平凡ではありますが快適な日々を過ごしています。1年前からは愛犬オラフが次男として加わり5人家族となり、オキシトシンが出まくる毎日となっています。
直近に控える転機は、先日大学の面接をクリアし、数ヶ月後に控える長男の大学入学です。そして次の転機は大学を卒業し社会人になって約2年の長女が計画している退職…。4年間大学女子駅伝のメンバー選出に向けた練習の日々を過ごし、普通の大学生を経験できなかったことが心残りだったようです。ワーキングホリデーを活用した武者修行の企てをしています。そんな長女も、毎年12月に開催される富士山大学女子駅伝では2年生の時に、女子10,000m日本歴代3位の有名な後輩と一緒に走らせていただく機会がありました。貴重な経験だったと思います。
本題の小職のお話です。仕事の面では6つの転機がありました。職種が営業、販促、監査に、そして勤務地が神奈川、仙台、名古屋、東京と変わったことです。
また、コロナ禍の働き方改革の影響により、終業後の空いた時間に本を読み漁る時間が確保できたこと。これは、学生時代の勉強不足を取り戻せたのではないかと思うほどの継続学習を定着させる良い転機となりました。現在も習慣化していて、週末は図書館で色々な本と出合うことが一つの愉しみとなっています。CSV経営という概念への共感から、サステナ経営検定への挑戦にも繋がりました。
ところで、皆様の中で「デザイン思考テスト」を受験された方はいらっしゃいますでしょうか。「デザイン思考テスト」は「①誰の」、「どの様な②不を」「どのような③技術で解決するか」、アイデア創出とアイデア評価の2面で考え、そのセンスがスコア化されるテストです。最初に「①誰の」と「どの様な②不を」に対してそれぞれの選択肢からBestマッチングを選び、次に「どのような③技術で解決するか」を制限時間内に可能な限り複数の組みあわせを考える作業を行います。
VUCAの4文字が不確定要素の多さの代名詞となる現代社会において、このマッチングによる問題設定力は欠かせず、当事者意識をフル回転させて洞察することはとても大切であると感じています。特に新たな何かを創出する際には欠かせない能力ではないでしょうか。
イノベーションのジレンマの著者、クレイトン・クリステンセン氏の「ジョブ理論」も「デザイン思考テスト」と同じロジックという印象です。「①腰が曲がったお爺さん」が「②芝刈りをしたいけどどうしても腰が痛くて芝が刈れないという不満」を「③庭師もしくは芝刈り機」で解消すると言ったケース。きっと、お爺さんはお婆さんに綺麗なお庭を見せたいけれどそれができないもどかしさがあったのでしょうね。マーケテイングの4Cを含めこれらに共通するのは「相手が主語」になっている点はとても興味深いです。
また、皆様も御存じのピーター・ドラッカー氏が、企業の目的は顧客の創出であると主著で述べていることはあらゆる場面で引用されています。ここでいう顧客の創出は「問題発見と潜在課題創出」と解釈しています。ここでも企業の目的は「相手を主語」にして活動することであると置き換えることができます。書店に行くと様々な書籍が溢れていて振り回されそうになりますが、これら4つの概念から帰納的に導き出される原理原則には根底で通じるものがあると感じます。
ところが、結果のみが評価される現場では、残念ながら定性的な要素を丁寧に探索することがあまり重視されず、「③の手段」により得られる利益等の定量的な要素を手中にすべく短期的な発想に陥りがちです。その結果、商品(手段)、自社が主語の発想・発言が蔓延し、実績が出てこないとパワハラ系の言動になるという負の連鎖となります。狩猟型の販売組織ではあるあるの話ですね。種まきと水やりをせずに、実りを刈ることのみを追い求めるとても残念な光景です。
企業が本来の目的である顧客創出より、その結果生まれる利益を目的としそれを過度に追い求めた結果、温暖化を始めとした自然資本の毀損や、児童労働そしてパワハラなどの人的資本の毀損及び品質偽装などの社会問題を引き起こしていると感じます。いずれにしても、本来あるべき「相手起点」の発想が過度に「自己起点」となった当然の帰結ではないでしょうか。利益は顧客創出を継続するために、企業や従業員が存続するための手段にすぎないのにもかかわらず…。
新規開拓を中心とした営業経験や二次情報で得たナレッジを踏まえ担った販促業務では、担当していた本部を長期的な視点で、お客様起点で丁寧に、一人ひとりが定性的な要素を育む環境に移行させる挑戦をしました。上述の残念な光景が職場でも散見され、お客様が主語となる会話があまりにも少なすぎることに違和感があったことが挑戦しようと思った背景にあった様に感じます。
しかしながら、言語化が下手なのか、巻き込む力が無いのか、そもそもそれが通じない文化の組織なのか、狩猟型の行動を農耕型へと変容を促すことは上手くいきませんでした。
そんなモヤモヤしている時に、「社内起業のワークショップ」に参加しました。
この「社内起業のワークショップ」に参加したことは、自身の行動変容に繋がる転機となりました。定年まで4年と遅い時期の転機です。上述のデザイン思考テストや働き方改革により出会えた数々の書籍が要因の一つであることを考えると、なるべくしてこのタイミングとなっているのでしょうか。グループ会社の方と「社内起業の公募」に挑戦したこと、今ここでストーリーを書いていること、これらはワークショップへの参加がきっかけだったように思います。
「社内起業のワークショップ」はデザイン思考テストの結果を踏まえて声かけがあり、数名の他社の方と一緒に3か月間共同で行うプログラムでした。
参加者はそれぞれの「想い」であるMYミッションを設定し、「食」「地域創生」等のテーマごとに分けられたトークルームで仲間探しをするところから始まります。その後、トークルームにおけるコミュニケーションを踏まえて、チームを組みたいか否かの投票が行われ、3人以上が双方組みたいという状態になるとワークショップに参加できる仕組みになっています。2024年、2025年の2回参加をする機会をいただいたのですが、運よく2回ともチーム結成に成功しました。
チーム結成後はそれぞれの想いをチームの想いに変換する作業が行われるのですが、その過程で「不」の炙り出しを行うプロセスがあります。2度と経験したくない「不」の原体験が「自分と同じ想いをさせたくない」という想いに繋がり、その解決に向けた飽くなき挑戦が内発的原動力になり起業に繋がるというロジックです。
英国社会(権威)から異端とみなされ迫害されていたクエーカー教徒(弱者)は大学にも行けず公職にもつけず、生活を守る自衛のためにクロレッツやホールズで知られるキヤドバリー等の起業に至っているそうです。このクエーカー教徒の起業に至るストーリーにも、「迫害により働きたいけど働けない」という「不」の感情が根底にあったと推測されます。そして、苦い「不」の体験が、同じ想いをさせたくないという他人への配慮や消費者の裏側にある「不」の洞察に繋がり、それらをマッチングさせて起業の成功に至っていると解釈しました。このストーリーはワークショップのプロセスとも合致していて、なるほどといった感じでした。
しかも、これらの企業は華美を慎み、隣人に配慮する教義が利益を最優先しない企業の原型となっているそうです。CSV経営の原型がここにあったのですね。ところで、サステナ系のソフトローである「CSR」という概念は、欧州で生まれており1924年に英国のクエーカー教徒オリバー・シェルドン氏が書いた「経営の哲学」という論文が発祥と言われています。皆様はご存じでしたでしょうか。教義が根底にあるのかもしれませんが、持続的な社会の中核となるソフトローを創り上げることに至っている、不の原体験を解決したいという原動力は凄いですね。
このワークショップには①共通の想いのメンバーでチームが結成されること、②問題設定から課題抽出まで常識にとらわれることなく自由にブレストできること、③自身の不と重ねながら誰かの不を解消したいという相手起点の発想が根底にあること、これらの要素が愉しさの背景にあったように感じます。
「地球温暖化による異常気象、戦争、地域紛争などによる、世界的な食糧難、エネルギー不足が発生する可能性が高まっている中で、今まで同じ生活が続くことを期待し、何もしないでいるように見える人たちばかりに見える世の中でも---、同士を集め、できることから少しでも問題解決にあたりたい」これは、1回目のワークショップでチームメイトとなった方の想いです。今の職場で出会ったことのない想いで、自分の想いとの近さに思わず、「それいいね!」と嬉しさを感じたのを今でも覚えています。私の場合、「食の大切さや紛争などで尊い命を失う事の愚かさを教えてくれた肉親の存在とその他界が、フードロス削減や自給率向上などの食の社会課題を解決したい」という想いに至っている経緯があるのですが、共通の想いのメンバーでチームを結成することは何よりも大切と感じています。いままでのモヤモヤの原因は心底共通の想いの方と出合えていなかったこと、そして個人と個人、そして組織や社会との「想い」が一致し共感が生まれている状態が良いビジネスの創出には欠かせないことに気づかされました。同じ「想い」の方が身近にいると永遠にガソリンタンクが空にならないイメージです。最近、不確定要素が多くなり自社の存在意義を問い直す意味合いでパーパスを設ける企業が増えていますが、個人の「想い」とパーパス、ビジョン、ミッションといったものが合致していることがとても大切であることを改めて感じる機会にもなりました。