昨年末グループ会社の方とフードロス削減をテーマに社内起業の公募に挑戦しました。チームメイトは兼業で農業をされている方で、不揃いの作物を廃棄すること、保水機能の低下及びそれに伴う土壌流出のリスクを考えずに森林伐採をする近隣の住人の行動などに問題意識を持たれている方でした。私も、カロリーベースで40パーセントと低い食料自給率の状況下で発生する農産物の廃棄や、9人に1人だった相対的貧困が6人に1人と悪化していることなどについて問題意識があり、方向性が同じということでチーム結成に至りました。ワークショップと同じく、想いに共通点があり双方のスカウトが重なることが参加の条件でした。チームメイトの方は、初回のワークショップにおいて「食」のトークルームでお見かけした方で、ご縁を感じながらの船出でした。
チーム結成後、誰のどの様な「不」を解決するのかをマインドマップを活用して発散的に考えることから始めました。具体的には作るひと、売るひと、買うひとそれぞれの「不」を探すプロセスでした。最終的にはスーパーの店長が抱える「不」✖️共働きの主婦の「不」×ロス削減対象の商品という仮説を設定するに至り、ベンチャーヤピタルの代表の方に一度目の壁打ちで評価をいただきました。そして、男性のバイアスが入っている、ファクトが少ない、ある特定の商品のロス削減はスーパーの経営課題解決に繋がる可能性があるなどのご助言を頂きました。
終業後に自己啓発という形で作業を行う必要があったため、時間的な制約がありました。制約がある中でファクトを集める必要があったため、スーパーの店長は電話で20件、主婦はグループ共通のポータルを活用したFormsアンケートで100件、それぞれ目標を設定して少しでも質の高いファクトが収集できるように努めました。
スーパーへのアンケートはフードロス削減という課題意識はあり反応は良かったものの、裏事情で公にできないものがある印象がありました。それでも1/3ルールによる廃棄が課題であるという生の声を確認できたのは収穫でした。また、主婦へのアンケートは過去に仕事をご一緒いただいた方にメールでアンケートリンクを送付するなどの効果もあり、目標の件数を集めることができ様々なご意見を伺うことができました。
集めた情報を分析した結果、最初に設定したある特定の商品は子供が産まれると敬遠される傾向があったため、1/3ルールの期限を過ぎた賞品を対象に切り替えることにしました。また、ポイ活や、子供と一緒にロス削減を楽しむゲーミフィケーションの要素を加えるなどしてナッジ効果を加えるなど案の解像度を上げる試行錯誤も行いました。
試行錯誤を踏まえた2回目の壁打ちは、次のステップに進めるか否かのジャッジがある重要なプロセスでしたが、ベンチャーキャピタルの代表の方からはニーズの深掘りができていると好印象のコメントをいただくことができました。チームメイトとの振り返りで、慢心は無かったのですが、最終までは行けないとしても次のステップには行けそうという共通の感触でした。しかしながら、結果は落選でした。次のステップは通常勤務の20%を当該作業に充当する必要があったのですが、チームメイト曰く、チームメイトの組織が当該役務を無償で行うことに難を示したことが大きく影響していたとのことでした。その真偽を確かめることはしなかったのですが、仮にそうだとしても本当に案が優れたものであれば違うアプローチで継続のオファーがあっと思うので、個人的には案のコンテンツが新規事業推進部門のお眼鏡に合わなかったのだと客観的に考えています。
結果的に先のステップに進めなかったことはとても残念でした。長年仕事をしていて、失敗して涙を流したのは初めてでした。しかしながら、挑戦したことにより、「自分は単に物を販売して利益が出たと喜ぶ仕事ではなく、フードロス削減を含む社会課題解決に直接関わる仕事がしたい」という、自分が進みたい方向が明確になったことはとても大きな収穫でした。
チームメイトとは、その後も他の公募への挑戦を継続しましょうということになっていたのですが、どちらかというと自分の想いに合わせていただいていた印象があり、先方からの連絡を待ってしまい、あっという間に1年が経ってしまいました。
ところで、下記のコメントワークショップの代表の方からの助言です。
「このテーマをやり切る覚悟はあるか?あるタイミングで変わるのか?答えはNO」「他者からの承認の積み重ねで覚悟になっていく。」「その為にストーリーが語れる様になる必要がある。ワークショップはその土台と入口である。」
個人的には凄く刺さった言葉で、この1年間はこれを何度も見返し自己問答をしていました。今この場をお借りしてストーリーを書かせていただいていることは、正に自分の想いが他者からの承認が得られるか、そしてセカンドライフに向けた次のステップへの覚悟を決める場になると感じています。ビジネスは想いが共通する方との共感を探求するプロセスなのかもしれないですね。
ワークショップで痛感しましたが、頭のモヤモヤを言語化するのはとても難しいですね。デジタルデータをアナログ変換すると劣化してしまうように、頭のモヤモヤを言語化すると微妙に想定していたイメージと異なることがしばしばあります。モヤモヤを直接やり取りができるソリューション、あると良いかもしれないですね。