メガバンクの巨大なシステムを構築し、外資系コンサルティングファームで冷徹なまでの戦略を練り上げてきた私が、今もっとも尊敬しているリーダーは、公園の広場でパン屑を追いかけている一羽のハトです。突拍子もない話に聞こえるかもしれませんが、何百羽ものハトが一斉に飛び立ち、ぶつかることなく美しい隊列を組んで空を舞う姿には、現代のビジネスシーンが喉から手が出るほど欲しがっている究極の組織マネジメントが隠されています。
彼らの群れには、絶対的な権限を持つ社長も、細かな指示を出す中間管理職も存在しません。それでも彼らは、隣のハトとの距離を一定に保つ、周囲の速度に合わせる、そして中心に向かって移動するという、驚くほどシンプルな三つのルールだけで、複雑な環境変化に即座に対応しています。私がかつて数千億円を投じて構築しようとした自律型システムの本質が、実は公園の空に広がっていたのです。これこそが、私が今、クライアントに提案しているしなやかな組織の正体です。
多くの企業では、事細かなマニュアルや厳格な承認フローで現場を縛ろうとします。しかし、管理を強化すればするほど、組織の動きは鈍くなり、ハトのような軽やかな転換は不可能になります。これからの時代に求められるIT戦略とは、最新のツールを導入することではなく、現場の一人ひとりがハトのように直感的に動けるためのシンプルな共通言語を作ることです。透明性の高い情報共有という風を通し、全員が同じ方向を向けるような北極星を掲げる。それだけで、組織は勝手に加速し始めます。
私は独立してから、あえて難しい言葉を捨てました。経営層の方々と議論を重ねる時も、複雑な図解より、このハトの話をすることがあります。あなたの会社は、一羽のリーダーが倒れたら全滅する古い軍隊になっていませんか、と。個々が脆弱であっても、つながり方がしなやかであれば、組織はどんな荒波も乗り越えられます。デジタルの力は、そのつながりを強固にし、個人の直感を増幅させるためにこそ使われるべきなのです。
効率化の果てに人間味を失ったシステムは、いつか必ず拒絶反応を起こします。私が目指しているのは、最先端の技術を駆使しながらも、どこか動物的な本能を呼び覚ますような、温かくて自由な仕組みです。それは、誰かに命令されるのではなく、自らの意思で最高のパフォーマンスを発揮したくなるような、そんな場所。公園のハトたちがパン屑という小さな報酬を追いかけながらも、空では壮大な芸術を描き出すように、ビジネスの世界でも個人の幸せと組織の成長が、自然と重なり合う瞬間を作りたいと考えています。
もし、あなたが今、ガチガチの組織図や古い慣習の中で息苦しさを感じているなら、一度立ち止まって空を見上げてみてください。そこには、どんな高度な教科書にも載っていない、自由で力強いチームのあり方が示されています。私はこれからも、銀行員時代に学んだ堅牢な守りと、ハトから学んだ軽やかな攻めを武器に、誰も見たことがないような素晴らしい景色をクライアントと共に描いていこうと思います。泥臭い現場の知恵と、洗練されたテクノロジー。その二つが溶け合った先に、本当のイノベーションが待っているはずです。