ビジネス本を読んで素晴らしい理論に触れたとき、私たちは一瞬「無敵」になったような錯覚を覚えます。しかし翌朝の会議でその理論がそのまま役に立ったことが、果たして何度あったでしょうか。
「理論は美しい。しかし現場は常に泥臭く、不純物だらけだ」
これがマーケターとして四半世紀を歩んできた私の、偽らざる実感です。
なぜ、今「実践知」なのか
広告代理店から事業会社まで10の組織を渡り歩いてきました。ホテルのマーケティング責任者として価格競争の泥沼に立ったこともあれば、予算もチームもない状態で新規事業を任されたこともある。
そこで蓄積されたのは、成功法則よりも何倍も多い「失敗プロンプト」のデータベースです。どれほど優れたフレームワークも、現場に持ち込む際には必ず「翻訳」が必要になる。
この「理論」と「実装」の間の溝を埋める知恵を、私は『実践知』と呼んでいます。
この連載で書きたいこと
「あの有名な本や理論」を私が実際の修羅場でどう使い倒したのか。そのプロセスを剥き出しのまま記録していきます。
理論のどこを信じ、どこを疑ったのか。現場の拒絶反応とどう向き合ったのか。結果、何が変わり何が変わらなかったのか。
ビジネス本の綺麗な要約はAIや書評サイトで手に入る時代。
ならば逆張りして、25年の「一次情報」をあなたに利用していただくのが連載の本質です。
知識を「溶かす」時間は、私たちにはない
私たちは博識になるために本を読んでいるわけではありません。停滞を打破し、数字を動かすための「道具」を手に入れるために読んでいるはずです。
「正論」を、明日の会議で「即座に使える道具」へ。
今まさに現場で孤独に戦っているあなたへ。
私の25年分の試行錯誤を、遠慮なく使い倒してください。
2026/05/12 火曜 より、それぞれの修羅場を記録していきます。
▼第1回
ジョブ理論:数字で殴られても譲れなかった、顧客の物語
→ 得た型:「便益」ではなく「代替行動」で顧客を理解する4ステップ
▼第2回
未"顧客理解:顧客の"脳内シェア"という見えない戦場
→ 得た型:離反顧客ではなく"未"顧客を狙う、脳内シェア拡大の設計法
▼第3回
ファシリテーション超技術:「無法地帯」と化した60分の正体
→ 得た型:抱え込まずに決める、合意形成の型
▼第4回
なぜ人と組織は変われないのか:断れない優しさは、罠なのか
→得た型:「裏の目標」を可視化する、免疫マップという自己変革の技術
▼第5回
任せるコツ:「自分でやった方が早い」というバグ
→得た型:「自分でやった方が早い」を手放す、委譲のアルゴリズム化
▼第6回
パーセプション:「300円」が教えてくれた市場の本音
→ 得た型:数字ではなく「認識」を動かす、市場変革の順序
▼第7回
マーケティングの技法:「資源の翻訳者」という誰も知らない仕事
→ 得た型:正しい戦略を通すための、「資源の翻訳」という処世術
▼第8回
顧客起点マーケティング:「知ってる」の一言に、心が折れた
→ 得た型:「知ってる」を疑う、DIYリサーチによる仮説の解像度向上
▼第9回
新エバンジェリスト養成講座:気づけば「完璧な独演会」を演じていた
→ 得た型:反応に依存しない、自己完結型のプレゼン設計システム
▼第10回
1分間エンパワーメント:頼られるほど自分がボトルネックになっていた
→ 得た型:肩書きがなくても、対話で境界線を握る組織運営術