【栗山和暉】会議室の窓が教えてくれた仕事
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ある日の午後、クライアントとの打ち合わせを終えて、ふと会議室の窓の外を見た。雨上がりの光が差し込み、建物の影と水たまりが複雑に入り混じっていた。その景色は一見、ただの偶然の模様のように見えるが、よく観察すると光の当たり方や水面の角度で微妙に変化していることに気づいた。
その瞬間、仕事やデザインに対する考え方が重なった。Webサイトやサービス設計も同じで、ユーザーに見える部分はほんの一部で、背後には無数の要素や調整が潜んでいる。見えない部分の工夫や、微細な改善が全体の体験を大きく変える。窓の光の揺らぎを見ていると、それがまるで設計の神経回路のように感じられた。
僕はディレクター兼デザイナーとして、クライアントの課題を解決するプロジェクトに取り組むとき、つい目に見える成果や数字に集中しがちだ。しかし、今回の光景を見て、ユーザー体験を支える小さな工夫や、想定外の行動への対応こそが本当に価値を生むと再認識した。たとえば、ボタンの配置一つで直感的な操作が変わることや、情報の整理の仕方で迷いが減ることも、まさに光と影の微妙な差のようなものだ。
帰り道、僕はこの気づきをプロジェクトノートに書き留めた。数値化できない部分、見えない要素をどう設計に取り入れるか。偶然の美しさや微細な変化をヒントに、ユーザーが自然に感じる快適さを作ること。それが僕の仕事の本質だと思う。
オフィスに戻ってから、クライアントに提案資料をまとめながら、会議室の窓の光を思い出す。その偶然の景色が、僕に「見えない部分を大切にする設計の重要性」を教えてくれた。目に見える成果だけでなく、目に見えない工夫こそが長く愛されるプロダクトを作るのだと、あらためて確信した日だった。