【高橋正次・髙橋正次】「あみだくじ」で進路を決める勇気はあるか
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人生の大きな決断を迫られたとき、私たちはつい、論理的な正解を探して何日も悩み続けてしまいます。どの会社が安定しているか、どの職種が将来有望か。そうやって選択肢を並べ、メリットとデメリットを天秤にかける作業は、一見すると非常に知的な行為に思えます。しかし、私はこれまで数多くの経営者や開拓者たちに取材を重ねてくる中で、ある奇妙な共通点に気づきました。それは、彼らが人生の極めて重要な局面で、驚くほど「直感的」で、時には投げやりとも思えるような軽やかな決断を下しているという事実です。
私は編集者として、複雑な情報を整理し、読者に納得感を与える物語を構築してきました。しかし、どんなに緻密に構成を練っても、最後の最後で作品に命を吹き込むのは、理屈を超えた衝動だったりします。実は、仕事選びやキャリア形成も、これと全く同じなのではないでしょうか。完璧なデータに基づいて選んだ道よりも、ふと目に入った風景や、誰かと交わした何気ない一言で決めた道の方が、なぜか後になって振り返ると一本の美しい物語として繋がっていることが多いのです。
あみだくじのように、どこに辿り着くかわからない不確実な線に身を任せてみる。それは決して無責任なことではありません。むしろ、自分の思考という狭い箱の中に閉じこもらず、世界が提示する偶然を面白がる姿勢、つまり「人生の編集権」を一度手放してみるという高度な戦略なのです。
多くの企業が求める「主体性」という言葉。それは単に自分の意見を押し通すことではなく、どんなに予期せぬ場所へ辿り着いたとしても、そこにある素材を使って最高の物語を編み直せる力のことを指すと私は考えています。
もしあなたが今、キャリアの分岐点で足がすくんでいるのなら、一度あえて頭で考えるのをやめてみてください。コインを投げて決めるような軽やかさで、今の自分が一番ワクワクする方向へ一歩を踏み出す。選んだ後に、その選択を正解にしていくのが、私たちの本当の仕事です。
私たちの毎日は、未完成の原稿のようなものです。どの章をどう書き換えるかは自由ですが、ペンを止めていては物語は進みません。理屈の檻を飛び出し、偶然という名のスパイスを楽しみながら、あなたにしか描けない破天荒なストーリーを紡ぎ始めてみませんか。その一歩が、想像もしなかった素晴らしい結末へとあなたを連れて行ってくれるはずです。