「嫌われたくない」本音が言えなかった私が、対話ツール『セキララカード』を作るまで
はじめまして。株式会社セキララカード代表の藤原紗耶です。
今日は、私がなぜ「セキララカード」というコミュニケーションツールを作り、起業したのか。その創業の原点についてお話しさせてください。
今でこそ「対話の専門家」として活動していますが、かつての私は、誰よりも「対話」ができず、人間関係に悩んでいた一人でした。
◆ 「嫌われたくない」から始まった、こじらせた過去
正直に告白すると、私はずっと恋愛や人間関係で自分を傷つけ続けてきました。
10代から20代前半の頃、私の中にあったのは「嫌われたくない」という強烈な思い。 「重いと思われたくない」から、将来の話や真面目な話を避けたり、相手の顔色をうかがって自分の意見を飲み込んだりしていました。
もっと深刻だったのは、「女性は受け身であるべき」という無意識の思い込み(ジェンダーバイアス)です。 デートで食事をご馳走になったら、その対価として何かを返さなければいけないような気がしてしまう。したくないことでも「嫌」と言えずに受け入れてしまう。
「自分の本音を隠して、相手の理想を演じる」
そんなことを繰り返していたので、当然、心はいつも苦しくて、結局関係もうまくいきませんでした。友人に相談しても「もっと話し合ったほうがいいよ」と言われるばかり。頭ではわかっていても、「その話し方がわからないから苦しんでいるのに」と、八方塞がりな気持ちでした。
◆ 私を変えた、アメリカでの「ジェンダー論」と「カードゲーム」
転機が訪れたのは、アメリカ留学中でした。
大学の授業で「ジェンダー論」を学び、私が抱えていた「言いたいことが言えない苦しさ」は、私個人の性格のせいだけではなく、社会的な構造や「女性はこうあるべき」という刷り込みによるものだと気づいたのです。
「私は私のままで、対等な関係を築いていいんだ」
そう気づいた時、肩の荷が降りた気がしました。
そしてもう一つの出会いが、友人にもらった欧米の「コミュニケーションカードゲーム」です。 試しに使ってみると、「カードに書かれた質問に答える」というゲームの形式を借りるだけで、普段なら恥ずかしくて言えないことや、聞きづらい価値観の話がスルスルとできたのです。
「これだ!」と思いました。 真面目に「話し合おう」と言うとハードルが高いけれど、「ゲーム」というツールがあれば、私たちはもっと素直になれる。
日本で同じようなツールを探しましたが、私の求めているものは見つかりませんでした。 「ないなら、自分で作るしかない」。そう決意したのが、株式会社セキララカードの始まりです。
◆ 「関係性を築くこと」は才能ではなく、スキルである
開発にあたっては、自分の過去の「失敗体験」をすべて詰め込みました。 「あの時、これを聞いておけばよかった」「この話をしていれば別れなかったかもしれない」。そんなリアルな痛みを「問い」に変え、ジェンダーの専門家の監修も入れて、誰もが安心して使えるカードを目指しました。
私がこの事業を通じて伝えたいメッセージはシンプルです。
「関係性を築くことはスキルであり、努力で変えられる」
身体の健康のためにジムに通ったり食事に気をつかったりするように、人間関係も「メンテナンス」が必要です。 「私たちは合わなかった」と諦める前に、対話のツールを使うことで、関係はもっと「ヘルシー」なものに変えていける。私はそう信じています。
◆ 「対話できること=かっこいい」社会へ
創業から時間が経ち、今ではカップルだけでなく、友人同士や家族、そして自分自身と向き合うためのカードも展開しています。
私たちのミッションは「ヘルシーな関係を、自分のために」。 誰かのために我慢するのではなく、自分の人生を幸せにするために、大切な人と向き合う。そんな文化を日本に根付かせたいと思っています。
かつての私のように「言いたいことが言えない」と悩んでいる人が、カードを一枚めくることで、その壁を乗り越えられるように。 これからも、対話のきっかけを作り続けていきます。