こんにちは!柿原格です。
陶芸家の工房を訪れて土を捏ねる作業を見つめていると、ものづくりの根底にある奥深い営みに心を動かされます。最初は形も定まらない柔らかい粘土の塊ですが、指先の加減や力を入れる角度によって、滑らかな曲線を描きながら少しずつ器の姿へと変わっていきます。焦って強い力を加えすぎれば歪んでしまい、逆に優しすぎる力では思うような形になりません。粘土の硬さや状態に寄り添い、適度な力をかけ続けることで初めて理想の形が生まれます。
私たちが取り組んでいるマーケティングという仕事も、この粘土から器をつくり出すプロセスにとてもよく似ています。世の中には素晴らしい技術や熱い想いという素材がたくさん存在していますが、ただ放置しているだけでは誰の役にも立つ器にはなりません。どのような用途で使われ、どのように手になじむのかを丁寧に思い描きながら、素材の良さを引き出すかたちへと整えていく作業が求められます。細かな調整を繰り返す根気強さが大切になります。
ここで大切になるのは、つく手の都合やこだわりだけを押しつけるのではなく、その器を使う人がどのような暮らしの中で手に取り、どんな心地よさのを求めるのかを想像することです。毎日の食卓で静かに馴染むものを求めているのか、空間のアクセントとなる特別な存在感を求めているのかによって、目指すべき形や手触りは大きく変化します。使う人の日常にすっと溶け込むデザインを見極める姿勢が欠かせません。
支援する側として出来上がりの全体像や完成度を冷静に見極める視点と、事業の内側に潜り込んで泥臭く手を動かし、粘土の感触を確かめながら形をつくる視点。この双方の目線を行き来してきたからこそ、頭の中の設計図だけでなく、現場の手触り感を大切にする重要性を知りました。冷静な計算と、素材への情熱が重なり合ったとき、はじめて人の心に長く残る存在が形作られます。どちらの視点も欠かすことができません。
仕事の本質とは、単なる数値の処理や表面的な飾り付けではありません。人々の想いや技術という素材を丁寧に捏ね上げ、日常を豊かに彩る価値ある形へと育て上げていく作業です。普段何気なく使っているものや目に触れるサービスの中にも、誰かが試行錯誤して形づくったこだわりが隠れています。次に素敵な出会いがあったときは、その裏側にある目に見えない手触りや作りの工夫に思いを馳せてみてください。いつもの毎日が少しだけ味わい深く感じられるはずです。