設備投資はいくらまでなら大丈夫?投資前に確認したい「回収期間」と資金繰り
こんにちは。
札幌で税理士をしております、河口倫範です。
前回は、会社に現金が貯まってきたとき、
設備投資。
人材への投資。
借入金の返済。
会社への内部留保。
など、いくつかのお金の使い方があるというお話をしました。
今回は、その中でも特に大きな金額になりやすい設備投資について考えてみたいと思います。
経営者の方から、
「この設備を買っても大丈夫でしょうか?」
「今期は利益が出そうなので、機械を入れ替えようと思っています。」
といったご相談をいただくことがあります。
設備投資は、会社の成長につながる大切な投資です。
一方で、金額が大きいだけに、判断を誤るとその後の資金繰りに長く影響することもあります。
だからこそ、
「買えるかどうか」ではなく、「買ったあと会社がどうなるか」
まで考えることが大切です。
通帳にお金があるから買える、とは限らない
例えば会社の預金が3,000万円あり、1,000万円の設備を購入するとします。
単純に考えれば、
「現金があるから購入できる。」
となります。
しかし、その3,000万円の中には、
数か月後の納税資金。
賞与。
仕入代金。
借入返済。
運転資金。
などが含まれているかもしれません。
1,000万円を支払ったあとも、会社が通常どおり運営できるか。
まず確認したいのはここです。
設備を購入する前の預金残高より、購入した後の預金残高を見る。
この視点を持つだけでも、判断は変わってきます。
設備投資は「いくら儲かるか」を考える
設備を購入するとき、
「最新の設備だから。」
「古くなってきたから。」
という理由だけでなく、その設備が会社にどのような効果をもたらすのかを考えてみます。
例えば、
生産量が増える。
作業時間が短くなる。
外注費が減る。
人手不足を補える。
不良品が減る。
新しい仕事を受注できる。
修理費が減る。
などです。
設備そのものが利益を生むとは限りません。
重要なのは、
その設備によって売上が増えるのか、費用が減るのか、あるいは生産性が上がるのか
ということです。
「何年で回収できるか」を考えてみる
設備投資を判断するときに、一つの考え方になるのが「回収期間」です。
例えば、1,000万円の設備を導入することで、年間200万円程度の利益改善が見込めるとします。
単純化して考えれば、
1,000万円 ÷ 200万円 = 5年
となります。
つまり、
「この投資を回収するのに、おおよそ何年かかるのか。」
という視点です。
もちろん実際には、税金、減価償却、維持費、金利、売上変動などさまざまな要素があります。
それでも最初の判断として、
「この設備は何年くらいで投資額を回収できそうか。」
を考えることには意味があります。
売上ではなく「増える利益」で考える
ここで注意したいことがあります。
例えば、
「この設備を導入すれば年間1,000万円売上が増えます。」
という話があったとします。
1,000万円の設備なら、
「一年で回収できる。」
と思ってしまうかもしれません。
しかし、新しい売上をつくるためには、
材料費。
仕入。
外注費。
人件費。
電気代。
配送費。
などが増える可能性があります。
そのため、
増える売上ではなく、その売上から最終的にどのくらい利益が増えるのか
を見ることが重要です。
設備を買った後の費用も確認する
設備投資では、購入価格だけを見てしまいがちです。
しかし、導入後にも費用がかかることがあります。
例えば、
保守契約。
修理費。
電気代。
消耗品。
システム利用料。
保険。
定期点検。
などです。
また、新しい設備を動かすために社員を採用する必要がある場合もあります。
そのため、
「設備価格1,000万円。」
だけではなく、
導入後に毎年どのくらい費用が発生するのか
も確認しておきたいところです。
「今の設備を使い続けるコスト」と比較する
新しい設備を買うかどうか迷ったときには、
「買った場合」だけでなく、
「買わなかった場合」
も考えてみます。
例えば古い設備を使い続けることで、
修理費が増えている。
作業時間がかかっている。
故障による停止が増えている。
電気代が高い。
受注できない仕事がある。
といった問題があるかもしれません。
新しい設備には大きなお金がかかります。
しかし、古い設備を使い続けることにもコストがあります。
両方を比べて判断することが大切です。
現金で買うか、借入を使うか
設備投資では、
「現金があるので一括で払います。」
という経営者の方もいらっしゃいます。
もちろん、それも一つの方法です。
ただし、設備代金を現金で支払った結果、会社の手元資金が大きく減る場合には注意が必要です。
例えば、
設備投資1,500万円。
会社の預金2,000万円。
という状態で全額現金払いをすると、残る預金は大きく減ります。
その直後に売上が減ったり、大きな支払いが発生したりすると、資金繰りが苦しくなるかもしれません。
そのため、
現金があるからこそ、あえて借入を利用して手元資金を残す
という考え方もあります。
どちらが適切かは、会社の資金状況や借入状況、投資内容によって変わります。
借入返済と投資効果のバランスを見る
設備資金を借入で調達する場合には、毎月の返済が始まります。
そこで確認したいのが、
設備によって増える利益や現金と、毎月の返済とのバランスです。
設備を導入した結果、利益は増えた。
しかし返済額が大きく、預金は減っている。
ということもあり得ます。
だからこそ、
設備導入後の損益だけでなく、資金繰りも一緒にシミュレーションする
ことが大切です。
売上予測は少し慎重に考える
設備投資の計画では、
「この機械を導入すれば売上が増える。」
という前提を置くことがあります。
ただ、予定どおり受注できるとは限りません。
そこで、
予定どおり売上が増えた場合。
予定の7割程度だった場合。
売上がほとんど増えなかった場合。
など、いくつかのケースを考えてみます。
特に大きな投資では、
少し悪いケースでも会社が耐えられるか
を確認しておくことが重要です。
「投資したから売らなければ」という状態に注意する
高額な設備を購入すると、その設備を稼働させるために仕事を取らなければならなくなります。
すると、
利益率の低い仕事でも受ける。
価格を下げて受注する。
無理な納期でも対応する。
ということが起こる場合があります。
本来は会社を強くするための設備投資だったのに、その設備の支払いのために経営の自由度が下がってしまう。
こうした状態は避けたいところです。
設備投資は、
会社の選択肢を増やすためのものなのか、それとも会社をその設備に縛りつけるものなのか
という視点でも考えてみたいところです。
税金だけで設備投資を決めない
「今年は利益が出るから設備を買おう。」
という考え方についても、一度立ち止まって考えてみてください。
必要な設備を予定より少し早く導入することが合理的な場合はあります。
しかし、
「税金を払うくらいなら何か買おう。」
という理由だけで投資を決めるのはおすすめできません。
会社にとって本当に必要な設備なのか。
その設備から将来どのような利益が生まれるのか。
購入後も十分な現金が残るのか。
こちらの方が重要です。
税金を減らすための投資ではなく、会社を良くするための投資
になっているかを確認したいところです。
投資後の結果を確認する
設備を購入したら、それで終わりではありません。
半年後、一年後に、
売上は増えたのか。
利益は増えたのか。
作業時間は減ったのか。
外注費は減ったのか。
想定していなかった費用はなかったか。
を確認します。
投資前に立てた計画と、実際の結果を比較します。
もし予想と違っていたら、
「なぜ違ったのか。」
を考えます。
これを続けることで、次の設備投資の判断精度も上がっていきます。
「買える金額」と「投資してよい金額」は違う
会社に現金が5,000万円あるからといって、5,000万円の設備を買ってよいとは限りません。
銀行から5,000万円借りられるからといって、5,000万円投資してよいとも限りません。
大切なのは、
会社が支払える金額ではなく、会社が無理なく回収できる金額
を考えることです。
そのためには、
投資額。
期待できる利益。
回収期間。
毎月の返済。
投資後の預金残高。
売上が計画を下回った場合の資金繰り。
これらを一緒に見ます。
設備投資は「未来の利益を買う」経営判断
設備投資には大きなお金が必要です。
そのため、
「お金が減る。」
という面だけを見ると、不安になるかもしれません。
しかし、良い設備投資は、
生産性を上げる。
社員の負担を減らす。
新しい仕事を生み出す。
利益率を改善する。
会社の競争力を高める。
といった未来につながります。
だからこそ設備投資は、単なる支出ではありません。
将来の利益や会社の成長をつくるために、今のお金を使う経営判断
だと考えることができます。
重要なのは、
「この設備はいくらですか?」
だけではなく、
「この設備に使ったお金は、どうやって会社に戻ってくるのか?」
まで考えることです。
設備投資を検討するときには、
購入価格だけを見るのではなく、
投資後の利益。
投資後の預金残高。
借入返済。
回収期間。
そして少し悪いケースまで数字にしてみる。
そうすることで、
「何となく買う。」
「何となく怖いから買わない。」
ではなく、
数字を根拠に投資を判断できるようになります。
税理士として、設備を購入した後の会計処理や税金を見るだけではなく、
「この投資をしても資金繰りは大丈夫か。」
「何年程度で回収できそうか。」
「投資後も会社に十分な現金が残るか。」
というところまで、経営者の方と一緒に考えていきたいと思っています。