離任式でラップ、廊下に神社。元教員の私が「場」をアレンジし続けた理由(「場」をアレンジする力)
Photo by Kane Reinholdtsen on Unsplash
離任式でラップ、廊下に神社。元教員の私が「場」をアレンジし続けた理由(「場」をアレンジする力)
「あーる先生(仮名)が自分らしく輝いている姿を見るのが、結局みんな大好きなんですよ」
お世話になっているコーチにそう言われたとき、私の脳裏に真っ先に浮かんだ光景があります。それは、400人以上の生徒と教職員を前に、スーツ姿の私がマイクを握り、爆音のビートに乗せて自作のラップを披露した「あの離任式」のステージです。
「正解」を教えるのが仕事だった教員時代。
私が本当にやりたかったのは、単なる知識の伝達ではなく、「自分らしく表現していいんだ」と背中で見せ、毎年ありきたりだった「場」の空気をアレンジすることでした。
【ストーリー1:離任式をライブ会場に変えた「勇気」】
卒業式を終えた私の手元に届いたのは、55枚のメッセージカード。
そこには「先生の国語の授業が一番面白かった」「また先生のラップが聴きたい!」という卒業生からの言葉が溢れていました。
国語の漢詩の授業で「押韻」を教えるために始めたラップが、生徒たちの心に深く刻まれていたのです。
離任式という厳かな場。
普通に挨拶をして終わるのが「正解」かもしれません。
でも、私は思いました。「1・2年生向けの式で、関わりの少なかった3年生担当の私が長話をすることほど無駄な時間はない。今こそエンタメの力が必要だ」と。
学年主任(直属の上司)の「やったらええやん、最後なんだから」という一押し。
さらに同僚の協力や、他の登壇する先生方の応援もあって、私は3日間で7年分の想いをリリック(歌詞)に込めました。
当日。体育館のスピーカーから爆音で流れる16ビート。ざわつく会場。
「3・2・1 Listen…」
震える手でマイクを握り、無我夢中でコール&レスポンスを求めたとき、体育館は学校ではなく「ライブ会場」になりました。
拍手は鳴り止まず、司会の教頭先生が「ライブ会場のようでしたね」と漏らしたあの瞬間、私は確信しました。
「場」は、アイデア一つで新しく書き換えられるのだと。
そして、その私の「ポジティブな逸脱」は、たくさんの会場の人々(現役の生徒・見に来てくれた卒業生・保護者の方々・そして先生方)に「勇気」を見せることができたのです。
【ストーリー2:廊下に神社?日常の景色に「安心」をチョイ足しする】
「このままだと、教室から誰もいなくなってしまう……」
初の進路指導主任として迎えた年、受験シーズンの冬の朝。
欠席連絡の嵐で空席だらけの教室を見て、私は危機感を抱きました。
受験のプレッシャーで沈み込んだ3年生のフロア。そこは単なる「通過点」になり、学校本来の活気が失われていたのです。
「勉強しろとは言えない。でも、学校に来れば大丈夫だと思える空間は作れるはず」
そう思い立った放課後18時。
私は100円ショップと職員室を駆け回り、一夜にして廊下に「神社」を建設しました。
観葉植物を吊るす紐を鈴の緒に見立て、A3用紙を拡大して鳥居を掲げる。翌朝、廊下に現れた非日常的な光景に、生徒たちは目を丸くしました。
私がこだわったのは、宮司として一人ひとりの願いを聞き、その場で「お守り」に手書きのメッセージを添えること。
「自信を持って受験会場に行きたい!」
「新しい学校で友達ができますように…」
「好きな人と話せるようになりたい(笑)」
普段の授業では見せない、彼らの本当の願いが溢れ出しました。
5日間で、学年の3分の2を超える100人以上が参拝。
受験票と一緒にボロボロになるまでお守りを持ち歩いてくれた生徒の姿を見たとき、確信しました。
「場」をアレンジするとは、単に飾り付けることではない。そこにいる人の心に寄り添い、新しい「意味」を付け加えることなのだと。
そして、生徒だけではなく先生方も「お守りの折り方を教えてほしい」「うちのクラスの〇〇さんを、先生の元へ行かせるね」など、私の「ポジティブな逸脱」に「安心」して協力してくれるようになったのです。
【なぜ今、私は「場をアレンジする仕事」をしたいのか】
ラップで体育館をライブ会場に変えたときも、廊下を神社の参道に変えたときも、共通していたのは「既存の枠組みを疑い、ポジティブな逸脱を楽しむ」という姿勢でした。
私の「場をアレンジし、人の可能性を引き出す力」は、今の活動の核となっています。
- 誰かの人生を一緒に編集する「作戦会議」
- noteという発信媒体で可能性を発揮する人を支える「noteらぼ」
そして今、私はこの力をより広い社会で試したいと考えています。
「ポジティブな逸脱が、誰かの力になる」 そんな世界を、このストーリーをご覧になった皆さんと一緒に作っていけることを楽しみにしています。