観察メモ 01:「少し居てみる」が自然にできる場所ーー狛江湯3周年イベント「Do 湯?」観察メモ
今年のゴールデンウィーク、都内のリノベーション銭湯で開催された周年イベントに足を運んでみました。
音楽ライブ、飲食、ZINEや植物の小さな出店など、いわゆる「銭湯イベント」という言葉から想像していた以上に、空間全体がひとつの小さなコミュニティのように機能していて、とても印象に残りました。
実際、イベント当日はかなり人が多く、Googleマップ上の混雑表示を見ても、14〜19時頃にかけて特に人の流れが集中していたようでした。
(移動中などに確認したものを簡単にまとめた図です。)
イベント終了後もしばらく混雑表示が続いており、地域イベントとしてかなり定着していることがうかがえました。
特に興味深かったのは、「お風呂」を目的に集まった場所でありながら、実際には「ゆるやかなコミュニケーション」そのものが空間の価値になっていたことです。
今回は、参加者として楽しみながらも、自分が気になった「人の流れ」や「イベントの中心」、そして「その場の空気」について、個人的な観察メモに近い内容ですが、面白かったので残しておきます。
目次
01 人が自然と立ち止まっていた場所
02 人は、少しずつ場所を移動していた
03 イベントの合間に、自然とお風呂へ向かう人たち
04 夕方になると、匂いのまわりに人が集まり始めた
05「買う」より、「ちょっと関わる」が中心にあった
01 人が自然と立ち止まっていた場所
イベントの中で最も人が集まっていたのは、トークショー・音楽ライブが行われていたスペースでした(下の図では★印の場所。傘と椅子が置かれていたエリアです)。
場外から見た雰囲気はこんな感じ。壁越しでも、中の賑わいがなんとなく伝わってきました。
もちろん演奏そのものも魅力だったのですが、観察していて面白かったのは、この場所がイベント内でほぼ唯一「立ち止まれる場所」として機能していたということでした。
音響が集中していることに加えて、
・ 数少ない椅子や、腰掛けられる段差がある
・ 銭湯内部(フロント)とシームレスに繋がっている
など、「少し長く居てもいい」と感じられる条件が揃っていました。
後方から見たライブスペース。
小さな椅子やテーブルがあるだけで、人が自然と集まりやすい場所になっていました。
前列では15〜20人ほどが集中して演奏を聴いていた一方、後方では友人同士で会話をしながら、半分BGMのようにライブを楽しんでいる人も少なくありませんでした。
聴き方も過ごし方も、人によってかなり自由だったのが印象的でした。
02 人は、少しずつ場所を移動していた
会場全体を見ていて感じたのは、多くの人が一箇所に長く留まるというより、
・少しだけ歩く
・気になる出店を見る
・飲み物や軽食を買う
・また別の場所へ移動する
というように、会場の中をゆっくり行き来しながら過ごしていたことでした。
入口付近の様子。飲食系の出店が集まっていて、人の流れも比較的活発でした。
奥に行くにつれて、本や植物、ハンドメイド雑貨、似顔絵や射的など、少しずつ空気の違う出店が並んでいました。
自分が特に印象に残ったのは、サボテンの小さな出店と本屋のスペースです。
イベント全体の中では比較的人が少なく、かなり静かな場所だったのですが、その分、何かを「買う」よりも、「見ること」そのものをゆっくり楽しめる空気がありました。
実際、長時間滞在している人は多くなかったものの、短い時間でも自然と足を止めたくなるような場所になっていたのが印象的でした。
サボテンの出店。賑やかな会場の中で、少しだけ空気がゆっくり流れているような場所でした。
なぜかずっと気になってしまったぬいぐるみたち。
03 イベントの合間に、自然とお風呂へ向かう人たち
会場内には、ゆっくり休憩できる場所があまり多くありませんでした。
ライブスペース前の限られた席以外では、長時間落ち着いて過ごせる場所はほとんどありません。
だからこそ逆に、「イベントの前後にお風呂に入る」という流れが、とても自然に成立しているように見えました。
単に「銭湯でイベントをやっている」というより、
・イベントを少し楽しむ
・人混みや音で少し疲れる
・お風呂で休む
・また外へ戻る
という動きが、ひとつの過ごし方として空間に組み込まれていたのが印象的でした。
さらに、銭湯内部ではアウフグースイベントやアロマロウリュも定期的に行われており、外のイベントとは別に、内部にも継続的な人の流れが生まれていました。
私が滞在していた15〜17時頃もかなり人気があり、帰る頃には整理番号待ちの列もできていたほどです。
外のライブや出店を楽しみながら、タイミングを見てお風呂やサウナへ入る――そんなふうに、外と内を行き来する過ごし方自体が、このイベントらしい過ごし方になっているように感じました。
04 夕方になると、匂いのまわりに人が集まり始めた
16時40分頃から、飲食ブースの周辺に温かい料理の匂いが少しずつ広がり始めました。
ちょうど限定メニュー用の鍋料理が準備され始めたタイミングだったと思います。
それまで比較的流動的だった人の流れが、少しずつ飲食スペース周辺で留まり始め、「買う」だけではなく、「なんとなく集まる場所」へ変化していた。
音楽や視覚だけではなく、料理の匂いもまた、人の動きや空気を自然に変えていくものなのだと感じました。
05「買う」より、「ちょっと関わる」が中心にあった
イベント全体を通して感じたのは、強い購買欲や目的消費というよりも、
・ちょっと話す
・ちょっと聴く
・ちょっと見る
・ちょっと休む
・ついでに何かを買う
というような、「軽い関わり方」が中心になっていたことでした。
実際には、限定の飲食や雑貨、洋服などの出店もあり、消費自体はしっかり存在していましたが、それが目的というよりは、空間に滞在する中で自然に発生しているように見えました。
参加者の年齢層もかなり幅広く、小さな子ども連れの家族やベビーカーを押している人、30代前後と思われるクリエイター層などが自然に混ざっていました。
特に印象的だったのは、「ひとりで来ても浮かない」空気が成立していたことです。
ライブハウスほど閉じておらず、ショッピングモールほど消費に寄ってもいない。
何かを強く求めなくても、とりあえず少し居てみることができる。
そんな距離感が、このイベント全体に流れていたように感じました。
一度きりの小さな観察ではありますが、「人が自然と留まりたくなる場所」は、こういう空気の積み重ねによって生まれるのかもしれません。