「秘境」と呼ばれた地域は、どうやって人を受け入れる導線をつくるべきか
土佐清水市の地域おこし協力隊募集から考えたこと
土佐清水市を最初に知ったきっかけは、自治体の公式サイトではありませんでした。
YouTubeの動画タイトルでした。
「日本最果ての秘境都市・高知県土佐清水市」
このタイトルを見た瞬間、私の第一印象はかなり正直でした。
東京から遠そう。
生活は不便そう。
では、普通の人はなぜそこへ行くのか。
もし地域おこし協力隊として人を募集するなら、この第一印象をどう受け止めるのか。
これは土佐清水市だけの問題ではないと思います。
日本の地方は、外部のメディアや動画の中で、よく「秘境」「最果て」「遠い町」「アクセスが大変な場所」として紹介されます。
このような表現は、動画のタイトルとしては強いです。
人の興味を引くし、「一度見てみたい」と思わせる力があります。
しかし、ここで一つ問題があります。
動画の流量を取るための言葉と、地域に人を呼び込むための言葉は、同じではありません。
動画に必要なのは、ある意味で「非日常感」です。
遠い。
珍しい。
普通の生活とは違う。
だからクリックされる。
一方で、地域おこし協力隊や地域プロジェクトの募集に必要なのは、「自分もそこに入っていけるかもしれない」という感覚です。
そこでは、見る人の疑問はかなり現実的になります。
何をする仕事なのか。
どこに住むのか。
移動手段はどうするのか。
生活は成り立つのか。
最初の一年はどう動けばいいのか。
三年後に何が残るのか。
外部の人は、自治体が見せたい順番で地域を理解するわけではありません。
まず検索します。
動画を見ます。
コメントを読みます。
掲示板や関連ワードも目に入ります。
その途中で「遠い」「不便そう」「秘境」という印象が先に固定されることがあります。
だからこそ、地域側の発信や募集ページには、その印象を否定するのではなく、受け止めて整理する役割があるはずです。
土佐清水市の地域おこし協力隊募集ページを見ると、タイトルはとても良いと思いました。
「“また来たい”をつくる、道の駅の仕掛人募集!」
道の駅は、単に商品を売る場所ではありません。
観光客がその地域に最初に触れる入口にもなるし、地元の商品、生産者、観光情報、地域の人との接点にもなります。
募集内容にも、道の駅の企画立案、イベント運営、SNSを活用した地場産品のPR、地域資源の掘り起こし、商品開発、周辺施設との連携、販売接客などが書かれていました。
これは、かなり可能性のある仕事だと思います。
単なる「地域の手伝い」ではなく、道の駅を中心に、地域の魅力を編集し、外に届け、来訪者との関係をつくる仕事です。
ただ、私が気になったのは、仕事の内容ではありません。
「なぜ自分がそこへ行けると思えるのか」という部分です。
特に外部の人、さらに外国人の視点から見ると、土佐清水市の第一印象は、必ずしも「海がきれい」「魚がおいしそう」だけではありません。
遠い。
交通が大変そう。
生活できるのか。
家族は連れて行けるのか。
任期後はどうなるのか。
こうした不安を先に処理しないと、せっかく動画や検索で関心を持った人も、応募の前で止まってしまう可能性があります。
私は、地域は「遠い」という印象を隠す必要はないと思います。
むしろ、正面から扱った方がいい。
たとえば募集ページの前半に、外部の人が最初に気にする質問を置くことができます。
土佐清水市はどのくらい遠いのか。
鉄道がない地域で、生活はどう成立するのか。
住まいはどうなるのか。
車は必要なのか。
最初の三ヶ月は何をするのか。
道の駅の仕事とSNS運用はどうつながるのか。
三年後にはどんな可能性があるのか。
これは弱点を見せることではありません。
むしろ、外から来る人に対して「ここまで考えています」と伝えることです。
もう一つ、私なら「90日間の入り方」を作ります。
最初の1ヶ月は、道の駅の商品、客層、地元の生産者、観光客の流れを知る。
2ヶ月目は、SNSの素材を整理し、小さな投稿や商品紹介を試す。
3ヶ月目は、小さなイベントや商品展示の企画を一つ実行する。
このように書くと、応募者は「地域に投げ込まれる」のではなく、「入っていく順番がある」と感じられます。
地域おこし協力隊の募集で大切なのは、夢を大きく語ることだけではありません。
むしろ、最初の一歩をどれだけ具体的に想像させられるかだと思います。
土佐清水市には、強い素材があります。
海。
道の駅。
地場産品。
観光資源。
そして「遠い場所」という記憶に残る特徴。
問題は、それをどう組み合わせるかです。
外部の動画が「秘境」として地域を見せること自体は、悪いことではありません。
ただ、その後に地域側が何も設計しなければ、「面白そうだけど、自分には関係ない場所」で終わってしまいます。
地域に必要なのは、きれいなPRだけではないと思います。
流量を、関心に変える。
関心を、不安の解消につなげる。
不安が消えた人に、参加の入口を見せる。
人口減少時代の地方にとって、本当に必要なのは、単に人を集めることではなく、外部の人が「自分も関われるかもしれない」と思える導線をつくることではないでしょうか。
土佐清水市の事例は、そのことを考える上で、とてもわかりやすい入口だと思いました。