北海道・壮瞥町の公式YouTubeチャンネルを見た。
最近の動画には、約10分間の「コミュニティタクシー利用案内」があり、その周辺には、りんご畑や昭和新山、洞爺湖、キャンプ場で行うラジオ体操の動画が並んでいる。

一つひとつの動画には、作る理由がある。
コミュニティタクシーについては、利用対象、運行時間、予約方法、行き先を町民に説明する必要がある。
ラジオ体操にも、健康づくり、住民参加、地域活動の記録という役割があるだろう。
しかし、初めてチャンネルを訪れた外部の人間として、最初に感じたのは興味よりも迷いだった。
このチャンネルは、誰のためのものなのか。
「必要な人」と「興味を持ってほしい人」は違う
コミュニティタクシーの動画を見る人は、すでに明確な目的を持っている。
知りたいのは主に次の情報だ。
誰が利用できるのか。
どこへ行けるのか。
何時に運行するのか。
料金はいくらか。
どう予約するのか。
現在の動画は、地図や運行時間を使い、かなり丁寧に説明している。
ただし、約10分の動画に情報が連続して入るため、利用者は自分に必要な部分を探さなければならない。
内容が不足しているのではない。むしろ、必要な情報へ短時間で到達できる設計になっていない。


一方、ラジオ体操の動画は別の課題を抱えている。
りんご畑、雪景色、洞爺湖、昭和新山、キャンプ場。
壮瞥町には、映像にしたくなる場所が多い。
しかし、動画の中心は最初から最後までラジオ体操であり、風景は背景として使われている。
住民向けの健康企画や活動記録として考えれば、これ自体は間違いではない。
ただ、町外の人にも魅力を伝えたいのであれば、視聴後に疑問が残る。
りんご狩りはいつできるのか。
キャンプ場はどう予約するのか。
冬にも利用できるのか。
昭和新山周辺では何が体験できるのか。
美しい場所を映していても、次の行動につながる情報がなければ、観光コンテンツにはなりにくい。


問題は、動画の技術ではなく「役割の混在」
壮瞥町の動画が単純に「下手」なのではない。
問題は、異なる目的のコンテンツが、同じ入口で整理されずに並んでいることだ。
- 町民が必要な情報を調べる動画
- 健康活動や地域行事を記録する動画
- 観光客や移住希望者に興味を持ってもらう動画
この三つでは、視聴者も、構成も、適切な長さも違う。
すでに必要性を感じている人には、答えへ早く到達できる設計が必要だ。
まだ壮瞥町に関心を持っていない人には、最初の数秒で「続きを見たい」と思わせる入口が必要になる。
「調べるための動画」と「興味を持ってもらう動画」を同じ作り方にすると、どちらにも十分に届かない。
今後、さらに情報が増える可能性がある
壮瞥町は現在、ツーリズム、アウトドア、農業、ワイナリーなどに関わる地域おこし協力隊を募集している。
公開されている募集内容には、宿泊施設の情報発信、集客、アウトドア事業の企画、ワインの商品開発、産地ブランディング、ワインツーリズムなどが含まれている。
つまり今後は、紹介すべき人、場所、商品、体験がさらに増える。
そのたびに動画を同じチャンネルへ追加していけば、制作物は増えても、外部の人にとっては理解しにくくなるかもしれない。
必要なのは、新しいカメラや大きな制作予算よりも、まず情報の入口を整理することだと思う。
予算を増やさず、先に変えられる3つのこと
一つ目は、チャンネル内の分類を明確にすること。
たとえば、動画タイトルの冒頭に対象を表示する。
- 【町民向け】交通・制度・生活情報
- 【観光】景色・体験・季節情報
- 【移住】仕事・住まい・暮らし
- 【地域記録】行事・住民活動
新しいチャンネルを複数作らなくても、タイトルと再生リストを整理するだけで、視聴者は自分に必要な情報を探しやすくなる。
二つ目は、コミュニティタクシー動画を「1本+3本」に分けること。
詳しい説明動画は残す。
そのうえで、
- 誰が使えるのか
- どう予約するのか
- どこへ、何時に行けるのか
を、それぞれ30秒から60秒程度の短い動画にする。
短い動画は入口、詳細ページや長い動画は確認用と役割を分ければよい。
三つ目は、既存素材を二次利用すること。
ラジオ体操の完全版は、地域活動の記録として残す。
同じ撮影素材から、別に30秒程度の短い動画を作る。
たとえば、
10月の壮瞥町で、りんごを楽しむ
冬の仲洞爺キャンプ場で過ごす
昭和新山周辺を半日で巡る
といった内容だ。
最初の3秒で場所と魅力を示し、その後に季節、体験、アクセス、予約先を加える。
新たに撮影しなくても、編集の目的を変えるだけで、同じ素材が別の価値を持つ。

地方の動画に必要なのは、必ずしも「バズ」ではない
小さな自治体が、すべての動画で大きな再生数を狙う必要はない。
生活情報は、必要な住民に届けば役割を果たす。
活動記録も、地域の人にとって価値がある。
観光動画も、数千人に広く届くより、実際に訪れる可能性のある人へ届くほうが重要かもしれない。
ただし、公開する前に三つだけ決める必要がある。
誰に見てほしいのか。
何を伝えるのか。
見た後、どこへ動いてほしいのか。
地方に足りないのは、撮影技術や予算だけではない。
すでにある素材を、目的に合わせてもう一度編集する視点。
それだけでも、自治体のYouTubeは「動画の保管場所」から「人を動かす入口」へ変えられる。
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