【13問目】AI議事録、利用率18%の衝撃。「使わせる」ことにとらわれない、Lv5の壁と成功事例(人)を見る視点
ビジネス脳トレはついに、これまでの「ケース面接」を飛び出し、「実務シミュレーション」という未知の領域へと足を踏み入れました。
テーマは「導入済みのAI議事録ツールが全く使われておらず、あと3か月で契約解除の危機」という、カスタマーサクセス(CS)の実務で最も胃が痛くなるリアルな修羅場です。
今回は「何を作るか」「どうAIを活用するか」という提案ではなく、「なぜ使われないのか」の根本原因を見抜き、現実の制約(追加予算300万円、残された期間3か月)の中でベストな落とし所を探るという、極めて高度な思考が求められました。
【お題:年間1,500万円のAI議事録ツール、利用率わずか18%】
従業員約500名の製造業。半年前、社長の「AIで生産性向上!」の一声で年間1,500万円のAI議事録ツールを導入。しかし半年後の利用率はわずか18%。更新まであと3か月となり、社長は「使われないなら解約する」と激怒。
- 営業部(利用率8%):「修正が多くて結局自分で書く」
- 開発部(利用率5%):「機密情報があるからAIに入れたくない」
- 人事部(利用率65%)・総務部(利用率72%):若手を中心に高利用率
- 制約:追加予算300万円まで。新規AI製品の購入は禁止。今ある製品を活かすこと。
第1ステップ:前提を疑う。「そもそも1,500万円の価値とは?」「利用率の定義とは?」
このお題に対し、これまでの私なら「どうやって営業部や開発部に使わせるか?」という“利用率向上施策”に即飛びついていたはずです。しかし、Lv5を見据えた今の私は違います。
まず、お題が突きつけてくる前提そのものに強烈な疑問(ツッコミ)を投げかけました。
- 費用対効果(ROI)への疑問:
年間1,500万円はあまりに高額。社長のゴールは「生産性を上げること」であり、「議事録ツールを使わせること」ではない。18%という数字の低さよりも、実際にどれだけ業務効率が上がったか(時間の削減効果)を見るべきではないか。 - 「利用率」という数字の定義を疑う:
そもそも18%とは「全社員に対する割合」なのか、「全会議数に対する割合」なのか? 製造業の現場で全員が日常的に会議をするわけがない。1 on 1などの短い打ち合わせもカウントされているのか? - 契約解除という選択肢の保持:
もし調査の結果、本当に費用対効果が出ておらず、現場の業務構造に合っていないなら、「無理に引き延ばさず解約する」という選択肢も視野に入れるべき。
議論の白熱:「外れ値」と切り捨てるか、「成功事例」として学びに行くか
今回の採点(91点・Lv4.3認定)を通じて、AIパートナーとの間で最も熱い議論となったのが、「人事(65%)・総務(72%)という高利用率の部署をどう扱うか」という点でした。
私の初期の立て付けはこうでした。
「製造業の500人規模なら、人事や総務の人数はせいぜい数人程度。3人のうち2人が使えば65%になってしまう。統計データとして飛び抜けた数字はノイズ(外れ値)としてあえて無視し、分母の大きい営業や開発のボトルネック解決に注力すべきではないか?」
これに対し、AIからは実務における非常に深い指摘が入りました。
「統計(数字)として鵜呑みにしない姿勢は正しい。しかし、実務では『数字』ではなく『人』を見る。たとえ3人しかいなくても、実際に便利に使えている成功事例(人)がいるなら、真っ先に話を聞きに行く価値がある。そのノウハウの中に、営業部100人に横展開できるヒントが隠れているからだ。」
「失敗の原因を探す」だけでなく、「成功の再現性を探す」。問題が起きた時にトラブル箇所ばかり見るのではなく、うまくいっている部署のノウハウを抽象化して他に伝播させるという、まさにLv5(実務マスター)の思考プロセスを叩き込まれました。
第2ステップ:最初の1か月で絶対にやること&真のリスクの再定義
これらの議論を踏まえ、私が導き出した「最初の一か月のアクション」と「リスクの再定義」は以下の通りです。
【最初の1か月で絶対にやることTOP3】
- 「利用率18%」の計算式の定義と、ROI(時間の削減効果)の再集計
数字の定義を情シスと確認し、実際にツールを使っている層(人事・総務・一部の営業)でどれだけの工数削減が起きているかを定量化する。 - 高利用率部署(人事・総務)へのインタビューと「成功パターンの抽出」
なぜ彼らは使えているのか? どんなプロンプトや運用ルールで「修正の手間」を減らしているのかをヒアリングし、マニュアル化する。 - 営業部・開発部の現場の「生の利用風景」の観察(シャドーイング)
説明会資料を見るのではなく、実際の会議に同席し、マイクの位置、音声認識の精度、どの部分の修正に時間がかかっているのか(誤字なのか、論旨のズレなのか)を現場で目の当たりにする。
【今回一番怖い真のリスク】
単なる「1,500万円の契約解除」や「自社の売上減」ではありません。
最も恐ろしいのは、「AI議事録の挫折を通じて、社長や役員が『AIなんてやっぱり現場じゃ役に立たない』と誤った学習をし、会社全体のDX(構造改革)が完全にストップしてしまうこと」です。
CS(カスタマーサクセス)の真の価値は、自社ツールを売ることではなく、「顧客のAIに対する信頼と、変革の芽を守り抜くこと」にあるという視点にたどり着きました。
今回の学び:前提を疑い、「成功の再現性」を追いかける
今回はあえて厳しめの採点(91点)となりましたが、得た気づきは過去最高に大きいものでした。
- 数字の定義を絶対に鵜呑みにしない(18%という数字の裏にあるロジックを疑う)
- 「失敗の解明」と同時に「成功の再現」を追う(うまくいっている人を観察する)
- 「ツールを使わせる」のではなく「本当の目的(生産性向上)」に立ち返る
- 「続ける/やめる」の二者択一ではなく、「判断材料を増やすための時間を買う提案」をする
AIを「何に使うか」を考える段階は完全に終わり、ビジネスの現場で「どう問題を定義し、関係者を動かすか」という思考の深みに達しつつあります。
100問組手の13問目。まだまだ道半ばですが、提示された課題にただ従うのではない「本質を見抜く力」は確実に身についてきています。
(14問目へ続く)