こんにちは!池下竣紀です。
雨が上がったばかりの街を歩いていると足元にできた大きな水たまりが目に留まることがあります。濡れたアスファルトの上にぽっかりと浮かぶその小さな水面には青く澄んだ空やゆっくり流れる雲そして街並みが鮮やかに映し出されています。普段私たちが上を見上げて眺めている景色が足元で逆さまになって広がっている光景はどこか不思議で思わず立ち止まって見入ってしまいます。ただの雨水の集まりに過ぎないはずの場所がまるで別の世界へ繋がる小さな入口のように見えてくる瞬間です。
この水たまりに映る世界をよく観察してみると本物の景色とは少し違った味わいがあることに気づきます。風が吹けば水面が細かく波立ちそこに映る建物や木の枝は柔らかくゆらゆらと形を変えていきます。実体の世界では固く揺るぎないビルや電柱が水の中ではしなやかに形を崩しながら光を反射しています。実物よりもどこか幻想的で境界線が曖昧になったその姿は目に見える現実だけがすべてではないような余韻を感じさせてくれます。わずか数ミリの水の厚みがいつもの風景をまったく新しい表情へと塗り替えているのです。
この水たまりの現象は私たちが日々向き合っている仕事や人との関わりの中にも通じるものがあります。目の前の状況や固定観念に縛られて行き詰まりを感じたとき私たちはつい同じ視点から同じ景色ばかりを眺めてしまいがちです。しかし足元に目線を落として水面に映る景色を覗き込むように視点を少しずらしてみると見慣れたはずの課題や環境がまったく異なる角度から鮮明に浮かび上がってきます。逆さまになった世界を見ることでそれまで見落としていた新しいアプローチや発見が芽生えることがあります。
雨が止み日光が差し込むと水たまりは少しずつ干あがりやがて跡形もなく消えていきます。しかし一度その中に広がっていた逆さまの世界を知った目にはいつもの街並みがほんの少し違って映るはずです。立ち止まって視点を変えてみることの面白さは私たちが日常の中で見過ごしがちな新しい可能性をそっと教えてくれます。次に雨上がりの道を歩くときはぜひ足元の小さな世界に目を向けてその静かな変化を楽しんでみてください。