会議の終わりに、こういう言葉がよく出ます。「そのあたりは追って」「なるべく早めに」「来月を目処に」。
その場は穏やかに終わります。全員が納得した顔で解散します。そして翌月、同じ議題がそのままの姿でもう一度出てきます。
うちでは、期限のない約束を約束として扱いません。決まったこととして数えません。宿題リストにも載せません。冷たいと受け取られることは分かっています。それでも数えません。
理由は単純です。期限のない約束は、守れないからではなく、守れたかどうかを判定できないからです。判定できないものは、改善もできません。「なるべく早く」は、いつ遅れたのかが分からない。遅れが分からなければ、手を打つ機会も来ない。気づいたときには、選べる手が減っています。
だから面談では、しつこいと思われても日付を聞きます。「今月中」ではなく「何日」。「担当に確認します」ではなく「いつまでに確認して、いつ返してもらうか」。ここで空気が少し固くなるのも知っています。
ただ、これは詰めるためにやっているのではありません。むしろ逆です。
日付が入っていない仕事は、たいてい誰のものでもありません。誰のものでもない仕事は、その組織でいちばん責任感のある人のところに勝手に積み上がります。頼まれてもいないのに、夜中にひとりで抱えることになる人が出る。日付を入れるのは、その人を守るためでもあります。
もうひとつあります。期限を切ると、守れなかったことが早く分かります。早く分かるほど、打てる手は多い。行き詰まる案件を見ていると、問題は「間に合わなかったこと」よりも「間に合わないと分かるのが遅かったこと」にあることが多いと感じています。期日は、遅れを責めるための線ではありません。遅れに気づくための線です。
ですから、期限を切ったあとに「間に合いません」と言われるのは、こちらとしてはまったく困りません。むしろ助かります。困るのは、期日がないまま静かに時間だけが過ぎていくことのほうです。
念のために書いておくと、自分がこれを完璧にやれているわけではありません。人には日付を聞いておいて、自分の宿題には「今週中」と書いていることがあります。書いた翌日に、それは何曜日の何時までなのかと、自分に聞き直すはめになる。他人に厳しく言った分だけ、そのまま跳ね返ってくる仕事です。
決めるのは経営者です。自分は隣に座って、その決定に日付を入れる係だと思っています。日付が入った瞬間に、願望は計画に変わります。逆に、日付のない計画書は、枚数がどれだけあっても願望のままです。
会議の最後に「追って」と言いそうになったら、一度止まってカレンダーを開く。それだけで、翌月に同じ議題が出てくる回数は減ります。