初めてお会いする席で、こちらから最初に聞くことは決めています。うまくいかなかった打ち手の話です。
これまで何を試したのか。それがどう転んだのか。いつ止めたのか。止めると決めたのは誰か。順調だった話は、放っておいても出てきます。聞かなくても出てくるものを聞く時間は、あまり長く取りません。出てこないのは、途中でやめたほうの話です。
この順番にしているのは、意地悪をしたいからではありません。過去に何を試したかを知らないまま作った計画は、たいてい過去に試して駄目だった打ち手をもう一度並べてしまうからです。同じ手を、同じ理由で、もう一度。これが起きると、時間だけが減ります。会社にとって、時間はいちばん戻ってこない資源です。
だから、できなかった話を聞けない相手とは、正直なところ計画が作れません。作れたとしても、それは願望を並べた紙になります。
もうひとつ、止めた判断を誰がしたのかを聞く理由があります。打ち手そのものより、決め方のほうが繰り返されるからです。誰も決めていないまま自然消滅した打ち手が多い会社では、次の計画も同じように消えます。逆に、痛みを伴う撤退をきちんと決めた経験がある会社は、次も決められます。過去の失敗は、その会社の決定力を測る材料になります。
聞かれる側からすると、初対面でいきなり古傷を開けにくるので、気分のいいものではないと思います。そこは分かっています。それでも聞くのは、現在地を確かめないと、行き先の話ができないからです。地図を広げる前に、いま自分がどこに立っているかを決める。順番としては、そちらが先です。
もっとも、こちらも人のことは言えません。自分だって初対面では、うまくいった話のほうを先に喋りたくなります。失敗した話は、聞かれてもいないのに自分から並べたことはたぶん一度もありません。だから、話しにくさは分かっているつもりです。分かったうえで、それでも聞きます。
そして、聞いた話を責める材料には使いません。使うのは、次の一手を決める材料としてだけです。撤退した判断を後から掘り返して、あのときこうしていればと言う人間は、経営の隣に座る資格がないと思っています。過去は変えられません。変えられるのは、次に何を選ぶかだけです。
面談の終わりに、うまくいかなかった話を一通り出してもらえたときは、良い面談だったと考えています。取り繕われなかったという意味だからです。そこからやっと、数字の話ができます。
もし一緒に働くことがあれば、最初に覚えてほしいのはこの順番です。成果より先に、止めた打ち手と止めた理由を共有する。自分の失敗を先に机に出せる人と働きたいと思っています。うまくやれた話は、そのあとでゆっくり聞かせてください。