営業は押しではなく引きだ|一川航輝
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こんにちは、営業代行・セールスコンサルタントの一川航輝です。
皆さんは「営業」という言葉に、どのようなイメージを持っていますでしょうか? 「とにかく話が上手くて、立て板に水のように自社の商品をアピールする」「断られても何度も訪問し、熱意で押し切る」といった、いわゆる「ゴリゴリの押し」のイメージを思い浮かべる方も少なくないかもしれません。
確かに、一昔前はそのようなパワープレイが通用した時代もありました。しかし、情報が溢れ、顧客自身がインターネットで簡単に比較検討できる現代において、そのアプローチはもはや通用しません。むしろ、顧客から敬遠される要因にすらなります。
10年以上のBtoB営業経験の中で、私は一つの確信に至りました。 それは、「現代の営業は『押し』ではなく『引き』である」ということです。今回は、私が日々実践し、クライアント様の売上向上に直結させている「引きの営業」の本質についてお話ししたいと思います。
なぜ「押し」の営業は失敗するのか?
想像してみてください。あなたが服を買いにお店に入ったとき、店員さんがいきなり近づいてきて、「これ、今年の新作なんです!素材も最高で、絶対にお似合いになりますよ!」と一方的に話し続けたらどう感じるでしょうか。多くの人は「少し自分のペースで見させてほしい」「売り込まれている」と警戒心を抱き、お店を出てしまうでしょう。
BtoBの法人営業でも全く同じことが起きています。 自社のサービスがいかに優れているか、どれだけ機能が豊富かを熱心に語る営業担当者は少なくありません。しかし、顧客が求めているのは「素晴らしい機能」ではなく、「自社の課題を解決してくれる手段」です。顧客の現状や悩みを無視した一方的な「押し」は、顧客との間に見えない壁を作り、せっかくの商談の機会を自ら潰してしまう行為に他なりません。
「引き」の営業とは、顧客の課題を引き出すこと
では、「引き」の営業とは具体的にどのようなものでしょうか。 それは一言で言えば、「顧客に語らせる」営業です。自分が話す割合を2割、顧客が話す割合を8割にするイメージを持つと分かりやすいかもしれません。
優秀な営業は、プレゼンターではなく「優れたインタビュアー」であり「良き相談相手」です。 顧客自身も気づいていない潜在的な課題や、言葉にしづらい悩みを、適切な質問を通じて「引き出し」ていく。そして、顧客が「実は今、こんなことで困っていて…」と本音を漏らした瞬間こそが、本当の商談のスタートラインとなります。
引きの営業では、自社の商品を「売る」という意識を一旦捨てます。代わりに、目の前の顧客のビジネスをどうすれば良くできるか、その一点に集中し、徹底的にヒアリングを行います。
「引き」の営業を実践するための3つのステップ
では、明日から「引き」の営業を実践するためにはどうすれば良いのか。私が特に重要視している3つのステップをご紹介します。
1. 徹底した事前準備と仮説構築 ただ闇雲に質問すれば良いわけではありません。事前に顧客の業界動向、競合状況、プレスリリースなどを読み込み、「おそらくこの企業は、今こういう課題を抱えているのではないか?」という仮説を立てます。この仮説があるからこそ、「〇〇の分野で最近このような動きがありますが、御社ではどのような対策を打たれていますか?」といった、本質を突く鋭い質問(引き出し)が可能になります。
2. オープンクエスチョンによる課題の顕在化 「はい」か「いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンではなく、「なぜ」「どのように」といったオープンクエスチョンを多用します。例えば、「現在のシステムに不満はありますか?」ではなく、「現在のシステム運用において、一番手間がかかっている業務は何ですか?」と聞くことで、顧客に具体的なエピソードを語らせ、課題を顕在化させます。
3. 否定せず、共感し、傾聴する 顧客が話し始めたら、絶対に途中で遮ったり、否定したりしてはいけません。「なるほど、そういったご苦労があるのですね」「それは大変でしたね」と深く共感し、受け止める姿勢を示します。人は、自分の話を真剣に聴き、理解を示してくれる相手にしか心を開きません。この信頼関係の土台があって初めて、後の解決策(ソリューション)の提案が生きてくるのです。
まとめ:営業は「売る」仕事から「共に解決する」仕事へ
「引きの営業」とは、決して消極的な営業という意味ではありません。顧客の懐に深く入り込み、真のニーズを汲み取るための、極めて高度で戦略的なアプローチです。
自社の商品を売り込むのではなく、顧客の課題を解決するパートナーとなること。 「押し」て無理やり買わせるのではなく、「引き」出して顧客自らに「これが欲しかった」と気づいてもらうこと。
もし今、営業活動に行き詰まりを感じているのであれば、一度立ち止まって、ご自身の営業スタイルが「押し」になっていないか振り返ってみてください。矢印の向きを「自分」から「顧客」へと変え、「引き」を意識するだけで、商談の空気は劇的に変わるはずです。
営業という仕事の本当の面白さは、顧客と共に課題を乗り越え、そのビジネスの成長を間近で実感できることにあります。この記事が、皆さんの日々の活動のヒントになれば幸いです。
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