昨今のNISA需要が及ぼす影響
はじめに
最近、経済や金融の仕組みについて自発的に学習を進めている。しかし、その中でどうしても拭えない「ある大きな疑問」が湧いてきた。自分なりに構造を整理してみたので、考察として共有したい。
本題
近年、国を挙げて大々的に推進されている「新NISA」。 多くのビジネスパーソンや投資家が、オルカン(全世界株式)やS&P500(米国株)などの外国株の積立投資をスタートしている。私もその一人である。
「公的年金だけに頼らず自助努力で老後資金を作る」「インフレによる現金預金による実質的な目減りから資産を守る」という意味において、この制度は個人にとって非常に合理的で、素晴らしい仕組みである。日本政府も老後2000万問題の解消に向け、ライフプランニングの一つの手法として推進している。
しかし、一歩引いて「マクロ経済と日本国全体」の視点からこの現象を見ると、ある重大な“矛盾”が浮かび上がっていると考えている。
それは、「NISAの普及が、構造的な円安を加速させている」という不都合な現実だ。
1. 「円建て」の裏で起きていること
「円建ての投資信託を買っているのだから、為替には影響しないのでは?」と考える人がいるが、それは誤解である。 私たちが「円」で海外株ファンドを買ったとき、その裏側であるアセットマネジメント会社では、集まった巨額の「円」を「ドル」などの外貨に両替し、現地の株式を買い付けている。いわゆる、円建てのドル買いだ。画面上は円表示でも、中身は完全な外貨資産である。ここで、投資信託を実際に運用するアセットマネジメント会社(アセマネ)の行動原理を見てみると、この円売り圧力が「不可避」であることがより明確になる。
アセマネのファンドマネージャーには、顧客から預かった資産を最も有利に運用しなければならない「受託者責任」という法律上の重い義務がある。もし、アセマネ会社が「日本が円安で困るから、オルカンの買い注文が来ても、円安を防ぐためにドルの両替を少し手加減しよう」などと考えたら、それは顧客への裏切りであり規約違反になる。
つまり、アセマネのプロたちは、その原理原則として、「日本の国益や為替レートがどうなろうと、顧客のオーダー通りに冷徹かつ機械的に、1円たりとも残さずドルに換えて海外資産を買い付けなければならない」のだ。
NISAで海外株が買われれば買われるほど、為替市場では巨額の「円売り・ドル買い」が機械的に発生してしまう事態が起こる。
2. 「毎月自動」がもたらす慢性的な円安圧力
さらに不気味なのは、つみたてNISAの特性である「ドルコスト平均法(定額自動購入)」だ。 通常の貿易であれば、円安が進めば海外旅行を控えたり、輸入を減らしたりとブレーキがかかる。しかし、自動積立であるNISAマネーは、円安になろうが株価が下がろうが、毎月数千億円〜兆円規模の「円売り・外貨買い」をシステム的に執行し続けてしまうのだ。これが、為替市場における「頑固な円安の床」を作り出していると考えている。
3. 政府の想定外だった“最大の誤算”
政府が長年掲げてきた「貯蓄から投資へ」の本来のシナリオは、「銀行に眠るお金を日本企業に投資させ、国内経済を活性化させること」だったはずだ。
しかし、国が「非課税にするから自由に投資していいよ」と言った結果、国民は過去30年停滞していた日本株ではなく、より成長期待の高い海外株を合理的に選んだ。これは当然である。投機的な投資家、チャレンジ精神のある投資家などを除き、収益性、成長性が少ないと考えると普通は投資を控える。
- 理想:貯蓄から「日本企業」へ投資 = 国内経済の活性化
- 現実:貯蓄から「海外企業」へ投資 = 構造的円安を助長し、輸入物価高で生活が苦しくなる
個人が豊かになるための夢のような制度、NISAを推進すればするほど、国全体の首を絞める円安が進んでしまう。この「政策のジレンマ」について、どう考えるか。
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