神社に関わる仕事を始めてから、約4年が経ちました。境内に足を踏み入れたときに感じる静けさ、自然と背筋が伸びるような空気、長い年月を経ても変わらず受け継がれている文化。神社で過ごす時間の中で、私は日本の伝統が持つ美しさを日々感じてきました。その一方で、副業としてWeb制作やデザインにも取り組んでいます。神社とWeb。一見すると離れた世界に見えますが、実際に両方に関わってみると、そこには多くの共通点があることに気づきました。
美しさは「加えること」だけでは生まれない
Webデザインを始めた頃は、画面を魅力的に見せるために、色や装飾、動きを増やすことばかり考えていました。しかし、神社の空間を見つめ直すと、本当に心に残るものは必ずしも華やかな装飾ではありません。鳥居をくぐってから拝殿へ向かうまでの道、建物と木々の間に生まれる余白、静かな場所に響く足音。そこには、人の気持ちを自然に整えるための「間」があります。この感覚は、Webデザインにも通じます。情報を詰め込みすぎず、ユーザーが次に見る場所を迷わないようにすること。色や文字の強弱を整理し、本当に伝えたい内容だけを残すこと。余白は単なる空きスペースではなく、情報を理解しやすくし、気持ちよく行動してもらうための大切な要素です。
伝統的なモチーフを使うだけでは足りない
日本らしいデザインを作ろうとすると、和紙、筆文字、朱色、金色、桜など、分かりやすい和風モチーフを使いたくなります。もちろん、それらも魅力的な表現です。しかし、装飾として並べるだけでは、伝統文化の本質まで伝えることはできません。私が大切にしているのは、伝統的な意匠をそのまま再現することではなく、そこに込められた感覚を現代の体験へ置き換えることです。例えば、オンラインで恋愛運を占える「恋みくじ」では、おみくじらしい期待感を残しながら、スマートフォンでも迷わず楽しめる画面構成を考えました。結果を表示するだけでなく、おみくじを引く前の高揚感や、言葉を受け取った瞬間の余韻まで含めて、一つの体験として設計することを意識しています。また、漢字の書き順を扱うWebデザインでは、伝統的な筆の印象と、現代的で読みやすいインターフェースの両立を目指しました。「和風に見えるか」ではなく、「日本文化を心地よく体験できるか」を基準に考えています。
Webサイトにも“参道”が必要
神社には、入口となる鳥居があり、参道があり、その先に拝殿があります。初めて訪れた人でも、空間の流れによって自然と進む方向が分かります。Webサイトにも、同じような導線が必要です。ユーザーは何を求めてページを訪れたのか。最初にどんな情報を見せれば安心できるのか。そして、最後にどのような行動を取ってほしいのか。見た目を整えるだけではなく、ユーザーの気持ちの変化を想像しながら、入口から目的地までの流れを作る。私はこの考え方を、Webサイトにおける「参道」の設計だと捉えています。
文化を守ることと、変化させること
伝統を守るというと、昔の形をそのまま残すことだと思われがちです。しかし、本当に大切なのは、形だけではなく、その文化が人々に与えてきた意味や体験を次の世代へ届けることではないでしょうか。時代が変われば、人が情報に触れる場所も変わります。紙からスマートフォンへ、地域の中だけで伝えられていたものが、Webを通して世界へ届くようになりました。だからこそ、伝統文化とデジタルを対立するものとして考えるのではなく、お互いの良さを生かしながら、新しい接点を作っていきたいと思っています。神社で学んだ静けさ、余白、導線、そして言葉を大切にする姿勢。それらをWebデザインへ落とし込み、誰かの心に残る体験を作ることが、現在の私のテーマです。これまで制作してきたWebデザインやUI/UX、文化をテーマにしたビジュアル作品は、こちらのポートフォリオにまとめています。 Webデザイン: https://dribbble.com/lovekoi/