こんにちは!寺西巧です。
整理をしていた引き出しの奥からふと手のひらに収まるほど小さな古い革製の切符入れが姿を現しました。
かつてどこか遠くへ旅立つときに使っていたはずのそれは長年大切にしまい込まれていたせいかしっとりと落ち着いた艶を帯びていて触れると微かに遠い日の記憶が蘇るような温もりを感じさせます。
私たちは日々の暮らしの中で絶えず新しい目的や場所に向かって歩みを進めていますが時としてこうして過去の足跡を物語る古い小物と出会うことで自分が歩んできた道のりを改めて振り返る瞬間が訪れます。
映像の制作現場に身を置いているとどうしても目の前にあるスケジュールや新しい機材や次から次へと舞い込む案件の処理に追われてしまい立ち止まる余裕を忘れがちになってしまいます。
けれどふと手元にある小さな革小物のように長く愛され使い込まれていくことでしか出せない味わいや深みがあるという事実に気づかされると焦る気持ちがスッと静まり返っていくのです。
動画作りにおいてもただ新しい技術や流行の演出を次々と取り入れるだけではなくその映像に触れた人の心に長く残り続けるような手ざわりのようなものを大切にしたいと強く思います。
画面の向こう側にいる誰かの日常にほんの小さな彩りや温かな感情を届けるためには作り手自身が日々の小さな発見や心の揺らぎを丁寧にすくい上げる感性を持ち続けていなければなりません。
あの古い切符入れが長い年月を経て今の美しい風合いをまとったように自分自身も日々の制作活動を通じて一つひとつの経験を血肉に変えながら表現者として少しずつ深みを増していけたらと感じています。
忙しい毎日のなかでふと立ち止まり自分の原点や大切にしたい思いをそっと思い出させてくれるモノとの出会いは心を整えるためにとても大切な時間です。
これからも一つひとつのプロジェクトと真摯に向き合いながら誰かの心にそっと寄り添いずっと記憶の片隅に残り続けるような温かな物語を映像という形にして紡ぎ出していきたいと思います。