これは、私が初めて任されたブランドの立ち上げでした。
ご依頼は、老舗和菓子舗様からの「米菓の新しいブランドを立ち上げたい」という、ざっくりとしたご相談でした。店舗のオリジナル商品として、取りこぼしていたギフト需要を取り込みたい。そして、新商品のブランドを確立して、今後の商品展開の幅を広げたい。目標はそこにありました。既存のブランドを大切にしながら、新しいブランドとして独立して成り立たせることが条件でした。
まず、会社のことを知るところから
ブランドのコンセプトを考える前に、工場と店舗の従業員の方々、そして社長まで、全員に取材をさせていただきました。工場も見学し、米菓の全商品を試食して、商品の特徴をマッピングしました。
取材を重ねる中で見えてきたのは、会社の方々が「当たり前」にされていることの中にある強みでした。
・店舗での接客の丁寧さ
・社員全員で商品開発に取り組み、一人ひとりにチャンスがある土台
・工場でありながら、手焼きのように仕上げる技術力
・素材や地産地消にこだわる、やさしさ
こうした強みや魅力を言語化していく中で出てきた新ブランドのキーワードが、「女将のおもたせ」でした。菓子舗の朗らかで上品な女将が、自慢の品々を丁寧に包んで渡してくれる、そんな“おもたせ”。
言葉を、形にするまで
コンセプトが決まったあとは、店舗の既存のギフト商品群をマッピングし、それぞれの立ち位置を整理しました。その上で、新ブランドが差別化できる方向性を提示しています。
「品のある、堅苦しくない、飾らない、少し茶目っ気のある」などなど、ブランドを形作るキーワードを、デザイナーとクライアントの全員で共有し、イメージをすり合わせてから、パッケージデザインに入りました。そのおかげもあり、数回のブラッシュアップで、納得のいく最終デザインに辿り着くことができました。
ギフト箱は、見せ方とコストの両方から
進めていく中で、ギフトの詰め合わせも展開したい、というご希望がありました。最初は箱でのご提案をしていましたが、形状をスリーブに変更し、2個セットは横並びに、3個セットは縦に、本の背表紙のように並べて詰められる形を提案しました。スリーブにしたことで、製造コストも約20%の削減につながりました。
結果と、いま思うこと
発売を開始してから、約3か月で店舗の約40商品の総売上のうち、約30%を占める人気商品になりました。
従業員の方々へのインタビューや工場見学から、形になって店頭に並ぶまで、すべてが初めての経験で、すべてが学びでした。約6年が経った今も、店舗と通販で販売されていると知り、とても嬉しく思っています。
知ること、整理すること、言葉にすること、共有してから形にすること。ブランドづくりで今も大切にしている流れの原点は、この案件にあります。