1
/
5

流行色~藤本銀河

色の流行はゆるやかに推移するといわれる。

1シーズンだけある色が流行し、そのシーズン限りで終わりというのではない。

流行色が育つ迄数年かかり、ピークに達したら、今度はなだらかに下降していく。

このように流行色は、数年前から微妙に存在している。

流行しそうな色がその存在をあらわし始めた時、いち早く発見し、育てあげる。

その結果、多くの人に使われると流行色と呼ばれる色になるのである。

そんな色を探し、育てるのは、ファッションデザイナーやマーチャンダイザーの力でもある。

よく、景気の良い時は暖色系が流行するといい、不景気の時は寒色系が流行するといわれる。

このように流行色は社会の動きと密接な関係を持っている。

しかし、流行色とは外見的なものばかりでなく、人間の考え方や内面的なものにまで影響を与え、その結果、消費者の考え方や生活のスタイルにまで変化が起こる。

流行色は我々の生活に、それとなくではあるが、多かれ少なかれ心理的な影響を及ぼすのである。

かつては、日本のファッションビジネスには、パリのオートクチュールコレクションの影響力が大きかった。

ファッションデザイナーたちがコレクションで発表する色が、そのシーズンや次のシーズンの流行色になることが多かった。

流行は上の階級から下の階級へと伝わっていく。

日本では、パリのオートクチュールコレクションで発表されたものに憧れ、メーカーはそのデザインや色を真似て作った。

消費者も上流階級への憧れから、オートクチュールで発表されたものと同じようなものを求めて着ていた。

ところが最近では、オートクチュールのコレクションはクラシックでエレガントすぎて、遅れたイメージが強い。

ファッションのカジュアル化が進んでいる現在では、オートクチュールはあまり好まれず、オートクチュールと同じイメージを使うことは少なくなってきている。

また、最近のカジュアルブランドは、メーカーが発信する流行だけではなく、ストリートファッションのように、消費者の感性が流行を生み出し、その影響が、社会の中で形や色の流行を作り出しているといえる。

消費者が優先して流行を作り、メーカーはその情報をもとに物作りをしている場合もある。



藤本銀河