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監督署や年金事務所の調査員を見習わなければいけない。


 先日、社労士試験の合格発表がありました。今年も約2,500人の社労士が誕生したそうです。私は社労士試験をクリアした人が、社労士事務所で働くにあたり、戦力として認められるには2つの道があると思っています。

Aパターン
実際に給与計算業務や入退社手続き業務を行なう。

Bパターン
賃金台帳を見て人事労務管理の問題・課題を発見し、提案する

よく社労士試験を突破した人から

社労士業務を習得のために、手続き業務・給与計算の業務を行いたい

と言う声をよく聞きます。またベテランの社労士さんも

手続き・給与計算を行わなければ社労士業務は習得できない、

というようなことをよく言っています。ちなみに、先日、弊社のイベントで約200名の社労士事務所に

「手続き業務の割合はどれくらいですか?」

とアンケートを実施したところ、

7割の顧問先は手続き業務を行なっている

といった結果が一番多かったです。実際、社労士事務所にとって、手続き・給与計算業務は、労働生産性が高く、組織として長期間、安定的な経営をするには、手続き・給与計算業務は必須です。社労士試験を突破した人が

「手続き業務・給与計算の業務を習得したい!」

と思うのは無理はありません。

でも本当に社労士試験をクリアした人が、実際に手続き業務や給与計算の業務を行わなければ戦力として認められないのでしょうか?

私はそうは思いません。

例えば、年金事務所や労働基準監督署で働いている行政の方々は、手続き業務や給与計算業務を経験していません。経験していなくても

申請書類が正しく記載されているか、コンプライアンスが守れているか否か

をチェックできるノウハウがあります。初めて見る賃金台帳をみて色々判断をしている行政の方々を思うと、国家資格の社労士有資格者は、手続き業務、給与計算業務を経験しなくても賃金台帳から色々な情報を取得して、判断ができるようにならなければならない、と思います。社労士試験を経験してない人や、パートさんは、実際に手続き業務、給与計算をやったほうがいいかなーと思いますけどね。つまり

社労士有資格者ではない方はAパターン、社労士はBパターンを目指してほしい。

と思っています。

社労士は、行政の方達と同じ視点で物事を考えるスキルは絶対に必要です。行政の方々は、手続き業務や給与計算業務を経験しなくても賃金台帳をみて、色々な判断できるノウハウがあります。国家資格ホルダーの社労士も同じようなスキルが必要ではないでしょうか。

また社労士は、行政側と同じようなことを言っていては経営者に信頼されません。経営者が社労士に求めていることは、

一般論よりもうちの会社の場合はどうなるの?その法律の解釈をうちの会社にあてはめるとどうなるの?

だと思います。顧問先の人事労務管理を定量評価し、またその業界の特性を把握し、その会社にあったアドバイスをするには、それなりの時間が必要です。それでも手続き業務や給与計算を経験したければ、自分で給与計算ソフトを購入し、給与計算の結果帳票を自宅に持ち帰り、その帳票と全く同じ帳票を作成すればいいだけのこと。手続き業務も個人のPCにソフトを入れて、実際に電子申請直前までやって見ればいいだけのこと。社労士試験を経験していない方が実際に手続きや給与計算をやらなければノウハウが得られない、と思うのは理解できますが、国家資格の社労士有資格者も同じような発想というのはちょっとおかしい、と感じます。

苦労して取得した社労士の資格は、

この顧問先のためにしてあげられることは何か?

を追求して欲しい。

企業は人なり。企業は人がすべて。人を育てない会社は、いつか倒産する。企業は「1にも2にも人材」。社員の成長なくして会社の成長はありえない。

社労士という資格は、ヒトを大切にする企業経営のアドバイス、企業永続のためのアドバイス、日本から過労死という言葉がなくなる社会の実現などに生かしてほしい、と思っています。