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【成立間近】実はすごい!日本の保育130年の歴史を変えた「こども誰でも通園制度」を解説!




 みなさん、フローレンスも提言してきた「こども誰でも通園制度」が、ついに、法案成立を迎えようとしています!



 実は、「子ども子育て支援法」の改正案の中にひっそりと含まれていたんです。



 これに関するニュースの話題はもっぱら、財源確保のための「支援金制度」についてですが…



 僕は声を大にして言いたい。



 「こども誰でも通園制度」の成立こそ、日本の保育130年の歴史の大転換点であり、そして、日本の保育がグローバルスタンダードに追いつく第一歩である、



 ということを!!!!!!!!!



 今日は、「こども誰でも通園制度」の成立をみなさんとともにお祝いするために、「こども誰でも通園制度の歴史的意義」について解説させてください!



日本初の保育園は、ヤングケアラーのためのものだった



 みなさんは、日本初の保育園をご存知でしょうか…?



 日本最古の保育園は、1890年(明治23年)、赤沢鍾美(あかざわ あつとみ)という「私塾」の先生が作りました。



 当時、各地にできた小学校に通えるのは裕福な家のこどもたちばかり。貧しい家庭のこどもたちは、学校に通えない義務教育年齢のこどもたちが通う私塾に通っていました。



 私塾に通う生徒のなかには、幼い弟妹など赤ん坊を背負ったまま勉強にくるこどもも多かったそうです。



 今で言う「ヤングケアラー」ってやつですね…!



 そのような私塾のひとつ、「新潟静修(せいしゅう)学校」で教えていた鍾美が、ヤングケアラーのために赤ん坊を預かることにしたのが、



 日本最古の保育園=「新潟静修学校附設託児所」



 のはじまりです!!!



 実は、この日本最古の保育園、一般のこどもたちも受け入れる「赤沢保育園」となり、現在まで続いています!



        出典:保育園の歴史|赤沢保育園https://www.akzw-hoiku.jp/history.html


女性の社会進出とともに発展した「工場附設託児所」


 時を同じくして、この頃



 日本の近代化・産業化に伴って、女工のニーズが増加していました。



 この時代、女性が外にでて働くようになると何が起こるか…?



 そうです!!こどもを預ける場所が必要になります!



 ということで、続々と工場に付設された託児所が誕生していきます。



 最古の工場附設託児所は、1894年、東京紡績株式会社(後の大日本紡績株式会社)の深川工場内に作られました。



ようやく誕生した、日本最古の公立保育園


 民間から遅れること約30年、1919年に、日本最古の公立保育園(大阪市「鶴町第一託児所」「桜宮託児所」)が誕生します!



 公立保育園でもやはり、母親が働いている家庭のために保育が行われていました。



保育園が法律で位置づけられた「児童福祉法」


 その後、終戦とともに様々な法制度が整備されるなかで、



 1947年、「児童福祉法」の制定によって、保育園が法律で位置付けられます。



 1951年の改正によって、



 保育所は「保育に欠けるもの(こども)」の保育を行う場所である、と明確に定められました。



 この法律の考え方は、現行の「児童福祉法」にも引き継がれ…



 児童福祉法第39条第1項では、



 保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者の下から通わせて保育を行うことを目的とする施設



 と保育所が定義されています!



「働いている親のためのもの」で在り続けた保育園

 長いながい歴史と法律の解説でしたが、僕が言いたいことはつまり、



 赤沢鍾美が約130年前に保育園を生み出してから今に至るまで



 保育園は「働いている親のためのもの」



 だったのです!!!!!!!!



それが、



 この度、成立する「こども誰でも通園制度」によって、保護者の就労の有無を問わず、誰でも保育園に通うことができるようになります!!



 「こども誰でも通園制度」の誕生は、保育園が「すべてのこどもたちのためのもの」に変わる



 という、一大転換点だということ、ご理解いただけたでしょうか?!



世界のスタンダードは「すべてのこどもたちに保育を開く」こと


 さて、ここまでは日本の中の歴史を遡ってきましたが、



 世界に目を向けてみれば、保育園=「すべてのこどもたちのためのもの」は、なんと2000年代以降からスタンダードになりつつあったのです!!



 このグローバルスタンダードの変化には大きく2つの要因が!



 一つは、幼児教育の重要性が認識されるようになったこと。



 ノーベル賞経済学者のジェームズ・ヘックマン教授などの研究によって、



 就学前の適切な教育がこどもの人生に大きな影響を与える



 ということが、広く知られるようになったのです!



 二つ目は、「子どもの権利」が重視されるようになったこと。



 1989年の第44回国連総会において採択された「子どもの権利条約」によって、



 全てのこどもに最善の教育を保障することが求められるようになりました。



 保護者の事情によってこどもが受けられる教育に差がでてはいけない、



 保育(就学前教育)がすべてのこどもに権利として保障されるべきだ



 という考えのもと、世界では、保育園がすべてのこどもたちに開かれていっています。



北欧やドイツ、韓国でも…


 スウェーデンでは、1985 年「就学前学校全入法案」成立により、親の就労の有無にかかわらず、こどもの権利として、就学前保育・教育を保障すると定められました。※1



 ノルウェーでは、2009 年に 1~5 歳児に対して保育を受ける法的権利が定められました。※2



 また、ドイツでは、1996年に3歳以上の子どもに保育を受ける権利が付与され、2013年には1-2歳児にもその権利が拡大されました。※2



 さらに韓国でも、2004年から、親が就労していなくても保育所が利用できるようになり、保育所の利用率が急上昇したそうです。※3



 「こども誰でも通園制度」の成立が喜ばしいことには変わりないですが、



 世界に目を向けてみれば、



 日本がやっとやっとグローバルスタンダードに追いつく第一歩を踏み出した…!



 ということなんです!!



さいごに


今日は、こども誰でも通園制度の歴史的意義について解説しました!



 みなさん、



 「こども誰でも通園制度」の成立=保育園が「すべてのこどもたちのためのもの」に、という動きは、日本保育史的にも、グローバル的にも、必然だった。


 このことを、ぜひとも胸に刻んでいただきたい!!



 まだまだ不十分なところも多い制度ですが、



 本当に、本当に、大きな意義のある制度が法案成立を迎えようとしています!!!



 みなさん、ぜひ一緒に見守ってください!



 そして、法案成立の暁には、



 日本の保育園が「すべてのこどもたちのためのもの」になったことを



 一緒にお祝いしましょう!!!!!





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※1 YAZAKI, K. (2019). スウェーデンにおける幼小連携制度・政策の動向. 東京大学大学院教育学研究科紀要, 59.
https://doi.org/10.15083/00079195



※2 厚生労働省 株式会社 シード・プランニング 「諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会 (保育の質に関する基本的な考え方や具体的な捉え方・示し方に関する調査研究事業) 報告書」 平成31年3月29日
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000533050.pdf



※3 池本美香. (2015). 導入・総論 日本の子ども・子育て支援制度の課題: 諸外国の動向をふまえて. In 自治体国際化フォーラム= CLAIR forum/自治体国際化協会 編 (Vol. 304, pp. 2-4). 自治体国際化協会.
https://www.clair.or.jp/j/forum/forum/pdf_304/04_sp.pdf