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海外出身の外国人は、「ネタの共有」に最も苦労する。

 以前、リクルートで働いていたとき、居酒屋で同僚や上司とノミニケーションをすることが多くあった。私にとっては仕事でのコミュニケーションより、ノミニケーションの方が手強かった気がする。

それは何故か?実例を上げながら説明をしたい。

 ノミニケーションの途中、小学生のときの運動会の思い出がテーマとして取り上げられ、その場が盛り上がっていたことがあった。運動会の定番として流れる歌、競技の種目、またこの話題から思い出されるあらゆる事柄など、この誰もが経験する当たり前のようなテーマに対して共感できるものは一杯ある。

 だから、Aさん:「私、そのときXXというものをやったぞ。それ大変だったな。」、Bさん:「そう、そう!それって皆やってるんだ(笑)」Cさん:「あれは確かにやばかった!」などの会話ができる。

 しかし、外国人はこの「そう、そう!」ができない。運動会といっても国によって文化が違うので意外と思い出の共有がスムーズにできない。1:1のコミュニケーションなら、相手が自分のことを考えて話題を選ぶが、1:多のコミュニケーションは多数の人が話せる「ネタ」を取り出すことが大事なので、外国人を配慮することは中々難しい。

 仕事の場面ではうまく話せても、こういったフラットな場面でのコミュニケーションに溶け込むことができず、沈黙すると、人間的な魅力を相手は感じ取ることができない。人間は、「共感し合う」ことができてこそ、相手に好感を持つことになる存在だ。相手と自分の共感できる接点つくりのテーマが少なければ、対話はすぐ途切れてしまい、関係は長く続かないものだ。

 また、外国人がこの「ネタの共有」を克服できないと、果たしてどうなるのか? 社会人に必要な「仕事術」と「関係術」の両方のバランスがとれず、仕事術だけ上達する。その結果、いつか関係術も求められる役職になろうとしても、壁にぶつかることになる。

 やはり長く過ごすことに越したことはないと思う。長い間の教育と経験は関係構築に有効に使える多くの思い出を与えてくれる。したがって、しっかりとしたデータは見つかることができなかったが、①「幼い頃に日本に来た外国人」、②「大学進学のとき日本に来た外国人」、③「海外の大学を卒業して日本で就職した外国人」、④「海外から中途で日本に来た外国人」は調べてみれば、それぞれ出世の差が明確にみえるかもしれない。

 特に③と④に該当する外国人は危機感を持ち、人一倍の努力をする必要がある。日本歴が短い外国人であるこそ、ネタの勉強を疎かにしたはいけない。このネタは過去のことに限らない。最近日本人が興味をもっているテーマも含まれる。

 私はこれを克服するため下記の努力をした。

 まず、ノミニケーションで知らないテーマが出たら、必ず覚えておいて、後で同僚に訊いてみたり、ネットで調べてみる。また、「あらゆる人生の場面で日本人は何を経験することになるのか?」を仮定し、WEBで調べて、そのことに対して語っている個人のブログの日記や、まとめサイトなどがあれば読んでみた方がかなり有効だ。

 書籍に頼ることはちょっと難しい。日本語の勉強は数多くの市販の教材があるので、その気さえあらばそれほど難しいものではない。しかし、こういったネタや関係術を外国人をターゲットにして語っている本は中々見当たらない。一気に多くの日本人の実体験を閲覧したいならWEBがベストだ。

また、文化とネタを混同してはいけない。日本の文化を勉強しても本当の関係構築ためのネタとしては利用できない場合が多い。例えば、・日本には建前と本音という文化がある ・祭りというものはこういった目的で行われる ・日本の礼儀作法にはこういったものがあるなどなど...貴方はまだこのようなものを覚えなきゃならないレベルか?それより、最近流行っているブルゾンちえみの芸を一回見た方が良い。

 仕事をしてからは自分が知りたい日本のことを知るのではなく、相手が共有したい日本のことを知るのが先だ。これが非常に肝心なポイントだ。

「自分には日本人にはない強みがあるので、これを伸ばしながら貢献したい」を強く意識してしまうと、思考が偏って、関係構築に苦労しやすい。こうならないため、私は外国人が常に日本人が見ること、聞くことを自分も同じく感じるための努力をして欲しい。