1
/
5

「菊と刀」だけでは、足りない。

 高校生のとき、「菊と刀」(ルースベネディクト 著)という本を非常に興味深く読んだ記憶がある。この本は1967年に執筆されたものだが、日本人のこと(行動、思考、慣習、文化)を正確に見抜いている。評判の日本分析のベストセラーだからか、韓国にも翻訳されたので、当時日本語がうまくできなかった自分さえ読み切ることができた。

 正確な数値は把握していないが、この本は日本より海外でより売れたんだろう。その理由はやはり日本人は自分のことなので、調べる必要性を感じないから。でも、まだ読んでいない日本人の方がいたら、ぜひ読んで欲しい本である。西洋人がここまで分析できるなんて、とびっくりすることになる。

 そして、これがキッカケとなり、様々な日本のことを分析しているものを接した。しかし、今、考えてみると、私は「日本のことをしっかり理解することができた」と勘違いしていた気がする。

 この世の中の様々な学習資料は、ミクロな事実を集めて、マクロに解析している。なぜなら、その方が分かりやすいし、いつ、誰にも役に立つ情報を追求しているからだ。「菊と刀」は本当によく綺麗に日本のことが纏まっている。

 「菊と刀」だけではなく、他の文化理解や語学力向上の本の多くがこういった形で構成されている。しかし、今の日本は本当に色々なトレンドがあり、変化も早いので、ミクロな事実を、ミクロのまま見ることが大事になっている。

 勉強好きな外国人が本当に警戒すべきことはここにある。したがって、実体験が非常に重要となるが、ここで私が強調したいのは、ただの経験を繰り返すのではなく、「ミクロなものを勉強してから、ミクロな場面で使う」ことだ。若者の間で通用される雑なネタなどがあるので、それをしっかりと叩き込む。そして、実践で使う。そうすると、日本人は「そこまで知ってる?!」の驚きと同時に何かの目には見えないネットワークが形成され、より関係を深くすることができる。

 ここで一つの注意点としては、「自分が興味のあるものが、日本人も同じく興味があるのか」常に考えないといけないこと。実際そうではないケースが多くある。外国人は日本が慣れていないので、なんでも興味を示しやすいが、日本人はそれが本当に普通のものなので興味がない場合が多い。特産品の本場でお住まいの人が、以外とその特産品に興味がないことが多く見られるが、それと同じだ。興味を示すのは旅行に来た他の地方の人だ。

 現実は、綺麗な菊、よく鍛えられた刀を、雑草が制する。