書籍【なぜ世界はEVを選ぶのか~最強トヨタへの警鐘】読了
世界の自動車産業は、EVシフト化が進んでいると言われている。
一方で、「EVシフトは減速している」という話も聞く。
日本のトヨタは最初から敢えて「全方位戦略(マルチパスウェイ)」を打ち出しており、その方針は今も変わっていないように思う。
この戦略がどういう結果をもたらすのかは分からないが、巨大自動車産業が大きく転換していることは間違いない。
自動車という、資本主義を象徴するような産業が大きく変わるというのは、人々の生活も大きく変えるほどの影響を与えるだろう。
100年に一度と言われる大変革の時代だからこそ、この変化をきちんと見ておきたい。
EV化に限らず、自動運転、そこでのソフトウェア(SDV=Software Defined Vehicle)の派遣争いも凄まじいものがある。
日本企業はどうやって勝ち残っていこうとしているのか。
他の業界で働く我々自身も他人事ではない。
本書はEV化の現時点での各メーカーの動向を、丁寧な取材を元にまとめ上げている。
そういう意味で、「EVの現在地」というまとめであるが、個人的には、自動運転が今度どうなるのか、未来の社会変化の方が気になっている。
まずは、自動運転を制御するソフトウェアの覇権をどこがどう握るのか。
自動運転が実現された社会では、車を所有するということが不要になり、乗りたい時だけ呼び出して使用するという「シェアリング(共有)」が主流になっていくはずである。
ほとんど孫悟空の筋斗雲のような感覚で、使いたい時だけ呼び出して、自身の移動や物の運搬に使うのだろう。
そういう社会がいずれ訪れることを考えると、やっぱりいつかはEV化になっていくのだろうと思う。
単純に自動運転でガソリン車が走っている姿が想像できないだけだが、全ての動きをソフトウェアで制御することを考えると、確かにEVの方が効率がよさそうだ。
問題はそういう社会がいつかは訪れるとして、それが「いつ」実現するのか、ということだ。
普通に考えても、整備された都市であれば、自動運転もEVも実現可能そうだが、大雪が降る北海道や超寒冷地で、EV化・全自動化が便利だとは到底思えない。
同様に、世界には道路が整備されていない土地なんていくらでもある訳で、砂漠の中や荒れ果てた大地やデコボコ山を走ることだって当然にありえる。
これだけ考えても、EV化が単純に行くはずがないと思うのだが、それらの状況をどれだけ勘案して、どういう戦略でいくというのか。
これは単に自動車の話だけではないのかもしれない。
すべてのビジネスパーソンが直面している「破壊的イノベーション」に対しての向き合い方と言っても過言ではない。
技術は確かに進化していくが、その潮流にどう波乗りしていくのか。
潮流は技術の進化だけでなく、ライバル企業の動向によっても左右される。
分かりやすい例で言えば、テスラとBYDだと思うが、新興勢力たちが今までと全く違う発想で仕掛ける戦略に対して、既存事業者たちがどう立ち向かっていくのか。
真っ向勝負なのか、戦う場所を別のフィールドに移していくのか。
本書内で展開された、フォルクスワーゲン・アウディ・ポルシェ・メルセデスの各関係者の取材の声は非常に興味深い。
欧州を代表するドイツ勢が何を考えているのか。
各メーカーごとの考え方は微妙に異なるが、EV化に非常に積極的に取り組んでいたことが印象的だった。
別軸であるが、高級スポーツカーとして地位を確立するイタリア:フェラーリの言葉も非常に特徴的だ。
フェラーリ自体が、移動のための道具としては機能しておらず、ブランドとしての地位だったり、「車を走らせること」に対しての価値を提供しているために、単純なEV化という戦略は取りづらいのだろうと思う。
そんな中で、本書内ではほとんど語られていなかったが、自動車を制御するソフトウェアであるSDVがどうなっていくのかで、今後の自動車業界を大きく変えていくのは間違いない。
AppleやGoogleなど、巨大IT企業がこれらを握るという話も過去にはあったが、ハードであるメカ(機械)を高度に制御するというのは、別次元での技術が必要なのだと言われている。
デジタルで完結してしまうバーチャル世界では、確かにGAFAMが強いが、フィジカル世界との接続が必須なソフトウェアをどう作り上げていくのか。
一歩も二歩も進んでいるのは間違いなくテスラであるが、果たしてSDVで世界の覇権を握る時代が来るのか、どうなるのか。
個人的には、実はAmazonも侮れないと思っている。
Amazonの巨大倉庫内は、すでにロボット(ハードウェア)が稼働して物流を担っている。
限られた敷地内の整備された中だからこそ、自動化を進めやすい。
人が行っていた荷捌き業務を、今は急速にロボットに置き換えている。
もちろん、それらロボットたちは高度なソフトウェアによって制御されている訳だ。
かつてAmazonは自社業務のために開発したクラウド(AWS=Amazon Web Service)の一部を、外部に利用させることで、新しい収益源としていった。
これと同じことが、倉庫ロボットの外部化で起こり得るかもしれないと思っている。
色々と考えていくと、これからの未来は、何が起きても不思議ではない状況だ。
今までのやり方に固執していると、それこそ足元をすくわれてしまいかねない。
唯一の正解がない中で、どうやって柔軟に変化に対応できるかがカギだ。
自動車業界の変化は、対岸の火事ではない。
世界の動きに目を向けて、これからも自分自身をアップデートしていきたいと思っている。
(2025/9/4木)