書籍【中川政七商店が18人の学生と挑んだ「志」ある商売のはじめかた】読了
これはよい取り組みだ。
学生に講義だけでなく、実際にビジネスを考えさせて、実践させる。
こういう取り組みに参加できるのも、今の時代だからこそだと思う。
もちろん、私が学生だった30年以上前には、こういう機会すら無かった気がするから、優秀な若者が輩出されてくるのも納得である。
伴走する中川氏がヒントを与え、学生たちに考えさせる方式だが、実際には一緒に考えながら、もし考え方にズレが出てきたら、軌道修正を促す感じ。
分からないことは確かに調べれば出てくるが、分からないことが分かっていない場合に大人たちがサポートする。
確かに今の時代、様々なツールを使って調べることは簡単なのだから、過去事例や考え方を参考にしながら、ある程度は自分たちなりのビジネスを組み立てていけるはずだ。
しかしながら、こういう未知の体験は、大枠の部分、つまり「そもそもの部分」を理解するのが意外と難しい。
全体収益の目標をどこにセットすることが妥当なのか。
そのためには、どういうビジネスモデルを組み立てるか。
根本的な話だが、我々は誰のために、何のためにこのビジネスを行うのか。
本当の意味で、その真の目的に全員腹落ちしているのか。
ネットで検索すれば、過去事例や参考にできる考え方が出てくるだろう。
しかし、自分たちなりの答えを見つけるには、結局は自分たちで考えるしかない。
自分なりの考えを持ったとしても、それをどうやってメンバーに展開し、合意を図っていくか。
メンバーそれぞれが本音で話し合ってまとめ上げることができるのか。
この経験は、新人が既存事業の部署に配属されただけでは、経験することができない。
そもそも「働く」とは、仕事への情熱が必要なはずなのに、今の既存の会社では、そこがお座なりになっている点があると思う。
これは私自身が本書を読みながら反省した点だ。
案外、ビジネスの根幹に関する話を、既存の会社では行う機会がない。
それで「なかなか自走しない。受け身だ」と嘆いても、実はマネジャー側や経営者側の意識の問題の方が大きいのではないかと思った。
起業へのモチベーション、事業へのモチベーションを育てることこそ、当然ビジネスの一番大事な点であるはずなのだ。
営業やマーケティングを勉強することも必要だが、小手先のテクニックよりも、本来の目的である「ミッション・ビジョン」を明確化し、社員にインストールする方が大事だ。
すでにビジネスの現場で働いている我々が、これらを実践できていない。
自ら事業を立ち上げた創業者なら、ミッション・ビジョンを明確に持っていると思うが、漫然と就職し、特に希望していない部門に配属され、そんな中である程度日々の生活に追いかけられながら過ごしていたとしたら、このようなビジネスの根幹に立ち返って考えることをしていない。
学生たちにこれらビジネスの根幹部分を、最初から叩き込むのは、本当に素晴らしい。
吉田松陰の話ではないが、若い時からどうやって「志」を育てるかが、いつの時代も必要なのだと思う。
失われた30年と言われる経済の停滞は、若者の志を育てられなかったのも原因の一つだったのかもしれない。
私自身も当時は若者だった訳だが、自らを振り返りながら、反省の意味も込めて考えてしまう。
果たしてビジネス・商売を行う意味とは、一体何なのだろうか。
単純に「お金儲け」と考えると、それも間違いではないが、核心ではない気がする。
やはり社会のために、何らかの価値を提供する社会貢献が、一番の目的だと思う。
そういう思いで働いている人が、会社の中でどれぐらいいるのか?
「付加価値」とよく言うが、この言葉の意味は非常に深い。
それこそ単純な金銭価値のように思ってしまうが、そういうことでは決してない。
測るための指標を考えると、お金で考えることがイメージしやすいが、ここで伝えたい「付加価値」とは、もっと深い意味だ。
これは、実際にビジネスモデルを考えさせ、実践させるという経験の中からしか生まれないのかもしれない。
私自身も、恥ずかしながら50歳を超えて、ようやくその意味を少しずつ理解した、という次第である。
儲けることだけが核心ではないが、利益がなければ、事業の継続には繋がらない。
利益があることは、付加価値を創出していることにも繋がっている。
お客様に何かを提供できたから、利益に繋がったのは間違いない。
ビジネスとは、利益を出して終わりではなく、課題を問い続け、その解決策を考え続け、学び続けることだ。
そのことに気付くきっかけになれば、このプロジェクトには意味がある。
「誰のために、何のためにこのビジネスを行うのか」を追い求めること。
学生に限らず、今私の働く会社でも、改めて問い直す必要性があると感じている。
指示されたタスクをこなすだけでなく、付加価値の創出に自ら本気で取り組めているのか。
この仕事に、志はあるのか。
私自身、ビジネスのキャリアとしては、いよいよ終盤戦だ。
改めて足元を見つめ直し、最後まで全力で走りきれるように問い直していきたい。
(2025/10/3金)