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静岡にとってなぜスタートアップが必要なのか?

はじめに

はじめまして、髙地です。
静岡でスタートアップ支援の会社をたちあげたり、実際のスタートアップにもジョインし、スタートアップ一色の5年間を過ごしてきました。

多くの苦労がありつつも、先に見える希望を頼りに今もスタートアップと関わりながら刺激的な日々を過ごしています。

今日は、静岡(自分の生まれた静岡市を中心に静岡県全体の意味で)になぜスタートアップが必要なのかという話をしたいと思います。

静岡の状況

目に見えるところでは静岡市内でもシャッターのまま新しい店舗が入らない状況が続いています。コロナの影響もあったかもしれませんが、家賃の高止まりと人口減少等により、空きテナントが増えている実感があります。

急速な変化ではありませんが、着実に、じわじわと状況が悪くなっている気がしています。

静岡市出身の起業家が集まり、難波 静岡市長とランチをする機会にお招きいただき、自分の出身地である静岡市について改めて調べてみました。

静岡市の将来人口予測は、全国の人口減少・高齢化の中、静岡市も人口減が進行。2019年と2020年の人口は70万人を下回り、2030年には646,098人減少する見込み。

第4次静岡市総合計画(2023-2030)

出典:大学進学時の都道府県別流入・流出者数|文部科学省
https://www.mext.go.jp/content/1413715_014.pdf

静岡市は、静岡大学や静岡県立大学をはじめ、私立大学や専門学校も立地しているため、転出と転入が相互にあるため、20歳以下の人口減少はまだ抑えられています。しかし、21歳〜30歳は大幅に転出していることがわかります。

出典::第4次静岡市総合計画の策定に向けたデータ調査及び分析(令和2年)|
静岡市 企画局 企画課 https://www.city.shizuoka.lg.jp/000927865.pdf

令和2国勢調査~静岡県の概要~|静岡県知事直轄組織デジタル戦略局統計調査課
https://toukei.pref.shizuoka.jp/jinkoushugyouhan/data/02-010/documents/kokuseiidougaiyou.pdf

むしろ、就職時に転出が多いということは、就職時に魅力的な仕事が少ない。大学進学で静岡に来た方も東京や地元に帰ってしまう。スタートアップやIT系の企業が少ないためにこういったことが起きているのではないか。

これは、静岡県に魅力的な就職先や転職先が少ないのではという仮説を立てました。産学官プロジェクトでも議論されたところでは、「職場で個性が発揮できない」、「保守的な風土がある」、「変化を好まない」といった指摘もあった。

人口流出原因は 地域課題の共有へ議論、静岡で産官学プロジェクト|あなたの静岡新聞ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂)の発想を生かし、地域のさまざまな組織が協調して地域課題の解決を目指す公益www.at-s.com

自分もそうした空気を感じるし、スタートアップ関係の仕事をしていると特に静岡県中部でそうした重苦しい空気を感じることが多い。

スタートアップのマインドとは全く真逆の空気感が漂う静岡を変えるためには、もっと静岡にスタートアップが増える(増やす)必要があると考えている。

自分が起業した時の話

当時書いた記事がある。当時から一文字も修正していませんが、今でも全く同じ意見で、現状を5年かかっても変えられなかったことに無力感すら感じます。

<一部抜粋>
「地方から、静岡から」起業する人を増やしたい。

本社団のイベントスポンサーや活動支援者には、「静岡が好き」「起業家を応援したい」と純粋に思っていただける方がとても多くいらっしゃいます。

私自身、静岡県(以下、静岡)出身で、静岡で起業しましたが、いまだに静岡で起業したことを周囲に伝えると、まるで "道を外れた" かのように後ろ指をさされることがあります。

『起業は危ないものだ。』というマインドセットが静岡県内、特に中部と東部にはまだまだ残っていると感じます。

その影響があるのかはわかりませんが、特に大学生をはじめとする若い人材がとりあえず就職してしまいます。

静岡ではなく、東京の会社に。

「できれば静岡で働きたい」と思う人もいますが、優秀な若者が"働きたい"と思える面白い会社やスキルを活かせるIT企業等が少ないのが現状です。

本社団設立の目的は、『地方から、静岡から起業家を“継続的に”生み出していくこと』そのための武器を、知恵を、知見を持ち寄り、集う場所(コミュニティ)を形成していきます。

あたらしい道を切り拓き、挑戦する全ての人が共に学びあう機会を提供したいと考えています。弊社団の想いに共感いただき、興味を持っていただいた方は、個人・法人などを問わずお気軽にご連絡ください。

https://shizuoka.ventures/mind/

2018〜2023年の5年間

昨年、スタートアップ支援の会社では5周年を迎えました。
小さな会社ですが、仲間も増え、自分が創業した時よりも幅広いスタートアップ支援ができるようになりました。

また、当時はベンチャー支援と呼んでいましたが、今ではスタートアップ支援という言葉が一般的に使われるようになりました。

EXPACT 5th Anniversary忙しなく過ぎて行ったこの5年間。私たちの歩幅はいつも一段飛ばしで、振り返るまもなくただ前だけを見ていた。5年目になった今、expact.jp

Initial : https://initial.inc/articles/japan-startup-finance-2023

2018年からコロナの影響を受けた2020年を除くと右肩上がりで成長してきました。2023年は米国の利上げに起因して、米国のGAFAMを代表するハイテク株が続落し、レイオフも実施されています。日本もご多分に漏れずその影響を受けています。SaaS系のスタートアップのマルチプルはARR×20倍まで許容されていたのが、今では5〜7倍程度まで引き下げられています。

【用語解説】スタートアップ企業のバリュエーションの決め方!マルチプル法とは?【用語解説】スタートアップ企業のバリュエーションの決め方!マルチプル法とは? | EXPACT | 資金調達 |スタートアップ企業のバリュエーションの決め方!マルチプル法とは? スタートアップの資金調達やM&Aなどの様々な場面expact.jp

一方で、影響は受けているものの米国ほど深刻な状況ではない日本は、岸田政権がスタートアップ支援を積極的に打ち出すことなどに起因し、世界的に、叫ばれている資金調達の冬とは程遠い状況です。

特に日本のシード、アーリーステージは感覚的にはほとんど影響を受けていない気がします。

直近では、日経平均株価も40,000円(2024年3月8日時点)近くを推移しており、日本経済の実態と株価が乖離しつつある印象も受けています。また円安を背景とした海外PEファンドにより、優良企業の非上場化も進んでいます。

そうした中で、静岡のスタートアップシーンはどういう状況だったでしょうか?

出所:2022年 Japan Startup Finance-国内スタートアップ資金調達動向決定版を元に作成

東京や大都市圏と比べると圧倒的に低い資金調達額であることから、まだまだ静岡でスタートアップを始めるには厳しい環境と言えるかもしれません。

ベンチャーデットで大きく融資残高を伸ばしている銀行もありますが、その多くが東京のスタートアップに向けたものであり、県内スタートアップがその恩恵を受けられていないという現状もあります。

2024年は、静岡にとってスタートアップ元年では?

それでは、なぜ今静岡が熱いのか説明したいと思います。
まずは静岡県の予算ですが、前年度である令和5年度の約3倍に膨らんでいます。

令和6年度概算要求(静岡県)静岡県におけるスタートアップ支援:戦略と今後の展望静岡県におけるスタートアップ支援:戦略と今後の展望 | EXPACT|スタートアップの新たな挑戦をサポート |静岡県のスタートアップ支援戦略 スタートアップへの期待 スタートアップは経済成長の重要な原動力と見なされています。成功したexpact.jp

加えて静岡市では、前年度の10倍超の2億3千万円としたスタートアップ関連予算がついています。スタートアップの力を活用して、行政課題・地域課題の解決を図る方針を掲げています。

こうした期待値に、静岡県内のスタートアップをはじめ、静岡県出身者や静岡県の行政課題の解決に貢献できるスタートアップのテクノロジーや実行力が求められています。

そして、これからの静岡のあるべき姿

人口減少の問題に対して、魅力的な企業が少ないのではないか?若い方が望むようなIT系のスタートアップや社会課題と向き合うインパクトスタートアップがもっと県内から生まれて欲しいと思います。

しかしながら、短期的にはスタートアップを飛躍的に生み出すことは難しいのかもしれません。現実的には、3〜5年程度は静岡の外から有望なスタートアップを集めて、行政課題の解決や中小企業のDX化などを進めていく必要があると感じています。

並行して、中高生向けの起業家教育(アントレプレナーシップ教育)を実施することで、5〜10年後には、地元出身者が静岡県内でスタートアップを起業し、社会課題の解決を目指す。そうしたスタートアップを行政や民間企業が一丸となってスタートアップをバックアップできるようなスタートアップエコシステムを構築していかなければなりません。

そのため、静岡県内をフィールドに活動するスタートアップもそうしたスタートアップを支援する民間企業にとってもここからの1年1年が重要であり、難波静岡市長の演説の言葉にもあったように結果が求められると言えます。