「綺麗な花」を作るのではなく、「美しさの基準」を作る。フローリストがHead of Designを目指した理由。
- 序文:美しさは「感覚」ではなく「論理」である
私は大学で哲学と美術史を学びました。そこで得た結論は、「美しさには必ず構造(ロジック)がある」ということです。 フローリストとしてキャリアをスタートさせた当初から、私は「センス」という便利な言葉に逃げることを嫌いました。なぜ美しいのか、なぜこの配置なのか。すべてを言語化できなければ、それはプロの仕事ではないと考えてきたからです。
2. 転機:Beer and Techとの出会いと、17億円への挑戦
2018年、私はBeer and Tech(HitoHana)の創業期に参画しました。 当時のチームは数名。ビニールハウスの中で、文字通りゼロからのスタートでした。 しかし、会社が急成長し、事業規模が数億、10億と拡大する中で、大きな壁にぶつかりました。「スケーラビリティ(拡張性)」の壁です。
職人が1つ1つ丁寧に作るだけでは、月間数千件のオーダーには耐えられません。しかし、効率だけを求めて品質を落とせば、ブランドは死にます。 「規模を拡大しながら、品質を落とさない(むしろ上げる)」 この難題を解決することこそが、私のキャリアの分水嶺となりました。
3. 実行:オペレーションという名の「デザイン」
私はフローリストとしての「手」を動かす時間を減らし、代わりに「仕組み」を作ることに没頭しました。
- 定義の標準化: 「かわいい」「おしゃれ」を禁止し、色相・彩度・ボリュームを数値や具体的な花材リストで定義しました。
- 教育のシステム化: 誰が作っても80点以上が出せるマニュアルと、そこから100点を目指すためのフィードバックフローを構築しました。
- サプライチェーンへの介入: 理想のデザインを実現するため、市場や生産者と交渉し、仕入れの段階から品質をコントロールすることなども試みました。
結果として、HitoHanaはフラワー事業とサブスクリプション事業を合わせ、17億円規模の事業へと成長しました。
4. 未来:Head of Design & Qualityとして
現在、Beer and Techは「国内No.1」を目指し、さらなる非連続な成長フェーズにあります。 これから求められるのは、単なるEC販売にとどまらず、空間プロデュースやハイエンドライン(HitoHana Collect)を含めた、包括的なブランド価値の向上です。
テクノロジーの会社にあって、私が担うべきは「ラストワンマイルの美意識」を死守すること。 どれだけ優れたシステムがあっても、届いた花が美しくなければ、顧客の感動はありません。
デザインと品質を経営資源として捉え、ロジックと感性の両輪で事業を牽引する。それが、私の現在の役割です。