はじめまして、AI×データでデジタルマーケティングの分析・改善提案を自動で行うSaaS「AIアナリスト」をはじめ、行動分析からの予測を軸に、マーケティングを変革するWACULという会社でCFOをしているタケモトと言います。
この前、社内で議論をしているとき、「空中戦になっている!いったん立ち止まろう!」ってなったんです。そこで、確かに議論の焦点が定まらず、空中戦になっているところから、会議自体の進行を立て直すようなことから始める、という風になりました。多くの人が気づくとそうなってしまう経験があると思います。
無駄な会議は嫌いだけど、会議には価値があるからみんなやる
みんな「会議」が嫌いだ。時間を食うわりに生産性が高くない、と感じているからだ。だけど、人は「会議」をする。やっぱり好きなんやん、という矛盾。小学生の恋愛みたいな状態。
これは何故起こるのかというと、「会議」には意味があり、そこに価値があるけれど、一方で価値のない会議も同時に発生しているからだ。これは小学生の恋愛とは似て非なるポイントである。(小学生の恋愛に無駄なものはない)
小学生についてはさておき、価値のない会議というのは、会議の目的、アジェンダ、参加者、資料など、それぞれの軸によって価値があったりなかったりしていると思う。これらは基本的に「会議の設定」による部分であり、事前準備の大切さである。その事前準備である「会議の設定」による会議の価値を高める取り組みとしては、A.T.カーニーの杉野さんが書いた「会社を変える会議の力」に詳しい。
会議の「実行」面での改善方法について考える
一方、このエントリーでは、会議の「設定」の面ではなく、「実行」の部分にフォーカスしていきたい。特に「会議」の「実行」における、もっとも時間を浪費する、会議中の「空中戦」という言葉があるが、この「空中戦」の回避方法について書きたいと考えている。あーだこーだと、だいの大人が雁首揃えて、結論のでない会話を延々と繰り広げるやつだ。これもみんな嫌いだけれど、やめられない。もうかっぱえびせんみたいな状態。
例えば、何かプロダクトの機能開発を検討しているとき、「Aという機能なんじゃないか?」「いやBの機能のほうがいいんじゃないか」「Aがユーザーに求められている!」「Bだって求められている!この前、ユーザー会でそういう意見があった!」「AはZ社の似たツールにだってある機能なんだから、先にあるべきだよ」「ユーザー重視だ!」「Z社に対する競争優位性だって重要だ!」なんていうやりとりが起こりがちだ。
これは何故起こるのだろうか。
解決策を議論する前に、議論の土台を揃えよう
だいたい「空中戦」が起こる原因になっているのが、その議論の参加者のあいだの共通認識の不足だ。共通認識とは、言い換えると「議論の土台」である。この「議論の土台」が揃っていないまま、一足飛びに「解決策」を議論しだすから、「空中戦」が始まってしまう。
右上から撃たれたと思ったら、今度は全然違う高度の話が出てきたりする。粒度や解像度と言われるようなものが全く違う話を同じ舞台で行うことで、まさに「高低差ありすぎて、耳キーンってなるやつ」です。
だから、議論の前に、その議論の土台を揃えることに時間をさくことで、議論がかみ合って、意味のある時間になるはずだ。
一般的にはこの「議論の土台」のことは、「コンテキスト」と呼ばれることもある。そのまま訳すのであれば、「脈絡」、「状況」、「前後関係」、「背景」といった議論のまわりにある様々なものを指し示す言葉になる。しかし、ここではあえて一般的に分かりやすい「土台」という言葉で説明をしていきたい。
先の例に戻って考えてみる。ユーザーが重要?競合が重要?それは両方重要で、どちらにも重きを置きにくいものだろう。じゃあ、そもそも両方を比較することに意味があるのだろうか。
例えば非常に有名なフレームワークである3C(市場・競合・自社)に照らせば、市場=ユーザーだし、競合=Z社どちらも重要である。そう、どちらも重要なのである。もし社内の共通認識として、「まずはユーザーフォーカスだ!」というように、そこに明らかな優劣がつけられるのであれば、機能Aと機能Bとの優劣の付け方は簡単だろう。
一方で、そこに優劣をつけられないのであれば、3つの軸の合計点で優劣をつけるということで、社内の合意が形成されていればそれはそれでよくて、先のような空中戦は起こらなくなるはず。
議論の土台とは、大きく2つの土台を揃えることになる
「空中戦」にならずに「地に足の着いた議論」ができるようにするためには議論の土台を揃えることが大切だということは何となくわかったとして、じゃあ次に、議論の土台って何なんだ?という話になる。
例えば、機能Aと機能Bとの3つの点数をどう定量化するか、その基準について決めよう!というようなことを決めないことには、議論はいつまでも宙に浮いたままだ。
「議論の土台」には大きく2つのフェーズが存在する。ひとつはギャップの認識、もうひとつは解決策の評価である。
1. ギャップ認識を揃えるために、現状認識とあるべき姿を揃える
議論の土台のひとつめ、ギャップの認識を揃えるまでのステップは、基本的には以下の通りだ。
①現状認識を揃える:現状自分たちがどこにいるのか、どういうレベルにあるのかについて、定性的・定量的を問わず、とにかく事実(=ファクト)を集めること。注意したいのは、”事実”と”推測”や”選好”を混同しないこと。「みんなが言っていた」は”事実”ではなく、”推測”になる。「XさんとYさんが言っていた」は”事実”である。「αのほうがよいに決まっている」は”事実”ではなく、個人の”推測”だ。ちゃんと切り分けよう。
②あるべき姿を揃える:自分たちはどこに向かっているのか、その認識を揃えること。あるべき姿が一致していない限り、議論が成り立たない。特に注意したいのは、「改善する」「ミスをなくす」など、異論が出るわけのない、「当たり前の結論」を避けること。改善するって、具体的にはどういう状態のことを言っているのか、より具体的なワードに落とし込むことが大切。
③ギャップ認識を揃える:具体化されたあるべき姿と現状認識の引き算で生まれるもの、それが解決すべきギャップになる。そのギャップについても、しっかりと言語化し、共通認識とすることが大切である。「どこを押せば何が起こるのか分かりにくい」という現状に対して、「人に聞かなくても操作方法が分かる・想像できる」があるべき姿であれば、そのギャップは明らかにユーザーインターフェースに問題があるというギャップ認識が定まる。
コンサルタント時代にはよく現状認識をAs-isと呼び、あるべき姿をTo-beと呼んでいた。解決策の議論ができるのは、この2つの認識を通じてギャップを明確にできた状態である③までの認識が揃っている状態からであることを肝に銘じなければならない。①~③の“認識を揃える”ことがすなわち「議論の土台」を揃えることに他ならない。
2. 解決策の評価軸を揃える
ギャップの明確化という、解くべき課題の設定まできたら、あとは解決策を定め、それを実行していくだけだ(”だけ”と、言ってもここは大変に難しい)。解決策のアイデア出しについても、テクニック的なものは存在するが、そこについてはまた別のエントリーで書きたいとは思っているが、一定程度は会議の参加者から解決策のアイデアを出すことができるが、AがいいとかBがいいとか「みんなが好き放題に話して、結論が出ないシチュエーション」を念頭において書いていきたい。
①ギャップ認識から導かれる課題感を揃える:ギャップを埋めるために、何が必要か。それを決めることが最初にすべきことだ。たくさんのギャップが存在する場合には、それぞれにやるべきことを並べた「解決策のロングリスト」を用意する必要があるだろう。
②評価軸を揃える:次に、その「解決策のロングリスト」について、どういった形でどれから取り組むべきか決めるための評価軸をみんなの中で合意しなくてはいけない。基本的には、2つの軸が基本になる。ひとつは「効果軸」=「効果の大きさ」、もうひとつは「時間軸」=「効果の出るまでの時間」である。
短期で効果の大きいものについては「クイック・ウィン」と呼び、通常はここから手を付ける。次に、長期で効果の大きいものと短期で効果の小さいものの2つを、その時の状況に合わせて選択していく。
基本的には、優先度が高いのは長期で効果の大きいものだろう。ただ、とにかく改善を急いでいる状況ならば、短期で効果の小さいものを、長期で効果の大きいものに先んじてやることもあると思う。
そこでは、例えば定性的に評価できるものをどう織り込むかという議論になりがちである。なので、そこはある程度キメの問題もあるが、いくつかこういう軸で見よう(効果は営業の売上増効果と社内工数の削減の2軸で考えよう!というような)ということが合意できていれば良いと思う。
③データを揃える:実際に、評価軸の認識を、その会議の出席者のあいだで合意している状態でも、実際に時間軸と効果軸との2つの軸について、考えたときに起こりがちなのは、具体的に「効果の大きさ」の判定でもめることである。
現場に聞かないとわからないとか、実際に時間を測ってみないとどれくらいの工数やコストが削減できるのかわからないとか、そういった事前準備のなさから、結果として「もし〜〜だったら〜〜。逆に、こうだったら〜〜」と、仮定の話ばかりに終始することがある。そうなってくると、仮定の話を複雑に何通りも考えていくだけで時間の無駄なので、そこで次の会議の日程と、それまでに集めておくデータを合意した上で会議を終えてしまうべきである。
④最終決定者を決める:最後に、様々な視点からの評価やデータが集まったところで、決定をしなくてはいけない。残念ながら、どんなデータを集めても、すべてが点数化できるわけではない。いやいや軸が6つになったから、6つのうち、一番〇が多いやつが正しいはずでしょ?!なんていう人もいるかもしれない。けれど、それは「6つの軸が等しく同じ価値だった」という特殊な場合に限る。普通、軸には重みがあるはずで、その加重平均を行わなければ正しい評価は下せない。一方で、その重みづけがそう簡単にできるとは思えないし、毎度毎度会議ごとにそれを行うのはそれこそ負荷が高すぎる。
「空中戦」から「地上戦」へ移行しよう
全体を通じて言えることは、概して同一である。
それは、「いきなり飛躍して解決策の決定をしようとするのではなく、その解決策の決定までの過程のひとつひとつを、ちゃんと合意していくことで、無駄がなくなる」ということである。いわばいきなり前線まで吹っ飛んでいくのではなく「空中戦」ではなく、匍匐前進でひとつひとつの関門をクリアしていく「地上戦」であろう。
ぜひ、その会議のススメ方をまず最初に合意した上で、ひとつずつクリアしていく、「地上戦」の会議を皆さんにしてほしいと思う。
WACULでは「成果の最大化」を目指す文化が根付いています
僕がはたらくWACULでも、もちろん「空中戦」が起こることはあります。そういったとき、自分たちで自身を見直しながら、空中戦に気づけば会議をいったん止めてでも立ち止まり、その基礎理解の部分をひとつずつ確認をしてから再度話し合う文化があります。
また、常にトップダウン・ボトムアップといったこともなく、その時々に柔軟な形で意思決定をしていく経営体制で、会社として個人としての両側面の成長を追求しています。
もし、今の会社での会議にうんざりしていたり仕事の意思決定プロセスにうんざりしていて、転職も視野に入りそうであれば、ぜひWACULもその転職先の候補にいれていただければ幸いです。よろしくお願いします!