「この動画を見てエントリーしました」と言われる映像の作り方
映像を作っていて一番嬉しい瞬間って、実際に見た人の声で価値を感じられた時だと思います。
4年ほど前に作った建設会社さんのリクルーティングムービーがあります。この会社さんはその後もご支援をさせていただいているのですが、先日社員さんにこう言われました。
「この映像を見て入社を決めました」
せっかく映像を作るなら、そういう映像が作りたいですよね。
この映像を見て買いました、このアーティストが好きになりました、と言われる映像。
今日はその4年前の採用動画を事例に、本当に効果のある映像を作るためにどういうことを考えているかをお話しします。採用動画に限らず、ブランディングムービーでもドキュメンタリーでもMVでも共通する話なので、映像に関わっている方はぜひ最後まで読んでみてください。
社員インタビューの映像はコスパがいい
まず前提の話から。社員インタビューの映像って、コスパがいいんですよ。
キャスティングいらない、スタジオいらない、会社の中で撮れる。最低限の費用で作ることができる。しかも、ちゃんと計画を立てれば予算をかけた映像と同じぐらいの効果を出すことができます。
ただ、注意しなければいけないのが「話す人が素人」ってことなんですよね。役者さんなら感情のこもった演技ができる。でも素人の方にそれをやってもらおうとすると、ただ喋ってるだけの眠い映像になってしまう。
だから、そこをどうしていくかという計画が非常に重要になってきます。
1. 伝えたいことを1つに絞る
これが一番大事だと思っています。
映像を作ろうとした時に、言いたいことがたくさん出てくるのは当然なんですよ。企業のブランディングだったら魅力が1個しかないってことはないし、働く人がいいとか、事業がユニークだとか、条件が良いとか、オフィスが綺麗だとか。あれもこれも言いたいことがある。
でも、あれもこれも詰め込んだ映像って、見た人は「結局何だったの」ってなるんですよね。
他は伝わらなくてもいいけど、これさえ伝わればいいんだっていうメッセージを1つ決めて、そこから企画を練っていく。これが出発点だと思っています。
今回の建設会社さんの場合、打ち合わせで担当の方が話してくれたことがすごく印象に残っていて。
「300人ぐらい職人がいて、働く場所も組み合わせも全員バラバラなんですよ。でも、みんなが同じ方向を向いてやっているんです。いいものを作って、住む人に届けようという気持ちは意識として共通できている」
じゃあそれを伝えられる映像にしましょう、というところからこの映像は出発しています。
演出はメッセージのためにある
この映像、よくあるインタビュー映像とちょっと構成が違います。
普通のインタビュー映像って、Aさんが喋って、Bさんが喋って、Cさんが喋って、社長が喋って終わりみたいな構成が多いですよね。でも今回は「1つの文章を複数人の言葉で成立させる」という演出をしています。
例えばこんな感じです。「誰が見ても綺麗に見えるように」とAさんが言い始めて、「きちんと丁寧に綺麗にやっていて」とBさんが続けて、「1mmもずれたらやり直すという気持ちでやっています」とCさんが締める。3人で1文が完結する。



こうすると見ている人は「みんなが同じことを言っている」「同じ方向を向いているんだな」と感じることができます。ワンチームの感覚を、構成の演出で伝えているわけです。
これを真似してくださいという話ではないです。伝えたい1番のメッセージが何かによって、演出は全然変わっていいんです。「うちの会社は文化祭の前日みたいな気持ちでみんな仕事してるんです」という会社さんには、社員もアルバイトも関係なく意見を出し合って楽しく仕事している様子が伝わるドラマを作ったこともあります。
伝えたいことを伝えるためにどういう演出が必要か、という逆算から考えることが大事です。
2. インタビューに台本は用意しない
これは結構驚かれることがあります。
別の現場に入った時、台本がきっちり用意してあることがあるんですが、僕は台本は用意しないようにしています。
なぜかというと、今の視聴者は映像を見るのにめちゃくちゃ慣れているので、台本を読んでいるとバレるんですよね。どれだけスムーズに読めたとしても伝わってしまう。そして台本で読み上げると、エモーショナルな部分が伝わらなくなってしまう。台本でエモーショナルなことを伝えられるのは役者さんだけだと思っています。
下手でも自分の言葉で話す方が、台本の読み上げより内容の詰まったものになる、というのが僕の考えです。
ただ、じゃあ自由に話してくださいって言っても喋れない人がほとんどだし、言ってほしくないことを言われても困る。そこのコントロールはどうしているかというと——
質問項目と、回答のざっくりしたイメージはお渡しします。ただそれは台本ではなく、言ってほしいキーワードや一文をお渡しするイメージです。「こういうことを言ってほしいんですよ」というのを示して、あとは自分の言葉で話してもらう。

別の事例ですが、インタビュー表の例
今回の建設会社さんの場合、職人さんって口下手な方が多いんですよ。話す仕事じゃなくて手を動かす仕事をされているので。でもその口下手なりに、キーワードから自分の言葉を紡ぎ出してくれた方が、僕は伝わると思っています。
ちなみに自分のYouTubeも同じやり方でやっています。台本は用意せず、ここではこういうことを話そうというキーワードや一文だけ上げておいて、それをパッと見て脳内で文章を組み立てて話す、という感じです。
3. 自然な様子を撮ることにこだわる
働いている様子を撮る時、僕がこだわっているのは「演技させない」ことです。
一時期、社員さんにかっこよく歩いてもらってそれをジンバルでかっこよく撮る、みたいな映像が流行った時期があったんですよ。でも、果たしてそれで何が伝わるのかという話だと思っていて。
素人の方にカメラに向かって決めポーズをしてもらうことが許されるのは結婚式ぐらいだと思います。結婚式はそれでいい。でも全く知らない人に何かを伝えるための映像に素人の演技が入ると、正直見ていてしんどいんですよ。
だから僕は、普段どうやって仕事しているかをまず聞きます。こういう作業をしてるんですね、それってどんなところが大事なんですか、じゃちょっとやってもらっていいですか、という流れでやってもらう。
そして撮影中は「もういないと思って普段通りやってください」と言うことが多いです。望遠レンズで遠くからあまり目立たないように撮ったり、あえて機材を少なくして撮られてる感を減らしたりすることもあります。
なるべく自然な表情、自然な動き、自然な仕草を撮りに行く。これを普段から意識しています。




ドキュメンタリーなんかはもっとそれが大事で、めちゃくちゃ距離を縮めて「自分がいるのが当たり前」というところまで持っていけると、自然な映像が撮れます。
動画の目的をもう一段解像度高く持つ
最後にこれだけ伝えたいことがあります。
映像を作る目的って、意外と解像度が低いことが多いんですよ。「認知を広げたい」と言われることがあるんですが、こういう映像を1本作ってバズって新しい人が見るということは、まあないです。
認知を広げたいなら、YouTubeで継続的に投稿するとか、InstagramやTikTokをやる方向が正しい。
こういうブランディング映像やリクルーティングムービーの目的は何かというと、一度知った人が行動を起こしたくなるためです。
興味を持ったからもっと知りたくなった。エントリーボタンを押したくなった。購入ボタンを押したくなった。そのための角度を上げるためのものだという認識が大事だと思っています。
だから再生数がKPIじゃないんですよ。リクルーティングムービーって500再生でもめちゃくちゃ効果が出ることがあります。そこを間違えると、行き先が違うバスに乗っているのにどれだけ頑張っても目的地に着けない、という状態になってしまう。
目的をぎゅっと明確にすること。これが一番重要だと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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