「映像会社って、どこに頼んでも同じでは?」——実は仕上がりの差は撮影より"前"で9割決まります。
だから、どんな準備をしてくれる会社かを見抜ければ、依頼は失敗しません。
今日は、自分が商品企画から関わったスーツケース『FRAME-ONE』のPVを例に、いい映像の裏側で何が起きているかをお見せします。
こんにちは、映像ディレクター、ビデオグラファーのまきおです。
僕は未経験から自分のバンドのMVを作ることから映像制作を始め、今ではKinoko inc.という映像制作の法人まで作ってしまうほどのめり込んでいます。
そうやって経験した中で、強く感じていることがあります。
それは、映像は撮影よりも「撮影前」でほぼ決まるということです。
どこまで緻密に準備できているか、そこが一番重要です。
ただ、まだ映像制作の依頼に慣れていない方だと、どこまで準備すればいいか?何を準備すればいいか?がわからないと思います。
そこで今回は、僕がスーツケースメーカーと共同開発したカメラマン向けスーツケース「FRAME-ONE」のプロモーションビデオを例に、企画書・コンテ・ロケハン・香盤表まで、プロジェクト全体の進め方を全部お見せします。
普段は企画書を公開することはなかなかできないんですが、今回は自分が商品の企画から関わっている案件なのでこれが実現できました。かなりレアな機会です。
このプロジェクトの概要
T&Sという会社が展開する「Legend Walker」というブランドと一緒に、カメラマン向けのスーツケースを共同開発しました。
僕が「こういうスーツケースあったら面白くないですか」という企画を持ち込んで実現した案件です。
カメラを持って移動する人のために作られたスーツケースで、カメラスペースと三脚スペースが独立していたり、フリースペースがついていたりと、現場での使い勝手を徹底的に考えた仕様になっています。
このスーツケースのプロモーション映像を展示会で流すために制作し、その後一般公開でも使っていただいています。
プロジェクトがスタートしたら
プロジェクト全体の管理はNotionでやっています。
タスクをリストにして、それぞれに期限を設定。タスクを開くと詳細を書き込める作りにしています。最近はNotionのAI機能も使いながら管理しているので、だいぶ効率が上がってきました。

プロジェクト開始のタイミングで必ず作るのが、全体スケジュール表です。これはお客さんとの共有資料になります。
構成案の検討→打ち合わせ→コンテ・香盤表の準備→撮影→初稿→確認・修正→納品、という流れを線で引いていく。
これを最初に渡しておくと、お客さん側も「この時期に確認の時間を取らないといけない」という準備ができます。
初稿が上がった時に「〇日以内にご確認ください」という連絡もしやすくなる。プロジェクトをスムーズに進めるための重要な一枚です。

企画書はこう作る
企画書もNotionで作ってお客さんに共有しています。受注前のコンペだったらパワーポイントで作ることもありますが、今回はすでに「お願いします」という話で始まっていたので、まずはイメージを揃えるための資料として作りました。

商品概要・ターゲット・訴求ポイント
まずここから入ります。今回は自分が商品企画にも関わっていたので詳しく書けましたが、通常のクライアントワークだとヒアリングでここを埋めていきます。「何がこの商品の一番の強みですか」「誰に届けたいですか」というのを徹底的に聞く。
この部分を企画書に入れておくのは、お客さんとの認識合わせだけでなく、照明スタッフやアシスタントなどメンバー内での意識共通にも使えるからです。
企画コンセプトと「1番伝えたいこと」
映像には2種類あります。機能を説明的に見せる映像と、イメージで引っ張る映像。今回はイメージ先行で、その中で機能を見せていくアプローチを取りました。
そして一番大事なのが「ワンメッセージ」を決めること。伝えたいことはたくさんあるけど、全部詰め込むと何も刺さらなくなる。この映像を通して一番伝えたいことは何か、を明確にする。
今回のキーメッセージは「移動=負担を、移動=武器に変える」でした。カメラマンは創造的な仕事をしているのに、移動って本当に最適化できているんだろうか。移動が自由になれば、もっと世の中にないものを生み出せる。だからそのためのスーツケースを作った、という流れです。
構成案と参考映像
企画書の段階でもざっくりした構成案を入れています。受注前だとしても、ある程度のストーリーラインを示した方がお客さんがイメージしやすいからです。参考映像も合わせて入れて、「こういうトーンはどうですか」という話をしながら認識を詰めていきます。
ナレーションもイメージを入れていますが、企画書段階のものは本番でかなり変わることが多いです。今回も最終的にはほぼガラッと変えました。
絵コンテを作る
企画書の認識が固まったら、コンテに落とし込みます。
今回初めて「Boards」というAIを使ったコンテ制作サービスを試してみました。画が下手でもコンテが作れるのでいいんですが、月8,000円程度とちょっと高かったので一旦保留中です。
コンテはシーンごとに書いていって、寄り・引きのバリエーションもある程度意識して入れています。ただ僕の場合は現場での流動性を大事にしたいので、細かく決めすぎずに少し粗めに作ることが多いです。
ちなみに、企画書の段階では
「朝起きて機材準備して→スタジオに向かう→撮影」
という時系列だったのが、コンテに起こす段階で順番を変えています。
最初にスタジオでカメラマンが活躍しているシーンを見せて、
「カメラマンの仕事はすごくクリエイティブだよね」
と印象づけてから、
「でも移動って本当に最適化できてるんだろうか」
という問いに入る構成にしました。
見ている人への刺さり方が全然変わります。
Vコンテ(ビデオコンテ)を作る
今回はVコンテも作りました。
BGMの雰囲気が合っているか、ナレーションの尺に対して映像の尺は適切かといった細かいところまでイメージを膨らませることができます。毎回作るわけではないですが、こういうPV系では作るようにしています。
スタジオ探しとロケハン
スタジオはSHOOTESTで探しました。
SHOOTEST 東京都内を中心にレンタル撮影スタジオ・ハウススタジオをご紹介。カフェ、キッチンスタジオ、屋上など、様々なシーンのスタジオを shootest.jp
今回探すポイントにしたのは2つ。
スタジオっぽいスタジオ(撮影スタジオのシーンを撮りたいので)と、自宅シーンも同じ場所で撮れること。
最終的に決めたスタジオは1階・2階・屋上があって、バリエーションをたくさん取れる場所でした。
ロケハンに行って、各フロアを何のシーンに使うか決めていきます。


1階は朝日が差し込む自宅のシーン。
照明を外に出せるか確認して、窓から朝日が入っているような演出ができることを確かめました。
1階の反対側にはステージ状のスペースがあったのでダンスのシーンに使うことにしました。
2階はスチルカメラマンが撮影しているシーン。
屋上は夕方から日が沈んでからのMVシーンに使うことにしました。
さらに近くに河川敷があったので、そこも使用場所として想定しています。


ロケハンで把握した内容は資料にまとめて、照明スタッフやアシスタントと共有します。
「このシーンではここを使って、こういうイメージで撮りたいんですよ」
というのを事前に伝えておくと、照明のセッティングをどう組むかもイメージしやすくなります。
キャスティングと衣装
今回のキャスティングはこんな感じです。
カメラマン役2名はコミュニティメンバーにお願いしました。
ミュージシャン役の女性は知り合いのミュージシャンに声をかけて、ダンス・モデル役はThreadsで募集したところ想定以上に応募がきたのでその中から選ばせていただきました。
キャスティング会社を使う場合は1人あたり最低5万円前後の予算が必要になってくるので、予算感に合わせてネットで探すという選択肢もとります。
衣装はスタイリストなしだったので、出演者の方に私物をお願いしています。ただ、私物でお願いする場合でもイメージ資料は必ず作ります。


全体のイメージ(派手すぎない・ロゴなし・季節感が出すぎない)を伝えた上で、出演者ごとにイメージを分けて共有。
参考写真を探してきて入れると、具体的にイメージしてもらいやすいです。衣装候補の写真を送り返してもらって「その靴は変えてもらえますか」というやり取りをすることもあります。服装って映像のトーンにかなり影響するので、割と慎重に確認するようにしています。
ショットリスト
取り漏れをなくすために、ショットリストを作ります。
シーンごとに「このショットを撮る」というチェックリスト形式で、レールで撮るかハンドで撮るか、ワイドかクローズアップかといったセッティング情報も入れておきます。
アシスタントへの共有にも使えるし、現場が押してきた時に「次はこれを撮る」という判断が素早くできます。

今回はスチル撮影担当のカメラマンもいたので、写真用のショットリストを別途作って渡しました。
香盤表
撮影当日のスケジュール管理に使うのが香盤表です。
縦軸に時間の流れ、横軸に関係者それぞれが書いてあって、「この時間帯に誰が何をやっているか」が一目でわかるようになっています。

例えば、シーン1のセッティング中に僕はスライダーの準備をして、照明は窓からの光のセッティングをして、アシスタントは2階からベッドを下ろしてきてください、というように。同じ時間に違う動きをしている人たちの動きを整理するのが香盤表の役割です。
当日は印刷して持っていく
作った資料は全部印刷して持っていきます。コンテ・企画概要・香盤表・ショットリスト、それぞれ関係者の人数分。今回は照明・演者・お客さん・アシスタント・予備で5〜6部くらい刷っていきました。
iPadでも見れるんですが、紙で出してパッと広げる方が現場では圧倒的に早い。特に人数が増えてバタバタする現場では、全員が手元に持てる状態が一番スムーズに動けます。
企画から撮影まで、かなりの量の準備が入ることが伝わったかと思います。でもこれだけ準備をしておくと、現場では「撮ることに集中できる」状態になれる。それが映像のクオリティに直結します。
もっと詳しく知りたいところや気になるところがあればコメントください。
ちなみに、撮影当日の様子をメイキング映像で公開しています。
こちらは撮影中の雰囲気を知ることができる面白い映像になっていますので、ぜひこちらもご覧ください!
最後までお読みいただきありがとうございました!
映像制作のご相談、お待ちしております。気軽にどうぞ。
mail: makiotorigoe@kinokoinc.com /
HP: https://kinokoinc.com
鳥越万紀雄(とりごえまきお)
・合同会社Kinoko inc.代表
・長年バンドマンとして活動をする中で、自身のMVを作ることから映像に出会い、伝えたい思いを形にできる映像制作の世界に魅了される。
・メジャーアーティストのMVや大手企業のショートドラマ、採用映像やYouTubeの企画運用など、映像にまつわるオールマイティな活動を行っている。
・YouTubeのチャンネル登録者9700人以上。
・クリエイターの集まるコミュニティ「クラスルーム」主催。