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氷河を登る人々

2015年1月、私は南米大陸の南パタゴニア地方を訪れた。世界一周に旅立ってから約半年が経っていて、バックパッカーにも慣れてきた頃だ。東南アジア、東アジア、中央アジア、カフカス地方とユーラシア大陸を移動してきて、数々の絶景にも出会ってきた。アジア最西端イスタンブールにたどり着いた私はそこから一気に旅の舞台を南米大陸に移した。目的地は南米大陸の南、コロラド川以南の地域、パタゴニア地方だ。

パタゴニア地方は豊かな自然と動植物に溢れていて、トレッカー達の聖地とも呼ばれている。オンシーズンになると世界中から観光客が集まってくる場所だ。パタゴニアの中でも有名な観光資源が氷河だ。氷河を見ること自体はパタゴニア地方では珍しくないが、氷河の氷上を歩くことのできるツアーはあまりない。氷河トレッキングが体験できるという話を聞いた私は、迷わずその町へ向かった。

実際にその町へ行き、宿で教えてもらったツアー会社のプランで氷河トレッキングに参加した。初めて体験する世界。氷河の表面は遠くから見ると白いが、近くで見てみると透明な氷の集りだった。透明が重なりあうことで白を作り、さらにその内側は底知れぬ青だった。氷河の切れ目や穴からは水が流れだし、今もなお氷河は溶けていることを教えてくれた。しかし、その穴はどこまでも続き、氷河が光を通しているからか、穴の奥が暗くなることもなく、永遠に青かった。その青さはまさに神秘的ともいえた。

どのくらい前にできたかもわからない氷の上を私達は歩いた。道とはいえない道を歩き、氷河用のスパイクを靴につけていたこともあり、足元ばかり見ていたが、ふと目線を上げると、そこはほぼ白と青に埋め尽くされていた。氷河は白く、青い。氷河との境界線を作る空もまた白く、青い。その間をゆく人。若輩ながらもいろいろな国、場所、人を見てきたが、またひとつ心打たれるな景色に出逢った。

世界にはまだまだ美しい景色が残っている。

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