支援は、やさしさだけでは続かない
「“支援者を支援する”って、どういうこと?」
最近、ふと考えることがあります。
障がい者支援現場の「支援の質を上げたい」と言うとき、僕たちは“誰”を思い浮かべているのだろう、と。
支援の中心には、支援を受ける知的障がいのある本人がいます。
でも同時に、その支援はいつも、支援する側の人間のコンディションに大きく左右されます。
疲れている日。人が足りない日。心が折れそうな日。
それでも現場は止まらないし、目の前の“困りごと”は待ってくれない。
今回は、事業の本質の話と、その背景にある社会課題をできるだけ誠実に言語化してみます。
(※これはあくまで自社の立場からの整理です。特定のサービスを否定・推奨する意図はありません)
支援は、やさしさだけでは続かない
障がい福祉の現場で起きていることを、ひとことで言うなら、
「支援が必要な度合いは上がり、支援する側の余白は減っている」だと思っています。
- 人手不足
- 経験の浅い職員の増加
- 支援ニーズの多様化(医療的ケア、強度行動障がい、家族支援、地域連携…)
- 法令や虐待防止、事故防止など“守るべきもの”の増加
- 記録、会議、連絡調整…支援以外の業務負担
そして何より、支援は“人と人”の間で起きるので、正解が一つじゃない。(もっと言うと、正解がないものでもある)
例えば、同じ言葉でも、Aさんには届くけれど、Bさんには刺さってしまう。
昨日うまくいった方法が、今日うまくいくとは限らない。
そんな世界で、支援者は日々「判断」と「感情の調整」をしています。
これって、相当な負荷です。
だから、現場にはときどき、こんな声が生まれます。
- 「自分のやり方が合っているのかわからない」
- 「申し送りや会議は増えるのに、本人と向き合う時間が減っている」
- 「またトラブルが起きたらどうしよう、がずっと頭にある」
- 「“がんばる”以外の解決策が見つからない」
“がんばれる人”が支える構造は、長くは続きません。
そして、続かない仕組みの上では、支援の質も安定しません。
「支援者を支援する」とは、支援の再現性をつくること
ここでいう「支援者を支援する」は、励ますことでも、気合いを入れることでもありません。
もっと地味で、でも本質的な話です。
僕は「支援者を支援する」とは、突き詰めるとこういうことだと思っています。
“良い支援”と言われるものが、特定のスーパースター職員の頭の中だけに存在しない状態をつくること。
“その人のセンス”ではなく、“チーム支援の仕組み”として残っていく状態をつくること。
現場には本当にすごい支援者がいます。
たった一言で空気を変えたり、相手の不安をほどいたりする人。
でも、そのすごさが「属人化」していると、離職や異動で消えてしまう。
そして次の世代は、またゼロから悩み直すことになる。
これは、社会としても、現場としても、かなりもったいない。
だから必要なのは、
- 迷ったときに立ち返れる“判断の軸”(事業所の支援方針)
- 明日から使える“具体的な言葉”や“関わりのコツ”(具体的な個別支援計画など)
- 事故や虐待を防ぐための“予防の視点”(虐待事例知識とやむを得ず身体拘束をするときの留意点の理解など)
- チームで共有できる“共通言語”(アセスメントシートや自立支援の考え方など専門用語の理解)
つまり、支援の再現性です。
誰がやっても同じ支援ができる状態を作り、チームで支援ができるようにする。
この再現性が上がると、支援者は少しだけ余白ができるようになります。
特定の職員を責めたり、自分を責めたりする必要がなくなり、「構造を変えればいいんだ」と思えるようになる。
これが、支援の質を安定させる最短距離だと感じています。
スペシャルラーニングを導入いただいたお客様からは数多くの良いお声をいただいています。
支援者を追い詰めるのは、本人ではなく「環境」のことが多い
現場がつらくなる理由は、支援対象の方が“難しい”からではありません。
むしろ多くの場合、つらさの正体は「環境」です。
- 相談できる相手が周りにいない
- 支援手法が人によって違う(どの先輩支援者の言うことを聞けば良いかわからない)
- 家族からのプレッシャーが大きい
- 記録のための言葉が見つからない
- “見守り支援”がサボっているように思われないか心配
- 小さな失敗が大きな事故につながるプレッシャー
こうした環境の中で、支援者は「目の前の人にやさしくしたい」気持ちを保つのが難しくなる。
ここが、すごく大事なポイントだと思っています。
支援者の心が削られていくと、本人の安心も削られていく。
つまり、
支援者を支援することは、障がいのある本人の尊厳を守ることにつながっている。
遠回りに見えて、実は同じ地点を目指しています。
“支援”は、社会のインフラになっていく
もう一つ、背景として大きいのは、これから先の日本の話です。
少子高齢化、労働人口の減少、地域コミュニティの希薄化。
家族だけで抱え込むことも、現場だけで背負い続けることも、限界が来ています。
だから、支援は“善意の頑張り”ではなく、
社会のインフラとして設計し直さないといけない。
インフラって、派手じゃないけど、壊れたら生活が回らない。
支援も、まさにそれに近づいている気がします。
そしてインフラを支えるのは、現場のプロフェッショナルです。
だからこそ、現場が持続可能であることが、社会全体の課題になっている。
僕にとっての原点は「家族」でした
ここは少し個人的な話になります。
僕には、生活介護に通う、重度知的障がいのある弟がいます。
家族として向き合ってきた時間の中で、ずっと感じていたのは、
「本人を支える人が孤立すると、支援の幅は狭まっていく」という現実でした。
家族も、支援者も、決して弱いわけじゃない。
ただ、“頼り方”や“仕組み”が社会に少なすぎる。
だったら、支援者が安心して学べて、相談できて、「これでいいんだ」と思える土台を増やしたい。
そう思って、今の事業を続けています。
この問いに、共感してくれる人へ
「支援者を支援する」とは何か。
結局のところそれは、支援の現場を“燃え尽き前提”にしないという意思だと思っています。
支援が続くための設計をする。
支援者が壊れないための仕組みをつくる。
その結果として、本人の安心が増える。
もしあなたが、
- 誰かの人生を支える仕事の重みを知っている
- でも“根性論”以外の答えを探したい
- 支援を、もっと良い形で社会に残したい
そう感じたことがあるなら、たぶん同じ問いを見ています。
この問いに、一緒に向き合う仲間が増えたらうれしいです。
派手じゃないけど、確実に社会の足元を支える仕事だと思うので。
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