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なぜ大学院に5年もいたのか/修論との関わり

私は大学の学部は4年間ストレートで卒業しましたが、大学院は2019年現在で5年目の在籍になります。通常、大学院は通常2年で卒業するものなので、どうして5年も通うことになった理由を書いておきます。また、修士の研究テーマにも触れます。

私の出生時の性別は男性で、戸籍上の続柄は「次男」となっていますが、幼い頃から「男」として扱われることに対して違和を持ち続けてきました。いわゆる「トランスジェンダー」です。大学に入って、やっと悩みを他人と共有することができるようになり、なんとかして「女性」として生きられないか模索をしてきました。就職活動をすると自分のような存在は否定されるのではないかという不安があり、社会に居場所を感じられないままモラトリアムを延長するように大学院に進学しました(同じ大学、同じ研究室です)。

いわゆる自分の性自認について法的な裏付けをとるためには、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」に則って、①成人、②独身、③成人の子がいない、④生殖能力の除去、⑤望む性別らしい外観を備えること、を満たして初めて戸籍の変更する必要があります(ただし、当事者の実情としては必ずしも⑤を必要としないケースはあるようです)。大学院では2年間かけて手術費を貯金したのですが、すんでのところで、親に「待った」をかけられてしまいました。このままでは大学院の研究もままならず、環境を刷新しようと思い、見知った複数の教員に相談をして、受け入れを表明してくださった教授の研究室に移動することになりました。

学部の卒業研究で書いた卒業論文は「自然科学系」でしたが、移動することになった研究室は「社会科学系」の研究室でした。このように、同じ学部の中に理系・文系が共在しているのが、自分の育った情報学部の特徴でもあります。受け入れ先の教授とは大学院の講義等で接触があり、文系的な基礎教養は見込んでもらったものの、社会科学系の卒論を書いたことがないということで、学部生のレベルから勉強と研究をスタートすることになりました。そして、間に休学を1年間分はさみながら、3年かけて修士論文の研究を進めるに至っています。

修士論文のテーマは「トランスジェンダーが生きづらさを抱えるのは何故なのか」(大意)です。これは、今後社会に出た時に自分自身について丁寧に説明ができるようにする自己防衛の目的を伴っています。この研究を完遂させることは、自分にとって大きな意味があります。なにぶん「生きづらい」という感覚を丁寧に言語化して他人に説明するのは、ものすごく大変です。かといって「人権の問題だから」で済ませても納得が行かないでしょう。それだと自分でも納得行かないです(笑)。この研究を通して「性別を自分で決定できない状況が生きづらいんです」ということを説明できる枠組みを提示することが、自分の目標となります。