想定外の連続だろうと、絶対にファシリは回すのだ
先日、ハイブリッド取材、すなわちリアルとオンラインをミックスしたグループインタビューのオファーがありました。コロナ禍以降に登場した新スタイルの取材ですね。
やりづらいか?そうでないか?と問われれば、まあ、ぶっちゃけ機器接続の状況によって出来不出来が左右しやすい。会議用のスピーカーマイク、インターネット接続、モニターのスピーカーなど、様々な機器を経由して話をきくわけですから、たいがいそのどれかが調子悪いとか、そもそも音声が聞きづらいとか話の途中で途切れちゃうとかあるけれど、それでも中断できない。参加人数が多ければ多いほど、“ようやくスケジュール調整したんだから、何とかやり切ってほしい”みたいな空気になるから、いつもひやひやしながら対応しております。
で、一般的なハイブリッド取材の場合、一人がリアルで一人がオンラインとか、三人がリアルで一人がオンラインとかのケースが多い。要するに、お子さんの急病とか、家族がコロナ感染したとかの緊急系、あるいは一人だけ海外勤務とか理由があって、とにかく多数リアル(ここに伊藤もいる)+少数オンラインというのが一般的なのですが、先日はちょっと違っていました。
九州に出張したのですよ。で、東京に勤務している人もオンラインで参加する座談会を回してほしいって話で。まあ、私もバタバタしていて、トークテーマのチェックはしたものの、メンバー構成まで確認しきれていなかったのは確かですが、現地に行ってセッティングしながら気づいた。あれ?現地=リアル=九州が2名で、オンライン=東京が5名?
なんで?私、東京リアルでファシリじゃないの?なんて、あーだこーだ言っている暇はない。もうやるっきゃない。
で、けっこう音は悪いんですよ。聞き取れないところもある。でも時間は限られているし、ぐいぐい進めるしかない。まあ、どのように進めたかっていうのは企業秘密ですが(笑)、まあ、うまくいったのですよ。いつもうまくいく、いや必死になってうまくいかせている。コケることは絶対にないのですが。
で、まあ、よくやるなと思うのですよ。トラブルというか、想定外の連続ですよ。それでも回すんですよ。ハイブリッドでも、よく聞き取れなくてもなんでも絶対に回すんですよ。いろんな瞬時判断を重ねながら、うまく切り返すんですよ。
インタビューイーは一般のビジネスパーソンですから、彼らは決して予定調和なトークセッションなんてしない。それでよいのですよ。私は本音をしゃべらせるプロだから、予定調和とか台本とかぶっ飛ばせって感じですよ。オールアドリブ、Aさんから出てきた言葉を受け止めてBさんに打ち返して、Cから話をひっぱってDへちょっと小出しするとか、これ、出たとこ勝負なんですよ。
で、その変則ハイブリッドのときも「さすがのファシリ力」って褒められるわけですよ。で、どうやったら伊藤みたいにできるの?って聞かれる。
でも、すべてケースバイケースですし、小さな瞬時の判断をいっぱい重ねているので、マニュアルもないし、逆にマニュアル化もできない。言語化もできない。センスなんですよ。もちろん、センスは経験で磨かれるんで。だから人に教えることなんてできないんですよ。
一時期、インタビュアー育成とかで儲けようなんて、よこしまなことを考えたこともあったのですが、やめました。こんな俗人性の高い仕事を無理やりマニュアル化して“教えてます”って顔はできない。それで金をとるなんて詐欺もいいところ。
なので、私はインタビューを極める方向へとシフトしていったわけで。まあ、これまでちょっと脇道それたり、浮気もしたけれど、インタビュー馬鹿一代を極めていこうと、再度気合を入れ直した私でありました。