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私が投資に目覚めた日

伝説の個人投資家として有名なBNFさんと私が出会ったのは私が薬学部の学生だった2006年頃、当時ジェイコム株誤発注事件で30分で20億円稼いだその男の名は多くの人を震撼させ、ネット上では嫉妬や称賛が入り乱れていた。私は彼のことをもっと知りたいと思いネット上でアップされている彼の記事や動画をひたすら集めた。そして知れば知るほどBNFさんのことが好きになり、私も早く大学を卒業して彼のような投資家になりたいと強く思うようになった。私がBNFさんのことをいいなと思ったのは彼はいくらお金を稼いでも昼食はカップラーメン、来ている服はダイエーで買った安物の服という極めて質素な生活をしていたところだ。彼曰く、お金を稼いでも他に趣味がないしお金を使うと株取引で冷静な判断ができなくなるので使いたくないとのこと。人によってはそんな彼のことをカッコ悪いと思うだろう。だが、私にとってはその謙虚な姿勢がとてもカッコよく見えた。私も早く彼のようになりたいと思った。そして2007年、無事に薬剤師国家試験を突破して就職した私は投資家になるべくお金を貯め始めた。まとまったお金ができた2008年に楽天証券に口座を作りついに念願の投資家デビューを果たしたのだが当時の私は決算書は読めない、チャートのローソク足や出来高の意味さえも分からないというとんでもない素人投資家で見ているのは板の値動きだけだった。株価がいったい何で上がるのか下がるのか全く分かっていなかったのだ。そんな状態で株式投資をしても当然儲かるわけがなく、私は2008年から2010年にかけて3年連続で損失を出してその合計額は100万円を超えていた。もう株式投資はこりごりだ、そう思ってしばらく株を休んでいたある日、本屋でふと1冊の本が目に入った。それがひふみ投信の藤野さんが書いた「日経平均を捨てて、この株を買いなさい」という本だった。その本を読むまで私は「素人が株式投資をやってもプロには絶対に叶わない。損するだけだ」と思っていたのだがその本に書かれていたことはとても衝撃的で私の人生を大きく変える事件だった。要約すると

・長期的には株価と利益は一致する

・日本株でも大きく成長している良い会社はたくさんある

・良い会社は意外と私達のすぐ側にある(幸せの青い鳥理論)

といったものでこの本を読んでから私は身近にある素晴らしい会社でなおかつ決算の良い会社を探すことに集中した。私はディズニーランドが大好きで年間パスポートを買うほど熱心なファンだったのでオリエンタルランドを調べてみたらこの会社はとんでもない利益率と素晴らしいキャッシュフローを持ち、なおかつ成長している素晴らしい会社だということが判明し、さっそく投資をした。このオリエンタルランドの投資はそこそこ上手くいき、私はそこそこのリターンを得て満足していた。そんな2012年のとある日、当時付き合っていた彼女が突然自宅で泣きだすという事態が発生した。当時、彼女は小さな卸売会社に勤務していたのだがそこはひどい長時間労働と最低賃金に近い安い給料で誰がどう見てもブラックと言えるような会社だった。仕事があまりにもキツすぎるので彼女はとうとう我慢できずに泣きだしてしまったのだ。彼女の涙を見て私は「彼女の給料の分も自分が株で稼いで彼女を救いたい、幸せにしたい」と強く心に誓った。そう、私が投資に目覚めたのはBNFさんと出会った日でも藤野さんの本を見つけた日でもない。私を本当に投資家にしてくれたのは彼女の涙だった。それからの私は取りつかれたように四季報業界地図を読んだ。好き嫌いせずに成長している会社、株が上がりそうな会社、チャートの美しい会社を全てのセクターから探し続けた。決算短信もそれまで以上にたくさん読むようになった。他人のために人はここまで変われるんだ、と自分でも驚いた。子供を持った今でも驚いている。当然、その彼女は今では私の妻です。

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