AI時代だからこそ、UXデザインを深く理解する必要がある!
と思い、日本でおそらく最も網羅的にUXデザインのルールをまとめている「Sociomedia ヒューマンインターフェース ガイドライン」を読み進めて、考えたことを記録して、noteマガジンにまとめている。
今日は21個目。まずは引用から。
21. Persuasion
説得的な仕掛けでユーザーの行動を促す。使い方のガイド、レコメンデーション、心理的な報酬、他者との比較、バーチャルリアリティ技術やシミュレーション機能による疑似体験、などによってユーザーを動機づけしたり意思決定を促したりする。
ただしユーザーの行動を無自覚的に誘導したり、自由意志を不当に抑制することがないよう、パースエージョンには倫理性が求められる。
https://www.sociomedia.co.jp/9209
この persuasion という考え方は、2017年のノーベル経済学賞をきっかけに一般に知られるようになった、行動経済学における nudge という考え方と同じ。
興味深い例がこちら。Oxfamというイギリスのチャリティー団体のウェブサイトで、「Donate now」(「今すぐ寄付」)というボタンだけではなく、その横に「4ポンド」とデフォルトの寄付額を追加で表示したところ、寄付をする人が23%増えたそうだ(A/Bテストの結果)。詳しくは、Zoe King によるブログ記事 "5 amazing UX Nudges to improve your website" を参照。
「いくら寄付しよう?」と考える手間を省略することで、ユーザーの行動を促した(=ユーザーが「説得」された)から、と考えられる。これは正当化できる persuasion。
UXデザインのルール #20 「メジャーなタスクに最適化する」も、一種の persuasion と言える。パレートの法則に基づいて、ユーザーの80%が使う、全機能のうちの20%をメニューで選びやすくし、残りの機能は何度かクリックしないと使えないようにする、というのも Persuasion と言える。使いたい機能が見つからなくて諦めてしまうユーザーを減らすことができるから。これも正当化できる persuasion。
他方、「パースエージョンには倫理性が求められる」とあるように、正当化できないものもあり、そういうUXデザインは dark pattern と呼ばれる。
例えば、Amazonでチェックアウトする時、「Amazonプライムを無料体験する」ためのボタンが黄色でとても目立つ一方、Amazonプライムに興味のないユーザーがクリックすべきボタンは青い字の目立たないテキストリンク「プライム無料体験を試さないで注文を続ける」になっている。
以下は去年までの画面。

Amazon でのショッピング中に「レジに進む」ボタンを押した後に表示される画面(2025年版)
何も考えないでチェックアウトしようとすると、無料体験ボタンを押してしまう仕組みになっている(青のテキストを他のページへのリンクではなく先に進むための「ボタン」として使うのは、非常にタチが悪いと思う)。
そして、今年から以下のような画面に変わった。

Amazon でのショッピング中に「レジに進む」ボタンを押した後に表示される画面(2026年版)
ボタンの色だけでなく、配置も真ん中にして、しかも影をつけて手前に浮き出ているように見せて、さらにタチが悪くなっている。A/Bテストで、このデザインの方が、ユーザーがプライム無料体験を始めてしまう確率が高いという結果が出たのだろう。
こういう dark pattern は、物・サービスを売る側にとってはベストなUXデザインだが、ユーザーにとっては迷惑。これをやると、ブランドへのロイヤルティーは確実に下がる。
しかし、Amazonの場合、Amazonが嫌いでも、オンラインでさくっと買い物するにはやっぱりAmazonが便利だから使わざるを得ない、というユーザー(私もその1人)が多いので、dark pattern を思いとどまるインセンティブがないのだろう。
競争相手の楽天は、意図的に使いにくいUI/UXにしているらしい(参考)ので、ヨドバシドットコムに頑張ってほしいと思う。